20.シド兄、封魔紋を得る。
1週間の授業は、済んでみればあっという間であった。
学力の方は、ほとんど魔力増強の自習状態だったのだが、自分でも日に日に魔力の使い方がうまくなるのが実感できたので、まったく飽きなかった。
まわりは、まだ生活魔法が発動できるかどうかというレベルなので、おそらく随分レベル差がある。
ただ、ここにきての問題は、魚石が残り少なくなってきたのもあるが読むべき教科書がなくなったことであった。
Aクラスの授業までは、教科書があるのだがSクラスからは、個人指導になるらしく教科書というものがないらしい。適性に合った・・つまり得意なところを伸ばすため、教本はないかあっても図書館のものを使うのだそうだ。流石に、それを食べるわけにはいかない。
そして、図書館にある本を自分で買おうと思ったら、結構なお値段がする。
まぁ、1ページごと写していけばいいのだが、写すのにも結構な時間がかかるから、スピードが遅くならざるを得ない。といっても、それでも普通に考えればとんでもないスピードで上達しているのだろうけれど。
一方、体力のクラスの方は、かなりきつかった。
ドバン先生は、かなりの熱血漢というか負けず嫌いのようで、容赦がなかった。
毎回最後は、先生との1体1での打ち合いになるのだが、1回も勝たせてくれなかった。
それでも、最初に比べて、打ち合える時間はかなり伸びてきているのだが、いつもドバン先生のトリッキーな戦術で一本を取られてしまうのだ。
一昨日は、棒で土を一緒に飛ばして目つぶし攻撃をしてくるし、今日は蹴りを織り交ぜてきて、体制を疲れたところに一撃を貰ってしまった。
「よく覚えておけ!これが実戦だ。」
と言って、勝ち誇るのだが、他の生徒からは「ちょっと大人げない」と思われているようだ。
もっとも、先生の言うことは僕は正しいと思うし、これこそ教科書に出てこない授業なのだと思う。
ただ、流石にまだ僕には10分以上格上の相手に挑み続けるのはきつく、授業のあとはクタクタになっていた。
・・・
「聞いたぞ。なんでも、相当ドバン先生に気に入られているらしいな。」
満面の笑みを浮かべながら、シド兄が声をかけてくる。
「うん。毎日、超しごかれてるよ。」
「というか、ドバン先生とまともに打ち合えてるらしいじゃないか。
Bクラスの連中が、ちょっとひいてたぞ。」
「シド兄と特訓していたから・・・。
でも、只でさえ、先輩ばかりなのにちょっと変な目で見られちゃって。しゃべりづらいんだよね。」
「そうか。まぁ、俺からも言っといてやるよ。
それより、これを見ろ!」
そういって、シド兄は左手の甲を僕に見せる。
そこには、赤黒い色の入れ墨のようなもので、幾何学模様が描かれている。封魔紋だ。
紋様は人によって若干異なるらしいが、間違いないだろう。
「おめでとう。」
そういうと、シド兄は、本当にうれしそうな顔をした。
僕と同じ孤児であるシド兄のこの学園での大きな目標は、これだったのだ。
もちろん、僕も封魔紋は必ずもらおうと思っている。
すでに学んだが、封魔紋とは人工の魔法寄生生物なのだ。
そのため、封魔紋を得るというのは、自分は宿主になるということになる。
寄生というからには、封魔紋にエネルギーを供給しなければならない。
つまり、宿主の生命エネルギーの一部を常に吸い取られ続けることになるのだ。
そのため、学園でも冒険者ギルドでも封魔紋を得るためには、一定の資格を求めるらしいのだ。
「封魔紋を貰ったすぐは、きついっていうけど、シド兄は大丈夫なの?」
「いや、昨日はほとんど動けなかった。
だけど、こうやって封魔紋をみてるといてもたってもいられなくなってな。
まだ、もう少しならしていかないと何もできないんだけどな。」
シド兄は、左手を太陽にかざして、嬉しそうにそういった。
・・・
週末、僕はドバン先生に呼び出されて職員室へ向かった。
本来は休みの日だけれど、1日開けておくように言われたのだ。
職員室に行ってみると、そこには、なぜかガードナ先生もいた。
ガードナ先生は、寮では一緒だけれど、体力のSクラス講師をつとめているので、授業では会うことはない。
「お、来たな。今日は特別授業だ。
どうもお前さんには普段の授業レベルじゃ足りなさそうだからな。」
ドバン先生は、そういうとついてくるように言って、職員室の横の倉庫へ連れてきてくれた。
倉庫の中には、様々な道具や装備などが置かれている。
主にAランク以上の授業で使う物だ。
「こいつとこいつとこいつ・・」
そういうと、ところどころに厚手の革がついた服と革のブーツ、そして槍を一本手渡してきた。
「いや、俺達も学園の先生をしているが、まだ現役の冒険者だからな。
休みの日なんかは、ちょっとした依頼を受けたりしているんだ。
で、今日もその予定だったんだが、ガードナ先生にお前の話をしたら、興味をもってな。
いい機会だから、冒険者ギルドにつれていってやろうかということになったのさ。」
「本来は、Bクラスの最後に集団で研修で行くんだが、聞いた話だとお前さん相当できるらしいからな。といっても、俺達が一緒だから、安心していい。これでも俺達はBランクハンターだからな。」
こうして、週末は先生方の個人レッスンを受けることになった。
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