第九十話:連帯責任
あけましておめでとうございます。
本年も『煉獄世界の死神』を宜しくお願いします。
m(__)m
基本は週1水曜日の更新となります。
スマホで入力する際、変換の際に誤字脱字が起こってしまうようです。これは恐らく自動バックアップによる弊害のようなもので、掲載前に見返すのですが、たまに抜けがあることがあります。
見つけましたらご報告ください。m(__)m
昨年は10名の方からブックマークを頂きました。増えても13人でした。今年は20人を目指したいと思います。宜しければブックマークして下さるとモチベーションが上がります。m(__)m
評価やレビュー、感想、伏線発見報告もお待ちしております。
ではでは。
三が日ですが、しんみりとした夜を貴方に。
夜。
孤児院の食堂に子供達が“全員”集められる。
孤児院の全員が一ヶ所に集められるのは稀だ。
食事と風呂以外の私生活は、主に男女別の年齢層別に別れた各階層にて完結する。
食事は低学年と高学年で別れる。
だから基本的に“全員”が集まることはない。
だが今日は違った。
“孤児院長”命令によって。
「は~い、じゃァ、お話を始めますねェ。」
そう“孤児院長”とは、そこの浮浪者…いや、スラム街では“腐髏者”と呼ばれていたか。ボサボサの白髪を面倒臭そうにボリボリと掻き、相変わらず瓶底メガネの下に鋭く冷たい光を放っているその男は、ここでは“孤児院の創始者”“孤児院長”と呼ばれる存在だった。
そしてオイタをやらかした俺たちもまた、そんな男の隣に立たされている。まぁあれだ。“公開処刑”といつやつだ。
「皆サン、ハジメマシテの人もいるんじゃないですかねェ?何せ滅多に孤児院に来ないですからねェ。改めまして、え~、アタシがここの院長の『ヴォルバタ』でス。本日皆サンに集まってもらったのは他でもない、危ないことに巻き込まれないために、という話です。」
「………。」
院長ヴォルバタはそうして俺たちのやったことについてツラツラと紹介する。
皆の視線が痛い。
…というか他の子供達はあの貧民街“ギャオ”に行ったことは無かったのか?最初から“ヤバい街”と知っていて近付かなかったといった感じか?
絶対高学年生は行ったことあるだろ…。
そんな高学年生の表情と言動は“余計なことしやがって”“バカじゃないの?”“あ~メンドクセ”と三者三様だ。
やらかした俺らを見る目は皆冷たい。
初犯にしては厳しすぎやしませんかねぇ?
まぁ、それだけ“禁忌”に触れたということだろう。
子供達全員への“注意喚起”と“見せしめ”いうところだ。
そしてそのまま、これが俺たちの“罰”になる。
仕方のないことだな。
だが、“罰”はこれだけでは済まなかった。
翌日の学校にて。
「え~、アタシがここ“カトラ皇国国立学園”の”園長“、『ヴォルバタ』です。ヨロシクお願いしまス。」
そしてまた俺たちは隣に立たされる。
“全校生徒”の目の前で。
そう、“全校生徒の”だ。
“文武両道のAクラス”も“スポーツマン養成特化のBクラス”も、“学業の優等生が集まるCクラス”も、“凡人の集まりDクラス”も、全員。
まぁ小等部だけだけど。
改めてここはモンスター校だと実感する。
さすがに圧巻だ。
二度目の”公開処刑“。
しかも全校生徒の目の前で。
内心、もうウンザリ。
下手な説教より利いた。もうしません、本当に。
倫理の先生は寝不足のようだ。
目の下に隈を作っている。
なんというか、すみません、問題児で。
昔から問題児だった。
鬼ごっこや缶けりで畑や人の家の庭に入るのは当たり前。時には人の家の屋根にも登った。
こうして全校生徒の話題になることも屡々(しばしば)。
大抵はイジメっ子のスケープゴートだったけれど。
イジメられっ子が罰せられる。
よくある話だ。
まぁ関わるのが悪い。
ともかく、転生しても問題児だったということだ。
ところで…。
ソゥには泣きながら怒られた。
ジルとセイラとピコには呆れられた。
どんな説教よりも、
どんな公開処刑よりも、
それが辛かった。
それ以外にも俺たちは個人個人で“孤児院長”であり“学園長”であるヴォルバタと話をしている。
俺がヴォルバタに怒られたことは1つだけ。
『殺人未遂』それだけだ。
別に“ギャオ”に忍び込んだことも、中身が大人の俺が子供達を制止できなかったことも、特にお咎め無しだった。
“お咎め無し”というのが、逆に心に効いた。
ヴォルバタは、心底呆れた眼をしていた。
…ってかさ。
ナイフを蹴って寄越したの、ヴォルバタだぜ?
明らかに俺を試したろ。あの状況でナイフをパスされたら“殺れ”ってことだと思うだろ…。仮にもならず者二人に囲まれてたわけだしさぁ…。
理不尽だわ~…。
まぁ、少し考えれば、それすらヴォルバタの狙い通りだったのかもしれない。もしかして“アマニタ一族最強”の肩書きに溺れ、身の丈に合わないような無茶をしようとしていないか、慢心していないか試そうとしたのか…?
他の皆は『力の渇望』『無邪気な興味』『他人の気持ちを推し量らなかったこと』などについて怒られたようだ。まぁ、スラム街の人たちとしても、子どもに冷やかされるとか溜まったものではない。
そこに関しては俺も同意だ。
子供故の残酷さというやつだ。
ちなみにヴォルバタはスラム街“ギャオ”の“自治会長”も兼任している。…ああ、成る程、だからあんなホームレスみたいなボロボロの身なりなのか。きっと昨日のギャオでの争いも上手く丸めてくれただろう。
ただのホームレスと侮って悪かったと思う。
“カトラ皇国孤児院『院長』”
“カトラ皇国国立学園『園長』”
“カトラ皇国貧民街ギャオ『自治会長』”
“アマニタ一族No.6『Amanita Volvata』”
“猛毒菌フクロツルタケの亜人”
とんでもないヤツだ。
頭が上がらない。
さて…そんな権力者様からのお仕置きはこれで終わりではなく…むしろこれからが始まりだった。
「え?“職場体験実習”?」
さらに翌日。
ソゥを除く俺たち孤児院仲間は馬車の中にいた。
俺たちを見送ったヴォルバタからは一通の手紙を渡されただけで、用件も行き先も、実習日数も伝えられていない。
退学処分は避けた。
孤児院からの退去も逃れた。
では、俺たちはどこに?
どうしてこうなった??
馬車は草原を駆けていく。
どこまでも続く平原。
どこまでも伸びるなだらかな丘陵。
雲が優雅に泳ぐ青い空と眩しい太陽。
モンゴルの映像とかで見ただろうか?
綺麗な景色とは対照的に、馬車の中は曇天だ。
バルザは憔悴している。
昨日一昨日のことで、余程自分を責めたのだろう。
何度も何度も謝られた。
寝れていないのか目が真っ赤だ。
原因と責任は明確だ。
リーダーたる自分が皆を危険に晒した。
ちょっと魔が差しただけだった。
ほんの少しの興味本位だった。
引き際は何度もあった。
でも、結果として一歩間違えば取り返しのないことになるところだったその事実に、バルザは向き合っていた。
ルザルは達観、いや、ボーゼンという方が正しい。
これからの未来が不安なのか。
遠くを眺めている。
冷静な自分が、興味という旨味に判断を誤った。
一度目は追いかけられるだけで済んだ。
だが今回は違う。
挟撃にあった。追い詰められた。
警戒していたはずの後方から忍び寄る敵。
逃げ場のない恐怖。
初めて感じた“死”ーー
クヴァはいつも通り呑気に…とはいかなかった。
クヴァは路地裏での戦いに参加すらしていない。
余程自信があったのだろう。
何かあれば自分が守る、守れると思っていたのだろう。
だが、何もできなかった。
ジリジリと追い詰められる中、戦うどころか、動くことすらもできなかった。
それが全て。
クヴァは6歳としてはかなり恵まれた体格だ。
だがそれは“子供として”の尺度。
自分より遥かに大きな体格の大人。
身の丈を知った。
各々、感じるところはあっただろう。
それぞれの表情は暗い。
普段通り、そこでニヤニヤしているジャグラーと。
再びプライドがズタズタにされ、今すぐにでも全てを忘却してしまいたいと、そして“また追放か”と、もはや開き直っている心境の俺を除いては。
「ジャグラー。何故俺たちの場所が分かったんだ?」
「フフフ…ナイショです。」
「惚けるな。話せ。」
「おお、怖い怖い。…フフフ……いいでしょう。実はワタクシは時々、変な夢を見るんですよ。」
「変な夢?」
「ええ。それはそれはハッキリとした夢です。そしてそれは、大体70%くらいで正夢となります。」
「何かの能力なのか?」
「さぁ?昔からですよ。」
「…なるほど。そしてそれが『当たった』と?」
「フフフ…そんなところです。」
なるほど。
だが、真実なのだろう。
今はとても、追及する気は起きなかった。
そんな体力も気力もない。
だが、俺はジャグラーに感謝の言葉を送った。
信用ならないヤツだが、助けられたのは事実。
貸し一つにしといてやろう。
馬車は駆ける。
道中4度のキャンプと1泊の宿を挟む5泊の旅。
かなりの長旅だ。
シンクバトラからカトラまでの距離の比ではない。
道も良く、馬車はかなりのスピードで駆けていく。
好きなキャンプとは言えど、雰囲気は重い。
とてもキャンプを楽しめる雰囲気ではない。
特技の披露もナシだ。
あくまで『罰』の旅。
それは皆重々分かっている。
孤児院に一人残してきたソゥは今頃どんな心境の中、夜を過ごしているだろうか?
今回ソゥは、俺たちのしでかしたこととは本当に関係ない。ソゥは最後まで俺たちの悪巧みに反対していたのだ。
だがソゥが一人残るよう命じられたのは「それも含めた連帯責任」である。
毎朝俺たち6人で2箇所のトイレを掃除していたが、今日から当分はソゥが一人でやることとなる。そして、夜も昼も、自分が頼ってきた友人ナシで一人で過ごすこと。悪ガキの友達という看板を背負って一人学校に通うこと。それがソゥへの何よりの罰となる。
『俺たちのこれからの心配より、残してきたソゥの方が心配』全員がそう思っていた。
だから何より気が重い。
口数は少なく、沈黙の時間だけが流れていく…。




