24.天才かもしれない。
「おい、大丈夫か?」
「アーディル!なんだあれは?」
「助かりました。ありがとうございます。」
「こういう時が一番危険なんだ。気を抜くな。」
上から、ドバン先生、エリック、助けられた先輩、そしてガードナ先生の言葉だった。
オーガは、仰向けに横たわり、血と肉の焦げた匂いが周りに充満していた。
教科書で知っていたが、実際に嗅覚が伴うと、ガードナ先生が、注意喚起をするのもわかる。
この匂いにつられた、さらに肉食の獰猛な魔物が現れる可能性があるのだ。
「埋めますか?」
ドバン先生がガードナ先生に確認をするとガードナ先生は、頷く。
その合図でドバン先生やエリック達は、封魔紋からスコップを取り出す。
セドリックは、封魔紋を持っていないので、エリックから受け取る。
助けられたパーティーのリーダーも含めて、4人で、オーガの横を掘っていく。
その間に、手早く、ガードナ先生が担当を腰から抜くと、オーガの胸からこぶし大の魔石を取り出した。
ガードナ先生も穴掘りに参加すると、オーガを転がして埋めるだけの穴ができる。
といっても、土を被せれば埋まる程度だ。埋葬ではないので、これぐらいでよいのだそうだ。
「さて、とりあえずは、これでいいだろう。
それじゃぁ、色々と確認していくか。」
ガードナ先生を中心に、輪のような形になった。
「まずは、アッシュだな。状況を説明してくれ。」
アッシュと呼ばれた先輩は、皆に会釈すると話し出した。
「ご無沙汰しています。そして、ありがとうございます。
僕たちは、この先の学園の狩場で狩りをしようと思ってきました。
この時期は、いつも空いているし、今日は学園も休みですから・・・。
で、ついたらそこには多分ゴブリンだと思うんですけどそれを食らっているオークがいたんですよ。
流石に、僕たち3人じゃぁ討伐は出来ないので、そっと引き返そうとしたんですが、見つかってしまって・・・。」
「なるほど、間抜けなゴブリンが罠にでもかかったか。
で、オーガは単独だったのか?」
「はい。周りには何もいませんでした。」
ドバン先生が頷く。
オーガは、単独で動くことが多いが、稀に家族などの数匹の群れで行動する場合がある。
単独であれば、討伐したからこれで問題ないということだろうか。
「じゃぁ、次はアーディルだな。」
「僕ですか?」
ドバン先生やガードナ先生はもちろん、エリックやティアさん達まで頷いていた。
「あれは炎の矢の魔法よね?あなた、いつの間に魔法を覚えたの?
しかも、速度とか異様に早いんだけど・・・。」
「いや、あれは基礎魔法の炎の玉の速度だけを重視しただけのものです。
まぁ、実戦で使うのは僕もはじめてなんですけど。」
「えっ・・・。」
それに反応したのはティアさんとアッシュさんのところの女性だった。
「アーディル君は、魔法の変成ができるの?」
「え・・・ええ。」
どうしたんだろうか。変成については、Aクラスの教科書にも載っていることだが。
「どうやら、アーディルは、自分が何をしたのかよくわかってないんだな。
俺は、専門外だが変成ってのは、結構難しいものらしい。
理論は解明されているが、結局その魔法の構造というか術式を理解できていないとできないのだろう?」
ティアさん達がコクコクと頷く。
「それに、狙いや威力も見事だった。まさか、右肩の腱を焼き切ったのも狙ってのことか?」
「まさか、そこまではないでしょう?」
ガードナ先生の鋭い目つきの質問に、僕の代わりに応えたのはエリックだった。
いや、体力の授業で”急所”は習うのだから、狙うのは当然だと思うのだが、黙っておいた方がいいかな。
「まぁいい。アーディルは、魔法の才能もあるみたいだから、帰ったらザンビーニ先生にでも紹介しよう。とりあえずは、カーミラからの依頼だけはかたずけちまおう。アッシュ達はどうする?帰れるか?」
「はい。大丈夫です。」
幸い、ケガも回復魔法を早くかけたので問題はないようだ。
とはいえ、流した血や疲れまでは戻らない。休息が必要だろう。
こうして、僕たちはアッシュ先輩たちとはわかれて、森の奥の狩場へと向かった。
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