7.フェンリル寮
”フェンリル”
7柱の神の一人である戦神クベイラが従えていたとされる神狼の異名を持つ伝説上の狼の名で僕たちの寮の名前になっている。
その他の”フェニックス””ユニコーン””ペガスス”も神話に出てくる伝説上の生き物の名前だ。
ユニコーンは、僕がお世話になっていた修道院の知恵の女神ヴァティ様に所縁のある生き物なので、本当はそこが良かったが、女子寮らしいからしょうがない。
それぞれの寮は、学園の4隅に配置されていて、フェンリルは、南東の位置にある。
学園の正門は真南にあって、メインの校舎から放射状に道がつながっていた。
講堂や運動場は校舎の奥にあるので、道に迷うようなことはない。
僕はテストが終わると、最後までテストを受けていたレオンやセドナ先輩と一緒に寮へと向かっていった。
・・・
今日は、各寮で歓迎会が開かれるらしい。
今日の夕食は、学生ではなくちゃんとした料理人が作ってくれるらしい。
しかも、食べ放題だという。
僕は、もうおなかが空いてしょうがなかったので、ごくりとつばを飲み込んだ。
寮に帰ると、1階の食堂に90人ぐらいの生徒が集まっている。
テーブルの上には、大きな肉やパン、サラダなどが沢山盛り付けられており、近くに木製の皿が積まれていた。ヴュッフェスタイルというらしい。
ガードナ先生が僕らよりも少し遅れて戻ってくると挨拶をする。
「あらためて、入園おめでとう。
それにテストも疲れたろう。
どういったクラスで学ぶことになるかは明日発表するから楽しみにしていてくれ。
まぁ、堅苦しい挨拶は苦手なんで、簡単に挨拶するぞ。」
そういってから、ガードナ先生は4~5分はしゃべった。
いつもの事らしく、先輩たちは困ったような笑みを浮かべている。
そんな中、見知った顔を見つけた。
同じ孤児院で育った”シド兄”だ。卒業したのが2年前だから、今は3年生のはずだ。
シド兄もこちらを見つけたのか、小さく片手をあげて合図してくれた。間違いない。
年齢が一番近い兄さんだったから、かわいがってもらった。
特に、僕が字を書けるのもシド兄がよく本を読んでくれたり、文字の書き方を教えてくれたからだ。
思わず、こちらも小さく手を振る。
そんなこんなで、先生の挨拶が終わったら、セドナ先輩が乾杯の発生をする。
「じゃぁ、とりあえず料理も冷めちゃうので先に乾杯しましょう。」
といって木製のジョッキを手に取ると苦笑がおきる。
暗に先生の話が長いといっているのだが、ガードナ先生は気にした様子はなかった。
見よう見まねで、ジョッキを軽く打ち付ける。
ジョッキの中身は、柑橘を軽く絞った水だ。
柑橘にはわずかだが、リラックス効果と疲労回復の効果があるらしい。
自己紹介などはあとらしく、まず食事をするらしい。
孤児院では、自分の分というのが決まっていたから、最初はルールがわからなかったのだが、レオンが教えてくれた。レオンは、薬を扱うそこそこ大きな商家の生まれらしく、このような食事の仕方にも慣れているらしい。なんと兄は第1学園に通っているらしいのだが、お金がかかることと全体のレベルが高すぎて厳しいらしく、弟の第2学園にいくことになったらしい。
やはり、貴族などは英才教育を受けるらしく、第1学園はスタート時点からレベルが違うらしい。
それでも、第2学園のSクラスやAクラスは、第1学園とさほどレベルが違わないようになっているらしい。
つまり、第2学園の目的というのは、最低限の知識や能力を身につけさせることから、国などの要職につくことを期待される人材の発掘・育成まで多岐にわたるらしい。
「アーディル!大きくなったな。見違えたぞ。」
僕が皿に山のように食事をとって頬張っていると、シド兄が、声をかけてきてくれた。
「シド兄!!元気だった?!」
「おちつけ、毎年かなり余るぐらいの量が用意されてるから。」
シド兄には、豪華な食事に舞い上がる僕の気持ちがわかるようで、嬉しそうな顔をしていた。
「あ、いっとくけど、こんなに豪華なのは今日だけだからな。」
その後、シド兄とは、孤児院の話、シスターの話、学園の話などいろいろな話をした。
「そろそろ、自己紹介をしていこうか。」
まだまだしゃべり足りなかったが、セドナ先輩がいうと一人ひとりの自己紹介が始まった。
ただ、正直今日1日で沢山の名前を聞いて覚えきれない。
とりあえず、顔だけは覚えておこうと思いながら、ひたすら食事を食べ続けた。




