10.アルバイトをしてみる。
引き受けたアルバイトは、ヤディという果物の収穫だった。
かなりポピュラーな果実で、やや酸味のある甘い果実で美味な食べ物だ。
大きさは、大人の拳よりもやや大きいくらいで、1つの木に対してかなりの数が生る。
ただ、生る位置が問題で、低いところは、大人が背伸びすればとどくぐらいだが、多くの実はかなり上の方に生る。
はしごをかけても、届く範囲が限られているので、木登りが不可欠になるのだが、一定の年齢を超えるとやはりそれが難しくなるので、学園によく依頼が出されるのだ。
「また来てくれたんだね。助かるよ。」
初老の恰幅のいい男性が、シド兄に声をかけてきた。
「今日は、後輩を連れてきたよ。アーディルというんだ。よろしく頼む。」
後で聞いたが、どうやらこの農園の持ち主のパボさんというらしい。
他にも畑を持っているらしく、果物やら芋やらを”おすそ分け”してくれることが多いとか。
「こちらこそ、よろしく頼むよ。
僕も、昔は結構木に登ってたんだけど、歳のせいもあってなかなかね。
卒業生の若い冒険者にも依頼は出すんだけど、採りきれなくってね。
みんなが頼りなのさ」
まぁ、冒険者になってあまり果実の採取をしたいと思う人は少ないのかもしれないな。
そんなことを思いながら、ロープのついた背負い籠を背負い、皮の手袋をはめ、小ぶりのナイフを腰に差す。
シド兄がまずお手本をみせてくれたが、あれぐらいは孤児院でもよくしていたから大したことはない。
背負い籠は、ちょっと邪魔だけれど、手袋やナイフまで用意してもらっているのはありがたい。
僕は、木にのくびれや枝の付け根などをうまく見繕って、上の方に一気に登っていく。
上の方が、手つかずの果実が多いからだ。
「枝ごと切っちゃっていいんですよね?」
「ああ、かまわない。というかこれ以上高く育っちゃうと困るから、幹の色が変わるところから上は狩りこんでほしい。」
そういわれて、枝をうちながら果実を集めるとすぐに背負い籠がいっぱいになった。
「降ろしますよ。」
そう声をかけると、パボさんが木の下に来てロープからつるされた籠を受け取り、中の果実を台車の上のコンテナにあける。
それが終わるのを見たら、また籠をロープで引き上げる。
どうしても、途中で何個かおちたりするが、それでもこのやり方の方が木を上り下りするよりも圧倒的に効率が良い。
なるほど、これで傷ついて売り物にならなくなった果実がでるんだな・・・。
・・・
1本の木から、食べ頃の果実をとるだけでも1時間近くはかかる。
かれこれ3時間弱。シド兄と二人でやっているが、木は10本以上あって、まだまだ終わりそうもない。
「ちょっと、休憩にしよう。
二人よりも、私が先にダウンしそうだ。」
パボさんの方が、疲れたようだ。コンテナも4つが満帆になっている。
「じゃぁ、降りてきてくれ。
それから、これをあそこの納屋まで運ぶのを手伝ってくれ。そのまま食事にしよう。」
それを聞いて、僕は木から降りようとした。
ところ、少し降りたところで、左の足首に鋭い痛みを感じることになる。
「痛!」
そう声をあげて、足首を見ると、赤い色をした蛇の魔物が牙を立てて噛みついていた。
大きさは、さほど大きくはないが、こいつは紅蝮とかいう毒蛇だ。
足を大きく振って、引き離そうとするが思ったよりも牙が深く刺さって抜けないため、右手で尾をつかんで引っこ抜く。
首をもたげてきたが、そこをすかさず左手でつかんだ。
そして、尻尾を離してナイフを抜くと木にこすりつけるようにして、首を落とす。
首と胴体が切り離されても、不思議と胴体が腕に巻き付いてくる。
とりあえず、僕は急いで木から降りる。
そして、蛇のその胴体から流れる血を飲み、傷口に塗りこんだ。
毒蛇などの毒を持つ魔物は、その血が解毒剤になっていることが多いとCランクの学科でならうのだが、シド兄たちと勉強していたおかげで、僕はそれを知っていたのだ。
ただ、血をどうしたら良いかまでは、うろ覚えだ。
「シド兄!蛇にかまれた!!」
そう叫ぶと、シド兄と依頼人さんが大慌てでかけてきてくれた。




