6.死ねない者達
「左舷、船首小破。応急処置をしました。浸水被害はありません。」
船員の怒鳴るような声が響く。
「衝角は躱せたか。危ないところだった。」
どうやら、回避まではできなかったが、あれでも上手く衝撃は逃せたようだ。
船について詳しいことはわからないが、あえてスピードを殺し、相手の船首の衝角を躱してあえて船をぶつけてダメージを殺したようだ。
「相手は、不死人だ。痛みを感じん。あと、甲板上での火は勘弁してくれよ。」
デュルゲルさんが僕の方を見て叫んだ。
確かに、こんなところで船に火がついてしまったら、敵を倒しても海に投げ出されて助からなくなってしまう。得意の火魔法を封じられたうえ、僕の獲物=槍のような刺突武器は相性があまり良いとは言えない。
『丁度良いではないか。精霊の反応は気になるが、このレベルの不死人なぞ、訓練相手の木偶に毛が生えた程度。最近は、少し火魔法に頼りすぎじゃからな。初級魔法ならすべて使えるんじゃろう?訓練と思って対処してみよ。』
シャナがいとも楽しそうに言う。ということは、おそらくできると信じているのだろう。
戦闘自体は、幸いこちらが優勢といったところのようで、特にデュルゲルさんが戦斧を振り回すと、スケルトンの骨が飛び散るように叩き壊されていっていく。
スケルトンやゾンビなどの一般的な不死人は、彼らの敵ではない。
ただ、弓などは有効打にならないため、人によっては苦戦している。
ニースさんは、最初風魔法を使っていたが、水魔法に切替え、海水をそのまま操って魔物を海に落としていく。どうやら、スケルトンやゾンビは泳げないらしい。海底でも不死人が生きているのかどうかは謎だが。
「水魔法か。海上だと相性は良さそうだな。」
ニースさんの様子をみて、僕は幽霊船の甲板に向けて、水魔法を放つ。
海面から、水を組み上げ、大きな塊にして貯めると、狙いを定めて圧をかけて放つ。
勢いよく放出された水は、スケルトンの骨やゾンビの肉を砕きながら吹き飛ばしていった。
初めてにしては旨くいったのではないだろうか。消費する魔力もほとんど気にしなくていいレベルだ。
『うむ。こいつら相手なら悪くはないが、もう一工夫欲しいところだな。
海水は空気よりも電撃を通しやすい性質を持つから電撃の魔法と組み合わせるとかの・・・。ん?どうやら、魔物にも動きが出て来たな』
甲板にいたスケルトンやゾンビが片付いたかと思ったら、こちらの船にいくつかの光球が浮かび上がり、人の形をした霧状の塊が何人も浮かび上がる。
『精霊?』
『いや、ただのゴーストじゃな。ただ、スケルトンとかと違って、ゴーストは肉体がないからのぉ。
精々念動力で物をぶつけてきたり、精神攻撃をしてくる程度の魔物じゃが、物理攻撃しか攻撃できんやつには厄介じゃぞ。』
さて・・・どうしたものだろうか。
今の水魔法は多分効かない。魔法でつくっていても、所詮圧力をかけているだけだから。
ほら・・・やっぱり。
では、さっき教えてもらった電撃とのコンビネーションはというと、・・・・ダメージが通った。
だけれども、思ったよりも同時に2つの魔法を使うというのが難しい。
タイミングやバランスが悪いので、ダメージ効率も悪い。致命傷には程遠い威力しかだせなかった。
『まぁ、最初はそうなるじゃろ』
シャナは、どうやら結果がわかっていたようだ。
『そう睨むでない。練習が足りんだけじゃ。それよりもどうするんじゃ?』
「それなら・・・」
僕は、緋氷槍を構えるとゴーストに切りつけた。
槍の先は空を切り手ごたえはない。が、ゴーストの悲鳴がすると霧の塊のようなゴーストが霧散していった。
緋氷槍の穂先はうっすらとはいえ、氷の魔力を宿した刃になっている。ここに氷属性の魔力を直接流して魔力の刃を強化してやったのだ。
霊というのは一種のエネルギー体らしい。そのため、聖属性でなくとも純粋なエネルギーとしての魔力であればダメージを与えられるとか。
教科書には、あまり詳しいところまで書かれていなかったが、一応読んでおいてよかった。




