16.漁業にチャレンジしてみた。
漁業ギルドは、王都の南側にある港にあった。
シド兄とアルバイトの説明を受けに来たのだ。
「港は、街中とは違う活気があるね。」
港にいる人は、ほとんどの人が浅黒く筋肉質な男の人で、上半身がタンクトップのような薄着なのに対し、足はダボついた長ズボンをはいていた。
ほとんどは、船からの荷物の運搬か漁業に携わっている人達だという。
キャラベルと呼ばれる全長25mぐらいの船が何台か港に泊められており、そこからコンテナに積まれた荷物が積み下ろされていた。
王都が発展した理由の一つが、この港にある。
街道だけではなく、海路の開拓によって物流の充実、軍の輸送・補給線の確保などの柔軟性を確保することに成功したといわれている。
僕たちは、はじめてみる景色にキョロキョロしながら、シド兄について漁業ギルドを訪ねていった。
漁業ギルドは、事務所自体は小さいが、建物は非常に大きかった。
ほとんどが、魚などを解体したり、保存するための場所になっていた。
「おう、君たちが漁業体験に応募してきてくれた学園生か。
おや、君は前に一度来てくれたことがあったかな。」
「はい。覚えていらっしゃいましたか。今日は後輩を連れてきました。」
「そうか。それは助かるよ。じゃぁ、とりあえず簡単に説明しようか。」
ギルドのおじさんが、簡単に仕事を説明してくれた。
まずは、漁からなのだが、日の出とともに漁に出るらしく朝早いので中止が必要になるようだ。
仕事は、網を引き揚げるときの手伝いで、網を引き揚げたり、そこから魚を外すことらしい。
漁場は、湾の中なのでさほど危険はないが、それでもとれる魚の中には、鮫やエイなどの凶暴な魚や毒のある魚もいるので、そこだけは注意しなければいけないのだとか。
そのあとは、港に戻っての魚や貝の解体を手伝うという。
といっても、扱うのは値段の張る大型魚ではなく、一緒に取れる大衆魚といわれる小型魚だ。
賄いやお土産でもらえるのもこの小型魚なのだが、獲れたての味は絶品らしい。
「それで、ちょっとお願いがあるのですが、魚を処理した時に、すごく小さな魔石があったと思うのですが・・・」
「ん?魚石のことか?」
「はい。あれってたしか捨ててしまうんですよね?」
「ああ、まぁ使えないこともないんだが、毎日結構出るし、売ろうとしたら、かえってコストがかかっちまうからな。」
「それってもらってもいいですか。」
「ああ、魚の処理に出たゴミと一緒に燃やしちまうぐらいだから、別に構わんぞ。」
シド兄がこのアルバイトを紹介してくれた理由がやっとわかった。
魚も一応魔物の一種なので、小さいが魔石がある。漁業ギルドでは魚石といっているらしいが。
いわゆる陸上生物に比べて魚の魔石は小さいので、誤飲しても身体に影響は出にくいが、それでも腹痛を起こしたり、下痢を起こしたりなどを起こす場合もある。特に、子供や老人などにはちょっとした毒になってしまう。だから、漁業ギルドでは、頭や内臓と一緒に魔石を取り除いて市場に出すらしい。
たとえば、角ウサギなどの魔石であれば、市場で500コル・・・売値でもその半額ほどなので、ちょっとした小遣い程度にはなるが、魚の場合はその大きさは10分の1程度、米粒程度の大きさしかない。
ランプの魔法具にいれても1週間ももたないぐらいなので、需要がないとまではいかないが、手間と報酬が見合わないのだ。
・・・
普段から朝は早いほうであったが、流石にまだ眠い。
それでも、港に行くと漁業ギルドの職員の人と漁師さんはもう準備ができていた。
「今回、船に乗せてくださるのが、漁業ギルドの参与をしてくださっているゲルドさんだ。
ベテランの漁師さんになる。こちらは、息子さんのゴラドさん。
4年前まで、第二学園に通っていた皆の先輩になる。」
そういうと、職員さんは壮年と青年の漁師さんを紹介してくれた。
「よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく。
最近は、漁師を目指す者が少なくなったからね。少しでも漁業について知ってもらえると嬉しい。」
そういって握手をしたが、ゲルドさんの手は凄く力強かった。
・・・
波は穏やかだったが、船の上は結構揺れた。
ゲルドさんやゴルドさんは当たり前のように船の上で立ち回れていたが、僕やシド兄はずっと座っていることしかできなかった。
これでも、結構鍛えているつもりだったので、少し落ち込んだが、ゴルドさんいわく「慣れ」の問題らしく、1週間も乗れば大体は酔わなくなるらしかった。
どちらにしろ、網を海に入れるのはコツがいるらしく、その間は特にすることがないので、海の話や魚の話をゴルドさんが説明してくれた。
魚というのは、栄養も豊富なうえ、健康にも良く頭にも言いということや、漁業ギルドでは氷魔法が重宝されていること、今のギルドマスターが燻製をつくるための装置を仕入れてから、収入面でも良い仕事になっているのだが、やはり船の購入などハードルも高いので、新たに漁師を目指す人を増やすためにアルバイト兼体験会というのを、ゴルドさんが考えたらしいのだ。
最初は、人気もそこそこあったのだが、昨年の体験会の日に来たのが女性が多かったらしく、ちょっと張りきってしまったら、彼女達にはそれがきつかったらしく、今年は応募が全然なかったらしいこともわかった。
「ようし、そろそろ網を引き揚げるぞ。
鮫の歯やエイの毒針だけは気をつけてくれよ。」
ゲルドさんがそういうと、僕たちは網を海から引き揚げ始めた。
さくっと行くはずだった学園編が長引いていますね。
もうちょっと、うまくまとめられるといいのですが。




