23.オーガキラー
「ドバンと俺が応戦するから、エリック達は援護を頼む。
あと、ティアは逃げてくるやつらに手当が必要な場合は手当優先で。余裕があれば同じく援護を。
アーディルは、下がっていろ。」
そういうと、ガードナ先生は、背中に背負った大剣を構える。
ドバン先生も腰に差した剣を抜き、封魔紋から、スパイクシールドと呼ばれる表面に刺を備えた攻撃的な盾を取り出すと構えた。
エリックは槍、セドリックは弓を封魔紋から取り出し構えた。
奥からかけてくる男女は、ガードナ先生達に気が付いたようで、先生の近くまで走ってくると倒れこんだ。
「せ、先生。オーガです。オーガが出ました。」
四つん這いになりながらも、肩を大きく上下に揺らしながら息をしている。
1人は、脇腹に血がにじんでいるのが見えるし、顔色が青い。
少し年上にみえるから、学園の卒業生のようだ。
「後ろに下がっていろ」
ガードナ先生達は、そのまま前を見据えて、ゆっくりと前進をした。
「ケガしてるのね。見せて」
ティアさんが、傷に回復魔法をかける。
僕も、止血ぐらいならできるが、ここは任せた方がいいだろう。
だんだん咆哮と地響きの音が近づいてくる。
目の前に半裸の赤黒い人が、棍棒のようなものを持って、こちらに駆けてくるのが見えた。
最初は、そこまで感じなかったが、近づくにつれ、その筋骨隆々とした身体と丸太のような太い腕、そしてなにより、その身長に驚いた。
図鑑でも3メートルぐらいと書いてあったが、実際に見てみるとその大きさに恐怖する。
先制して、セドリックが弓を射かけ命中するが、距離が遠いからか筋肉が厚いのかまったく気にした様子もなく迫ってくるどころか、いきなり手に持っていた棍棒を投げつけてきた。
いきなり武器を手放すなど、人間であればまずしないが、オーガは知能がそれほど高くないからこその蛮行かとおもったが、もしかしたらものすごく高いのかもしれない。
先生やエリック達は、すぐに避けるが、うしろで治療していたティアさん達にあたりそうになる。
咄嗟に、僕は槍を棍棒に向かって貫いた。
バキン。っと音を立てて槍の柄が折れる。
オーガの投げた棍棒は、ほとんど丸太であり、いくらなんでも真面に打ち付ければ、僕の借りていた槍のほうが持たなかった。
それでも、棍棒の進路がかわったので、誰もケガをせずに済んだ。
「君、すまない。助かった。」
パーティーのリーダーらしき人が立ち上がって、剣を抜きながら構えだした。
先生たちの援護をするつもりなのだろうか。
先生たちは、武器を失ったオーガめがけて斬撃や盾のよる殴打を行うが、着実にダメージを与えているものの、決定打を与えられていないようだった。
棍棒を失おうと、繰り出される拳や、蹴りは人間のそれとは異なり、かなりの力があるため、まともにもらうわけにはいかないのだ。
「荒ぶる炎の玉よ、敵を打て」
「氷の柱よ、敵を貫け!」
ティアさんと、逃げて来たパーティーの女性が魔法を唱える。
詠唱文句からすれば火球と氷槍だろう。
いずれも、学園のAクラスで習うことが出来る基本的な攻撃魔法になる。
こぶし大の炎の玉と同じく氷の槍が杖の前に作成されると、オーガ目指して飛んで行った。
氷の槍は、オーガの右肩の付け根あたりにささり、血しぶきが舞った。
一方、炎の玉は顔面にあたると弾けて、オーガの髪を燃やす。
たまらず、オーガは暴れまわり火を消すが、顔面が皮膚がただれたようになり醜く歪んだようになった。
先生たちは、オーガが暴れるので、バックステップして少し距離を取る。
その間、セドリックは目などの急所めざして矢を何本もいるが、流石にうまくは刺さらなかった。
劣勢でもないが、優勢ともいえない。ちょっとのミスが命取りになる。そんな状況だった。
・・・
「魔法か・・・。」
接近戦では邪魔になってしまうだろうが、これならば僕も加勢できるかもしれない。
すくなくとも、邪魔にはならないはずだ。
ティアさん達の魔法をみてそう思った。
実戦で使ったことはないが、火球と氷槍なら僕も使えるはずだ。魔力がまだ低すぎるかもしれないが、工夫の使用はある。悪いが二人の魔法は無駄が多かった。
そこをちゃんとそぎ落とせば・・・。
僕は、折れた槍の柄を杖に見立てて意識を集中する。
別に杖などは魔法に必要ないのだが、1点に意識を集中するのには杖や棒は便利な道具なのだ。
「炎」
そうつぶやくと、槍の柄の先から光線のようなものがでてオーガの右足の付け根に吸い込まれていった。
それは、火球を極1点に集中させたものだ。
その後は、柄の先から次々と光線を出してオーガに当てていく。
2回目以降は、意識を集中させるだけ。詠唱のようなものは必要ない。
そう、詠唱は必要ないのだ。
詠唱が有効なのは、魔法をイメージできない時だけだ。
言葉は、言霊になって魔法のイメージを補助してくれる。だから学園では詠唱を教える。
だが、それゆえに詠唱を唱えると魔法効率が悪くなったり、イメージが固定しすぎて応用が利かなくなる。
今回の僕の、火球は、火線のスピードを早くし、範囲をできるだけ狭めることで炎の温度や先端の威力を高めたものだ。
見る人によっては、炎の矢と似ているというかもしれない。
まぁ、教科書でならう炎の矢は、本物の弓を構えて打つものだが、これも魔法をイメージしやすくしているだけ。それで名前が変わってしまっているが、実際は炎を射出するという事において、同じ魔法なのだ。
炎の矢が何発か相手にささると、そこから肉の焦げる臭いがし、オーガの右腕が肩からぶらりと下がってあがらなくなった。
セドリックの木の矢がほぼダメージを与えれなかったことに比べれば、威力は段違いだ。
先生も含め、皆僕の魔法に驚いているようだが、今は戦闘中。
流石にベテランの冒険者とあって、対応は早かった。
右がわに回り込み、一気に攻め立てたてだした。
僕も、炎の矢を顔面に向けて打ち出す。
顔を責められて嫌なのは、人でも魔物でもかわらないらしく、動く左腕で懸命に防御する。
だが、それゆえに、さらに腹部などががら空きになった。
炎の矢ではオーガに致命傷はあたえられないだろうが、魔法の出が速く連射が出来るうえ、魔力もほとんど減っていないように感じる。
どうやら、僕には相性が良いようだ。
ガードナ先生の大剣がオーガの腹部を切り裂き、エリックがそこに槍を突き立てる。
そこに、ティアさんの2発目の火球があたると、オーガがたまらず膝をついた。
腹部からは内臓がはみ出ていた。
とどめを刺したのはドバン先生だった。
心臓にあたる部分に、剣を突き立てる。そうすると、オーガは膝を折った姿勢のまま天を仰ぐようにのけぞり、そして倒れた。
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