5.幽霊船
海・・海・・・海・・・・。
敵に見つかれないようにという事もあり、かなり沖の方を航行しているらしく、かれこれ数時間も島影一つ見かけない。
波もその分荒いらしく、デュルゲルさんや銀の旅団の数名は船酔いで嘔吐を繰り返し、今は、船底で動けなくなっていた。涙目になって転がるその姿からは、普段の陸上での勇猛さは想像もつかない。
そして、酒酔いと船酔いは全く別物なんだと、僕は知った・・・。
幸い、僕は船酔いをすることもなく、何もすることがない時間が続くため、ひさびさの瞑想をしていた。
学園ではよく行っていた魔力を全身に循環をさせる訓練だ。
学園にいるときは日課のようにしていたんだけれど、流石に最近はする時間がとれていなかった。
魔力を感じ、流れを自在に操るのだが、スキルレベルがあがっていることもあって、血流の流れよりも魔力の流れをしっかりと感じることが出来た。
「おい。大変だ!動けるもんはちょっと来てくれ」
船室に来たレッド船長が、銀の旅団の人たちに声をかけてくる。
僕も、一緒に甲板にあがると、いつのまにか周りは日が陰り、霧が立ち込めていた。
やることがなかったのと気持ちが良かったのもあって、結構な時間を瞑想していたようだ。
「どうしたんです?」
船員の一人に僕が聞くと、船員は黙って左舷の方を指さす。
かなり離れているし霧で視にくかったが、この船に併走するかのようにやや小ぶりの帆船が見えた。
「敵船ですか?それとも海賊??」
そう尋ねると、船員は首を横に振って答えた。
「こんな航路でもないような場所に敵船も海賊も出やしないさ。
それに、よく見ろ。帆船なのに帆がボロボロだろ?なのにこの船のスピードとほぼ同じ・・・いや若干向こうの方が速いぐらいで併走してくる。
こんな場所で、霧がたちこめる夜に遭遇する・・・・ありゃぁ、幽霊船かもしれねぇ。」
「幽霊船?」
船員は頷く。
本や話では聞いたことはあるけれど、実在するのか・・・。
『アルよ。これは面白い気配を感じるぞ』
突然シャナが現れるとそう言った。
『幽霊船らしいよ。』
『ふむ。不死人の気配に紛れて、精霊の気配がするのぉ。しかもそれなりの力の持ち主じゃな。気をつけよ。』
不死人か・・・。
その名の通り、死なない・・・いや死ねない者達をそういう。
肉体を持つゾンビから、骨だけの存在のスケルトン、既に魂だけの存在となっているゴーストなど種類も豊富だが、知能はほぼなく、総じて生きている者を恨み、生きている者の敵となる存在だという。
一般的には、聖属性の魔法や武器が効くと言われているが・・・
「近づいて来るぞ」
船員が悲鳴のように叫ぶ。
遠目にもあきらかにボロボロの服を着た骸骨が甲板をうろついているのが見えた。
どうやら、幽霊船で間違いはないらしい。
「衝突してくるぞ! 回避させろ!! 旅団と冒険者で動ける者は甲板で待機。
左舷から離れろ!。近くの物に捉まれ!!」
続けざまに指示が飛ぶ。
『アル、捕縛の闇縄で自分達を船に縛れ。衝撃で海に放り出されるぞ!』
シャナからの指示で僕は素早く近くにいた者に捕縛の闇縄を張り巡らす。
そして、その数秒後、木が割れる音とともに激しい衝撃と揺れが僕達を襲う。
僕はもちろん旅団やロッソさん達は、捕縛の闇縄があったこともあり、誰も海に投げ出されることはなかったが、船首の方にいた船員の何人かが宙を舞い、甲板にたたきつけられたり、海に放り出されてしまった。助けてやりたいが、流石にこの状況ではそれはできないだろう。
「左舷に接触。接舷されたぞ。浸水被害は確認急げ!戦闘部隊は魔物の撃退を頼む」
レッド船長の怒号が飛び、船員の返事をする。
「いくぞ!」
ロッソさん達が、左舷の幽霊船に向かって甲板を駆け出した。
すみません。
毎日書く力がありませんので、ペースを少し落とさせていただきます。
月・水・金で更新していけたらと思っています。
(なので、明日はお休みさせていただきます。ぺこり)




