26.特別授業を受けれることになった。
「そのまま続けて」
ザンビーニ先生の指示に従い、僕は、火球の魔法を紡ぐ。
オーガとの戦いで使った、速度重視の一点集中型の魔法だ。
今回は、折れた槍などではなく、タクトと呼ばれる小型の細い杖を使用しているし、いきなりぶっつけ本番というわけでもない。なによりオーガに威圧されていた問とは違うから、かなりうまくできたと思う。
火球を5発ほど的にあてると、的を貫通させることが出来た。
「ザンビーニ先生、アーディルはどうだい?」
ドバン先生が自慢げに問う。
別に、先生が自慢する要素はないようなきがするが。
「いや、驚いたよ。あそこまでうまく魔法をコントロールできるのは、Sクラスにもいないだろうね。
火球の魔法であることは間違いないのに、あの速度とコントロール。
なにより、熱を一点に集めているから、派手さはないけれど威力も申し分ないだろうね。」
それを聞いたドバン先生は満足げに頷いた。
「本来なら、すぐにでもSクラス編入をさせたいぐらいだね。」
「流石に、それは無理でしょう。アーディルはまだ1年だ。前例もない。」
「前例がなきゃ作ればいい。とはいっても、流石にそうはいかんね。」
ザンビーニ先生は、学力Sクラスを担当する先生で、魔法術学を教えている。
見た目は40代半ばに見えるが、実際はもっと上らしい。
なにせ、ドバン先生が学生だった時に、すでに同じような見た目だったらしいし、噂では学園長よりも年上らしかった。
「そうね。そうしたら、週末を中心に特別授業って形をしましょうか。」
「え?いいんですか?」
「ええ。私、あなたにちょと興味がわいてきたの。才能のある若い子が好きなのよ。」
と満面の笑みを浮かべる。
それを見たドバン先生は、困ったような笑いをしながら、僕の肩を叩いてそっと耳打ちをした。
「ザンビーニ先生の悪い癖がでた。
あの人は、興味があるものがあると、いつもこうだ。
お前さん気に入られたみたいだから、ちょっとしごかれて来い。
ちょっと周りが見えなくなることがある人だけど、腕だけは確かだから。」
こうして、僕は毎週末は、ザンビーニ先生の研究室に行くことになった。
・・・
ザンビーニ先生の研究室には、もう一人知り合いがいた。
3年生で寮長のセドナ先輩だ。
彼は、寮長というだけあって、3年生の中でも抜群の成績を誇っていた。
体力も学力もSクラスなのだ。これは、フェンリル寮では一人だけだし、全寮でも5人しかいないエリートだった。
セドナさんは、どうも魔法工学や魔法薬学などの能力が高いらしく、週末はザンビーニ先生の研究室で魔道具や魔法薬の製作などをしているとのことだった。
「あれ、アーディル君じゃないか。どうしたの?」
「ザンビーニ先生が、週末はここで授業をしてくださるってことらしくって・・・」
「なるほど・・・。それはおめでとうというかご愁傷様というか。」
そんな話をしていると、ザンビーニ先生が研究室に現れた。
「じゃぁ、まずはアーディル君の実力測定からいきましょうか。
火球以外の魔法を見せて頂戴。」
そういわれて、僕はAクラスで習う魔法をいくつか披露する。
氷の槍、風の衣、土の壁などだ。
「素晴らしいわ。これは、セドナ君よりうまいわね。」
「本当に。ちょっと自信なくすな。」
「まぁ、あなたの場合、こういうのより付与とか錬成系の魔法の方が得意だからね。」
ザンビーニ先生がセドナ先輩を励ますが、セドナ先輩はもともとあまり気にしていなかったようだ。
「いい師匠を持ったのかしらね。魔力の扱い方が本当に上手ね。
とはいっても、まだまだ鍛える余地はありそう。
Bランクの授業中は、ひまだろうから今から教える訓練をしなさい。」
そういうと、宮廷魔術師が日課でやるという訓練方法を指導された。
魔力を丹田に集中させ、それを血管を伝うように右手、右足、丹田、左足、左手、眉間、丹田と廻していくのだという。
簡単に先生は言うが、丹田に魔力を感じるということ自体がまずできなかった。
「目をつぶって、黙想するんだ。力を抜いて、へその下あたりを強く意識する。」
セドナ先輩もなかなか苦戦したらしく、アドバイスをしてくれた。
結果、僕の下期のBクラスの授業はこれに費やすことになった。
丹田に魔力を感じることが出来るようになるのに、1週間。
その後、魔力を動かせるようになるのに1週間。まともに廻せるようになるのに3週間もかかった。
それでも、セドナ先輩に言わせると、早いらしい。
そして、それができるようになると、魔力が増えていくのが、自分でもわかるようになっていった。
・・・・
週末の特別事業・・・といっても、ザンビーニ先生は結構忙しいらしく、自習が多かった。
その時に、興味を持ったのが魔法薬学・・つまりは、魔法薬の製造だった。
この間のオーガに会った時に集めた素材で一度チャレンジしたのだが、失敗とまではいかなかったが、上手くできなかったのだ。
これを、セドナ先輩は、見ていてわかるぐらいにうまくやっていた。
「なんだ。魔法薬学に興味があるのかい?簡単なのだったら僕でも教えられるからやってみる?」
そういって、魔法薬の基礎を教えてもらった。
どうやら、僕の知っている魔法の術式は間違っていなかったが、付与をするタイミングなどのかなりコツがいるらしい。本だけでは、こういうところがやはり足りないのだ。
ただ、コツさえわかれば、後は難しくない。
こうして、僕もある程度の魔法薬を作れるようになっていった。
読んでいただきありがとうございます。
またブックマークや評価もありがとうございます。




