11.毒耐性を持っている?
シド兄とパボさんがあわてて駆けつけてくれた。
「それは、紅蝮か。」
シド兄は冷静だが、パボさんは蛇の血まみれの僕を見てうろたえているようだった。
まぁ、口の周りも服も血だらけだから、どちらかというとその方が普通の反応か。
「とりあえず、血を飲んだのと傷口に塗ってみた。」
それを聞いて、パボさんはやっと冷静になったようで、首に巻いていたタオルで、僕の膝の上あたりを強く縛った。
「すぐに、薬師の所へ行くよ。台車にのって。」
そういうと、ヤディの実を載せていた台車からコンテナを降ろして、乗るように促す。
「いや、歩けますよ。」
そういうが、それでは縛った意味がないし、何かあっては困るからといって台車の上に僕を乗せた。
・・・
「いやぁ・・・運がいいですね。
まったく毒をうけた後がないですよ。
普通、紅蝮に咬まれたら、かなり広範囲に真っ赤に腫れあがるんです。
命にかかわることは少ないですが、対応が遅かったら足が壊死して切断しないといけなくなるんですが・・・。」
薬師の先生が、僕の足を診ながら、感心している。
2つの牙の跡ははっきりとついているが、まったく腫れていなかった。
「すぐに血を塗ったのが良かったのかな?」
そういって、持ってきた蛇の死骸を見せる。
蛇の種類が間違っているかもしれないし、薬の調合にまだ血を使うかもしれないと思ったから、そのまま持ってきていたのだ。
「まぁ、血を塗りこむというのは、応急処置としては悪くないですが、それだけではこんな風にはなりませんよ。
毒自体が無かったかのようです。企業秘密ですが、解毒剤というのは血の他に、魔石や薬草などの材料がいりますし、練度の高いものでない限りは、使ってすぐに効果はでませんから。」
「そうか。でも大事がないならよかった。」
バポさんも、シド兄もほっとしたようだ。
「症状がでてないのに薬を使うのは、あまりお勧めできないので、ちょっと様子をみましょうか。
患部は、よく洗っておいてください。
あと、容体が急変したら、すぐに学園の先生に言って、ここに来てください。」
そういうと、特に何事もなく診療は終わった。
費用は?とバポさんが聞いたが、薬を使わなかったので、無料とのことだった。
良心的な店だ。
「いやぁ、しかし良かったよ。
たまに蛇がでることは、ないわけじゃないけど毒蛇は珍しいんだ。」
バポさんが、心底良かったという表情で話しかけてきてくれた。
シド兄もほっとしているのがわかる。
「しかし、あれだけ毒蛇に咬まれて平気とは運がいいのか、毒に耐性でもあるのかね。」
シド兄が気になることを言った。
「耐性って?」
「ああ。まだアーディルは習っていないけど、ギフトとスキルというのは知ってるか?」
僕は、軽くうなずく。
「そうか。よく勉強しているな。
まだまだ研究段階だけれど、スキルの中には耐性っていうスキルがあるらしい。
その中には、毒耐性なんていうのもあるらしくって、それを持っていると上級貴族なんかに召抱えられることもあるらしい。まぁ、毒見だな。危険な仕事だから、おすすめはしないが。」
「へぇ・・・。でもそのスキルっていうのは、どうやって、持ってるかどうかがわかるの?」
「一部の神殿やギルドで観てもらうことが出来るらしい。
ただ、結構な順番待ちな状態だし、必要な寄付金や料金も高額だから、普通の人には無理だな。
なにせ、「スキル視」は、貴重な”ギフト”だからな。絶対的に持っている人間が少ないんだ。
学園でも導入を考えているらしいが、流石に費用面がな・・・。」
只でさえギフト持ちは数十人に一人しかいないうえ、「スキル視」と絞れば数千人に一人になるらしい。
そして、スキル視のギフトを得られれば、神殿内やギルドでも破格の待遇で迎え入れられるらしい。
ギルドなどの場合は、報酬はギルドマスターと同様かそれ以上の場合もざらにあるという。
それだけ、自身のスキルを知るというのは、上位の冒険者や金持ちには有利なことなのだという。
それゆえ、いわゆる悪党に襲われないように神殿やギルドなどの強力な庇護下を好むのだという。
「それは・・・縁がないね。」
そう笑いながら、果樹園に戻るとヤディを実を納屋に運びこむと、一緒に昼食をとった。
昼食は、バポさんの奥さん手作りのボアの肉入り握り飯。
本来は結構筋のあるボアの肉を角切りにして、トロトロになるまで煮込んだものが大きな握り飯の中に入っていて、ボリュームも味も満点だった。
「今日は、これぐらいにしよう。
来週も、また依頼を出すから、よかったらまた来てくれよ。
あと、これ。多少キズが多いけど、味には問題がないから。」
そういうと、バボさんは、いくつかのヤディの実を持たせてくれた。
来週末の予定が埋まった瞬間だった。




