14.期末テストがやってきた。
僕は、共用の机の引き出しを開くと、小さな缶の蓋を開けた。
そこには、いわゆる”クズ石”と呼ばれる純度も低く小指の爪にも満たない小さな魔石がいくつか入っている。ランプの魔道具の燃料だ。
その魔石を1つ僕は飲み込んだ。
魔石は、魔素というエネルギーの塊だ。
普通は、食べないというか食べてはいけないものだ。
時々、肉などに魔石のかけらが混入して、食中毒を起こす事件があるぐらいで、人体にとっては、強すぎるエネルギーなのだ。
だけど、僕はそれを食べたことがあるし、それを力に変えることが出来る。
昔は、魔法の傷薬のように思っていたが、危険なものだと知ってからは、食べていなかった。
それを、今食べたんだ。
飲み込んでしばらくすると、胃のあたりから身体が火照りはじめる。
それと同時に、先ほどから襲ってきた急激な倦怠感や頭痛が少しだけだが収まってきた。
もう一かけらを飲み込むと、全身の体温が上がると同時に、全身に血が巡るのがわかった。
そして、急激な睡魔が襲ってきた。
最初は仮病だったが、本当の病人になったかのようだ。
夕方になると、いい匂いがして目を覚ました。
「具合はどう?」
そういうと、レオンが夕食のパンとシチューを持ってきてくれた。
これはありがたい。
腹が鳴るのとスプーンでシチューをすくうのとどちらが早かったか・・・。
僕は、あっという間に夕食を完食した。
ほとんど半日眠っていたようで、頭痛や身体の倦怠感などはなくなっていた。
得た知識は、しっかりと血肉になっているようで、まるで昔から知っている常識のようになじんでいた。
しかし、クズ石とはいえ魔石2つ消費するし、半日は休息が必要となると、今は負担が大きいな。
クズ石は、ランプの魔道具の燃料なので学園で無料で支給されるものだが、通常は1つあれば1ヵ月は持つはずのものだから、学園からもらうのは無理がある。
多少なら、アルバイトでためたお金で、街で買えなくもないが、できれば自前で調達したいところだ。
それに、なにより休息の関係もある。
授業もあるし、アルバイトの量を減らすと今度は魔石が買えなくなるし、貴重な食料ももらえなくなる。
この辺のバランスのとり方は、もう少し考えないといけないな。
・・・
あれから、あっという間に1週間がたって、期末テストの時期が来た。
あれ以来、1日1ページのペースで、教科書を”食べて”いる。
今食べているのは、体力の学科教科書だ。
これは、雨天時用の教本で、止血の方法や急所の箇所、サバイバルの基礎知識、ポピュラーな魔物の特徴などが書かれている。体力といっても、実技だけでは当然ないのだ。
1日1ページなら、特に魔石などの服用をしなくても、通常の食事+α程度で、知識を吸収することがわかった。ただ、これだと半期で1冊の本の吸収が出来るか出来ないかぐらいだ。
まぁ、これだと記憶の定着度が良いぐらいで、普通に勉強するのと大して変わらないスピードなので、何も怪しまれることがないといえばなかった。
期末テストの内容は、筆記が4日、実技が2日だった。
自身のクラスのレベルと同時に、希望者はわずかの費用で、一つ上のレベルのテストを受講できる。
ほとんどのことが無料のなかで、この跳級試験だけは有料にもかかわらず、クラスの半数近くは、そうやって跳級にチャレンジしていた。
僕も、学力、体力共にDランクと同時にCランクの試験を受けることにした。
ほとんどの週末でバボさんのところで働いていてよかった。
とはいえ、流石に両方跳級試験に申し込んだので、一気に貯金はなくなってしまった。
・・・
テスト結果の発表は、夏期休暇後だが、かなり結果には自信がある。
下手をすれば満点なんじゃないだろうか。
驚くほど、スラスラと解けた。
教科書に直接かかれていないような、応用問題もしっかりと解けた。
いわゆる丸暗記ではなく、理解が出来ている証拠だろう。
学力は、かなり期待が出来る。
体力の方も、かなりいい線を言ったと思う。
走り込みは、上級生に交じって完走できていたし、棒術もAランクに挑むシド兄と稽古をしていたわけで、入学当時とはうってかわって様になっていたはずだ。
棒を自在に動かし、連撃を打ち込む。
ガードナ先生には、それでも簡単に受けられてしまっているが、ちゃんと受けの体制を取らせることぐらいはできた。
なにより、体力の学科テスト、これも多分満点に近いと思う。
”ギフト”をくれた神様に感謝しないといけないな。
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