17.魚を捌いてみた。
網の引上げは、ゴルドさんを中心に3人で行う。
ゲルドさんは、銛を構えて、万が一に備えるためだ。
近海なので、大型の鮫などは珍しいらしいが、年に数回はそのような獲物が網にかかってしまうことがあるらしい。
この船と網では、そのような獲物がかかってしまうと逆に海に引きずり込まれる可能性があるため、すぐ網を離して銛をうちこうちこまなければ危険らしいのだ。
そのため、このような網漁をする場合は、通常は船には最低でも3人の漁師が乗り込むらしい。
幸い、小型の鮫やエイは多少網にかかったものの、すぐにゲルドさんが銛で突き絶命させるので、危険はほとんどなかった。
結果としては、大漁とまではいかなかったが、大小あわせて、まずまずの収穫量であった。
網の引き上げは、結構な重労働であったが次々と魚があがってくるのは新鮮で、楽しかった。
ただ、網を全部船にあげると流石に疲れた。
「お疲れさん。どうだい?漁業は」
「いやぁ、楽しいですけど、やっぱりすごい重労働ですね。」
「まぁ、これも慣れだよ。森で猪とかを狩るのだって重労働だろう?
ましてや、そのあと獲物を持って帰るのだって大変だ。危険も多いしね。
その点で言えば、海の方が安全かつ輸送は楽だよ。まぁ、外海にでるとその限りではないけどね。」
確かに、それは言えるかもしれない。
「もし漁業に興味をもったら、ぜひギルドの門をたたいてくれ。
最初は、うちも含めて手伝いをしてもらいながら、漁業を学んでもらう。
その間に、給金を貯めながら船を買う資金なんかを貯めていけばいい。
住みこみで雇ってくれる場所もあるしな。」
なるほど・・・。
学園卒業後は、住むところも確保しないといけないから、こういう道も悪くない。
そういえば、シド兄は卒業まであと半期だけれど、何か考えているのだろうか。
「まぁ、すぐに決める必要はないけど、ぜひ考えてほしいし、できれば学園でも宣伝してくれると嬉しい。」
そんなやり取りをしながら、港へと戻っていった。
・・・
港に戻ると、ゲルドさんの奥さんが昼食を用意してくれていた。
焼き魚と魚介のたっぷりと入った味噌汁と、振舞われたが、おそらく今まで食べた味噌汁の中で一番の味だった。
「どうだ?売り物にならんサイズの魚や貝などだが、味は別に悪いわけじゃないからな。
おかわりもいくらでもあるから遠慮すんだよ。」
ゲルドさんがそう言ってくれたので、僕は遠慮せず3回もおかわりをいただいたが、ゴルドさんはその食いっぷりに驚いていた。
「そこまで、うまそうに食ってくれると嬉しくなるね。」
「いやぁ、本当に美味かったですから。」
お世辞ではないのだが、ゲルドさんと奥さんは本当にうれしそうにしてくれていた。
「さぁ、疲れているかもしれんが、これから魚の解体を教えようか。
普段はギルドの職員やカミさん達にまかせることも多いんだが、今回は研修も兼ねてるからな。
季節限定での、解体の仕事もあるから、これも参考にしてくれ。」
そういうと、ギルドの建物の方へ行く。
そこでは、大きな机がいくつかあり、女性が何人もそこで魚をさばいていた。
「大型魚は、俺達が捌くが、貝や小型の魚を捌くのは女性の方が上手いからな。
こっからは、職員のチコさんにお願いしてある。
今回自分で捌いたやつは、土産になるから頑張ってくれ。」
そういうと、長いエプロン姿の短髪の中年の女性を紹介してくれた。
・・・
「そうそう。鰓にそって刃をいれたら、そのまま首を折って腹の方へ手で引っ張る。
そうすると、頭と一緒に内臓がとれるから。その時に、魚石が身に残っていないかを確認してちょうだい。あ、そういえば、魚石が欲しいっていってたわね。
大体が、内臓にくっついているから、あとで探せばとれるわ。
なんだったら、そこのバケツ全部内臓だから・・・・」
そういうと、チコさんは机の下にあるバケツを顎でさした。
そこには、1日分の魚の頭や内臓がはいっていた。かなりの量になる。
「まぁ、止めやしないけど、割に合わないでしょ?
まぁ、今回は小型の鮫やエイ、中型魚もそこそこ獲れてるからね。
今回は、そこの解体のときに取り分けといてもらうように頼んであるから。
ただ、それでも魚石は、陸の魔物に比べると小さいからね。」
そんな会話をしながら、小型の大衆魚を捌いていく。
最初は、ぎこちなくて、身がボロボロになってしまっていたけれど、10匹ほど捌くと大分様になるようになってきて、何匹かは売り物になるようだった。
「なかなか筋がいいわね。
これなら、いつでもアルバイトに来てもらってもいいわね。」
最後には、お墨付きをもらえるようになったが、それまでに、”お土産”の魚も大量に作ってしまっていた。




