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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第3章 少年時代
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第七十九話:忌み嫌われる能力




俺はキノコの亜人。

その中の「テングタケ科」のキノコで構成された一団。

『アマニタ一族』。

その序列『No.1』。

『タマゴテングタケ』の亜人。



……。

ラキが俺の能力を説明する。

能力の細かい由来や原理を要約すると、その能力は

『キノコの亜人』としての『基本スキル』

『アマニタ一族』としての『種族スキル』

『タマゴテングタケ』としての『固有スキル』


の3つに分類されるようだ。



その能力は、少しショックなものだった。



まずキノコの亜人としての基礎スキル。

これはキノコ含む菌類の特徴や特性、生体をそのまま能力として応用させたものである。キノコの亜人は大抵持っている能力であるが、種類によって得意不得意がある。


『不滅』

地球規模の災害にすら菌類は生き残ったとされる。人間よりはるか太古の昔からその姿を変えることなく生きてきた菌類故のスキル。ただし死なない訳ではなく、老化もする。1億年前にキノコの亜人が地表に出たとき、大量の魔力を得て身につけた能力。


『多様耐性』

人間が住めないような環境でもキノコは生えてくることから生まれた能力。具体的には放射線、酸欠、冷凍、貧栄養など。ただし、キノコは有機物のため燃えるが故に、炎が弱点とされる。


『転生』

キノコは枯れては新しいキノコが生え、また生えてくる、つまり甦るという言われから「作られた」能力。すぐに生えてくるキノコとそうでないキノコとあるように、得手不得手がある。死んでから数年~数百年を要する者もいる。上記『不滅』の能力と同じく、キノコの亜人としての能力。


『根の形成』

キノコの本体は、実は土の中にある“白い部分”である。広範囲に菌糸を根のように張り巡らせ、その範囲内において何度もキノコを生やす。根を生やすには時間と、根気と、相応の魔力が必要。根から土中や空気中の魔素を吸収して自らの力にすることができる。根の範囲内ではキノコの亜人は強力な恩恵を得ることができる。


『子実体形成』

自身の分身を形成する。形成には根を張る必要がある。子実体は本体をベースとし、本体と同じ、若しくは若い個体を作成する。子実体を形成することで、自分の『代替品(スペア)』ができるようなもの。オートで別行動を取らせたり、本体と人格を入れ換えることもできる。また、人格の移動により、知識や経験は本体に蓄積されるが、本来は別の個体であるため、鍛練による筋力強化は引き継がれない。子実体を1つ形成するには人間一人分の血肉と魔力が必要。慣れていれば子実体と本体を見分けることができる。


『胞子散布』

自らの遺伝子情報が入った胞子を散布させる。用途は寄生や新たなる子実体形成、転生などである。


『再生』

キノコは地中にある『菌糸』が残っていれば再生することができる種類もある。キノコ狩りをするときは必ずキノコの根本は切り落として持ち帰るように。そうすれば切り落とした根本から菌が広がり、また生えてくる。


『増殖』

キノコは胞子を飛ばしたり、地中にある菌糸から子実体を増やし数を増やしていく。例えばナメコのようなキノコは特に増殖の能力が高い。タマゴテングタケは基本的に単独で生えるため苦手とする。


『分裂』

キノコは株により増えていく種類もある。例えばブナシメジのようなキノコはこの能力が高い。タマゴテングタケは基本的に単独で生えることが多いため苦手とする。


『寄生』

キノコは胞子を飛ばして他者に寄生する。大抵は木や土壌に寄生するが、人間に寄生して人間から生えるキノコも実在する。一度に沢山の人間に寄生して継続的に魔力を吸収することも可能。タマゴテングタケは基本的に何かに寄生して生える種ではないため苦手とする。


『吸収』

養分を吸って自身のエネルギーにすることができる。大抵は土や朽ち木から養分を吸収するが、死体からもエネルギーを吸収する種もいる。この能力の通り、人間の養分を直接吸収することができる。吸収された人間はミイラのように枯れ果てる。


『分解』

キノコは『森の分解者』とも言われ、葉っぱや朽ち木、種類によっては動物の糞、時には死体をも分解することができるが無機質の骨は残る。また、吸収と違い分解には魔力を必要とする。


『腐敗』

キノコは寄生した木を腐らせることがある。腐敗させるには魔力が必要。腐敗させた方が吸収の効率が上がる。


『擬態』

キノコは枯れ葉に完全にカモフラージュされる。キノコ狩りで葉っぱに混じったキノコを探しだすのは経験による“見る目”が必要。食べられるキノコに擬態する毒キノコも存在する。真っ白な柄と薄黄色の傘を持つタマゴテングタケは茶色い土壌に対して酷く悪目立ちするため使えない。



これらが基礎スキルである。

キノコの亜人を見たときは、まずこの能力を疑え、逆に、この能力が疑われる時はキノコの亜人を疑え、である。

ある意味恐ろしい能力だ。

この時点でほぼ無敵である。

その種のキノコの亜人が本気を出したら隠密のプロもお手上げである。ほぼ無敵なのではないのだろうか。




次に『テングタケ科』としての種族スキル。これは“テングタケ科”である“アマニタ一族”しか使うことができない。



『致死毒』

“テングタケ科”の中でも一部猛毒種が多く有する致死性の猛毒『アマトキシン』により、ファロイドの血が体内に入ると遅くとも1週間でほぼ確実に死ぬ。致死量は1kgあたり0.3mg。60kgの成人男性なら僅か18gで死に至る。毒に感染した者は嘔吐や下痢などの症状が表れ、一度症状が和らぐが、数日して大量に吐血や下血を始め、じわじわと全身の内蔵が破壊された結果、もがき苦しんで死ぬ。

さらに魔力でアマトキシンを活性化させることで凶悪化。魔力で活性化したアマトキシンの致死量は1/100になり、飛躍的に致死効果が高まる。皮膚から吸収されるようになるためファロイドの血に触れても死ぬ。また、乾燥して舞い上がった血や体液を吸い込んでも死ぬようになり、凶悪化したアマトキシン感染者の嘔吐物や下痢に触れても二次・三次感染する。

それによりネズミ算式で感染者が爆発的に増える。

尚、本来アマトキシンは触れただけでは皮膚から吸収されることはなく、タマゴテングタケやドクツルタケを素手で持っても死ぬことはない。


『一撃必殺』

覚醒中のファロイドに殺意を持って斬られれば相手は即死する。魔力によって凶悪化したアマトキシンが溢れ出る魔力に溶け込み、切り口から相手の身体に侵入し、肉体を破壊し尽くす。


『溶血・凝血』

テングタケ科の毒性の1つ『溶血性タンパク』に由来する。魔力を纏ったファロイドに斬られた傷は塞がることはなく、血が止まることもない。集中して継続的に毒を与えれば内臓をゼリーのようにグチャグチャに溶かすこともできる。逆に魔力を用いて能力を反転させ、血を急速に固めることもできる。

全てのアマニタ一族が使えるわけではなく、アマニタ一族の中でも毒に強い毒性を示す限られた者のみが使うことができる。


『死の衣』

アマニタ一族の中で、No.8以上のアマニタ一族は転生や完全再生の際の『白い卵』を分解しローブのように身を纏う。それはテングタケ科の亜人の本能によるもの。

その衣は実は食べることができるが、勿論猛毒である。

ちなみに素手で触れても毒性はない。

毒のないNo.9『ハイカグラテングタケ』とNo.10『タマゴタケ』、つまりアイラと、No.11『キタマゴタケ』は、それぞれ『地の衣』『天の衣』『光の衣』という名前が着いており、毒性はない。No.11以降のアマニタ一族は白い衣を纏うものの毒性は低いとされる。


『畏怖』

美しい見た目とは裏腹に、食べたものに確実な死を与える致命的な毒性から、テングタケ科のキノコの一部は異名がつくほど畏れられる存在となった。人間を殺せば殺すほど、名が知られれば知られるほど、人間の恐怖や畏れはアマニタ一族への力となる。また、多くの人間から警戒されやすくなるデメリットがあり、『畏怖』の能力があると『擬態』の能力値は必然的に低くなる。


『熱耐性』

普通のキノコは熱に弱い。焼いて熱を通せば無毒化したり、茹で溢せば無毒化する毒キノコもいる中で、『アマトキシン』は熱に強く、テングタケ科のキノコは煮ても焼いても毒が分解されることはない。熱に強い毒を持つ、という特性から『熱耐性を持つ』と意味をねじ曲げ、魔力の力で能力を得た。


『食人衝動』

性格にはアマニタ一族だけでなく、毒成分を持つキノコの亜人は誰しも持つ本能である。キノコは人間に食べられるだけの存在ではない。致命的な毒キノコは人間の命を食い尽くす。どんな動物よりも満ち足りた食生活を営む人間の血肉が最も栄養価が高く、どんな動植物も貪欲に食べる人間の肉体が最も魔力を溜め込んでいるため、最もエネルギー値の高いご馳走となる。能力を使いすぎたり、生命力が低下している時に強い衝動が表れる。逆にアマニタ一族でも毒を有さないキノコの亜人に食人衝動はない。



『煉獄世界の観測者』

No.8以上の猛毒を持つテングタケ科の亜人特有のデメリット。猛毒種の亜人は人を殺す力を持つ一方、この世のありとあらゆる悲劇を疑似体験する運命にあるとされる。ある者は悪夢を見続け、ある者は実際に悲劇を体験し、ある者はフラッシュバックに苦しみ、ある者は他人の悲劇の記憶が自動的に脳裏に焼き付く。テングタケ科の亜人は人から疎まれ嫌われる上に、悲劇を疑似体験し続けるため、精神を病みやすく、人間に強い憎しみを持つ者が多い。また、テングタケ科の亜人は基本的に幸運値が低く、不運・不遇・不幸になりやすい。



………。

そして、『タマゴテングタケ』としての固有スキル。

先代が能力を解析し、記していてくれたらしい。

その内容は更に驚愕の内容だった。



『死神の天秤』

命のやり取りができる。命を奪った数だけ自身は不死となり、傷口も瞬時に癒え、時に他者の治癒や蘇生もできる。しかし奪った命より与えた命の方が上回ると自らの寿命を削ってしまったり、人間の血肉を欲する強い衝動が現れる。『根』の範囲外であっても有効。また、生物に限らず、物体にすらも『命』を吹き込むことができる。壊れた鎧や折れた刀、破れた衣類も自然と再生し元の形に戻る。



『同胞殺し』

アマニタ一族の中でも『タマゴテングタケ』の亜人だけが致死毒アマトキシンの抗毒活性である『アンタマニド』という成分を持ち、アマトキシンを分解・解毒することができる。また、アマトキシンを毒性分とするキノコの亜人を完全に消滅させることができる。





…………。


チートスキル持ちの主人公になったと、喜ぶべきだろうか。



喜べない自分がいた。


そう。俺は…。

俺は『誰かを殺すために生み出された』存在……。

人間は勿論、同胞さえも。


そして、俺は『死ねない存在』であることが確定した。



無意識に、無邪気に人の心を傷付けて。


多くの人から見放され、見捨てられ。


そんな自分の存在に苦しみ続けて。


死にたくて、でも死にきれなかった人間が。


死ねなくなったとはお笑いだ。





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