第七十八話:天使の一族
「アマニタ一族…。」
「そう、アマニタ一族。…キノコの亜人の一種であり、テングタケ科の同系統のキノコを指す。その血は他のキノコの亜人に比べて極めて強い毒性を示し、1億年前に特に強い魔力を集めた一族でもある。」
「元から家族だったのか?」
「いや?本来ベースとなった人間は血の繋がりはないようだが、キノコ自体が同族である故に親近感を持ち、纏まって行動するようになったようだ。」
「なるほど、それで、それと俺が『不死』であることと何の関係がある?」
「前にも行った通り、キノコの亜人は魔力を持った際に『キノコに関係した特異な能力』を開花させたが、それは『言い伝え』や『信仰』にも影響していた。中でもお前のベースとなっている『タマゴテングタケ』や『ドクツルタケ』『シロタマゴテングタケ』は『死の御三家』と言われていたらしい。『食べたものは確実に死ぬ』ことから『死へ誘う天使』と呼ばれ、畏れられていたそうだ。それが『信仰』。それを能力に昇華させると『致死毒』『必殺』という能力になる。彼らの血が着いた剣で相手を斬ると、ほぼ確実に死に至らしめることができるんだ。まぁ実際はアマニタ一族だけでなく、毒性が強い他のキノコも可能なのだけど。」
「それで?」
「そう、それで、だ。1億年前のファロイドの先祖、つまりオリジナルは『食べたら確実に死ぬ』というキノコとしての能力を『死を司る』と歪曲して能力に昇華した。つまりアマニタ一族の中でもお前だけが『命のやり取りができる』。つまり、ある条件を満たせば『不死』なのだ。殺すことも生き返らせることもできる。それは『死神の天秤』という、『タマゴテングタケ』の亜人であるお前固有の能力だ。」
「なるほど。それでシンクバトラ王国の時に毒を消し去ったり、生き返らせることすらできたわけだ。俺自身も何度も死んで生き返っている理由がそれか。…それで?ある条件、って?」
「人を殺すこと。人の命を奪うこと。『死神の天秤』という能力で奪った命の数だけ復活できる。…意図はしていないだろうが、お前はシンクバトラ王国で約1万人の命を奪ったらしいな。」
「……わかった。次、アマニタ一族について詳しく。」
「アマニタ一族は覚醒や復活、子実体作成の時、真っ白な卵から生まれ、『タマゴタケ』の亜人であるアイラと、もう二人以外はその卵を純白の衣として身に纏うという特徴がある。純白の衣を纏って戦い、一撃で人を殺してしまう能力から、その姿は正に『死の天使』と呼ばれ、畏れられた。他のキノコの亜人同様に強い能力を使えば人の血肉を欲するようになる。人間の敵だな。人々は『純白の衣を身に纏う者』を『悪魔』として徹底的に排除した。その名残が……。」
「なるほど。それがこの世界で孤児や奴隷が必ず身に纏わなければならず、反すると罰せられる『純白の衣』か……。」
「そういうことだな。」
「アマニタ一族については大体分かった。アマニタ一族、そしてそれ以外のキノコの亜人や、細かい能力について聞いておきたい。」
その後のラキの説明を纏めよう。
キノコの亜人は、かつて数多く存在していた。
その中でも俺が属する部類『テングタケ科』
通称『アマニタ一族』。
何人か転生待ちであるものの、現在その数14名。
No.1『Amanita phalloides』タマゴテングタケ
No.2『Amanita Virosa』ドクツルタケ
No.3『Amanita Subjunquillea』タマゴタケモドキ
No.4『Amanita Verna』シロタマゴテングタケ
No.5『Amanita fuliginea』クロタマゴテングタケ
No.6『Amanita Volvata』フクロツルタケ
No.7『Amanita Spreta』ツルタケダマシ
No.8『Amanita Abrupta』タマシロオニタケ
No.9『Amanita Sinensis』ハイカグラテングタケ
No.10『Amanita Caesareoides』タマゴタケ
No.11『Amanita Javanica』キタマゴタケ
No.12『Amanita pantharina』テングタケ
No.13『Amanita muscuria』ベニテングタケ
No.14『Amanita spissacia』ヘビキノコモドキ
No.1~No.8までが致命的な毒性を持つ猛毒菌の亜人とされ、ラキを除いてはNo.10までがこの円卓に座ることを許されている。
ナンバーを着けたのは1億年前の『オリジナル』たち。
魔力を得て勝負して、強い順に着けたのだそうだ。
何という脳筋集団。いや、脳菌集団?
過去には他にも多くのテングタケ科キノコの亜人が存在していたが、他は既に死んでしまっているか、どこかに身を隠しているか、転生待ちのようだ。
No.9、No.10、No.11は特別枠。
戦闘は不得意で、人々の治癒や回復などの能力を持つ。
No.10はそこに座っている黄色と橙色のドレスを纏う赤髪の美女で皇太子ラキの妻「イブスキ=アイラ」。タマゴタケは毒性はなく、その美味しさから皇帝のキノコと称されるが、あまりに派手な見た目で警戒してしまう人が多く、食べたことがある人は少ないだろう。No.9『ハイカグラテングタケ』も食用菌と言われているが、さらに食べたことのある人間は少ないだろう。似た毒菌も多く、個体数も少ないため、迂闊に手を出さない方がいいキノコの1つだ。俺も実物は3度しか見たことがない。食べようとは思わなかった。
そして俺の真名は『Amanita Phalloides』
『タマゴテングタケ』の亜人。
…まさかの序列『No.1』だったというわけだ。
『タマゴテングタケ』は猛毒キノコだ。
その毒性は数種類あり、『タマゴテングタケ』はテングタケ科の中で最も毒性分の種類・量共に多く、毒の構成も複雑。数ある毒の中でも「アマトキシン」という成分が特に毒性が強く、致死量は1kgあたりわずか0.3mg。日本での知名度はドクツルタケ程ではないが、全世界で人を殺した数はドクツルタケを上回る。海外ではドクツルタケより有名な猛毒キノコだ。
複雑かつ致命的な毒成分のため、解毒薬は存在せず治療法も確立されていない。タマゴテングタケやドクツルタケが消化された時点で全身の血液を入れ換えるしかないのだ。毒に侵されると下痢や嘔吐が続いた後、一時症状が改善するが、数日して吐血や下血を繰り返し、内臓が破壊し尽くされ、ほぼ確実に死に至る。
食べた時点でほぼ死が確定してしまうのだ。
そして俺は、菌類としての能力、タマゴテングタケという毒キノコとしての特性と特徴を具現化させた能力を持つ。
……『人外』の、『亜人』。
……いや、しかし…。
『No.1』って何よ!
一番隊隊長なの?プリメーラなの?
フツーNo.1って最強が着く座なんじゃないの??
No.1がNo.2以下より弱い漫画とか…いや、あったような気もするけど、それでもボロクソ言われるやつやん。
やべー。強くならないと。
「いや、気にするな。そんなこと求めていない。まぁ欲を言えば強くあってほしいけどな。」
………。
いや、王様のアナタがそれ言っちゃ、俺、強くならざるを得ないじゃん。それ見越して言っているのかな?
「期待しているよ。ファロイド君。」
…………。
ため息を1つ。
しかし、不思議なこともあるものだ。
ファロイド…。まさか俺が転生したフジの村でべリス婆さんに名付けて貰った名前が、そのまま亜人の個体名だったとは。
偶然?いや、まさか……。
「その通り。フジの村のヴェレリウス老医師は、恐らく『キノコの亜人』だろう。“知ってて名付けた”のだと思うよ。」
………。
べリスの婆さん…。協力な治癒魔法の使い手…。
まさかキノコの亜人だったとは……。
なんだ……。知ってたんじゃないか…あの婆さん……。
「まぁそういうこともある。キノコの亜人なんて、赤い瞳を持つアマニタ一族以外はどこにいるか分からないものさ。」
それにしても、赤い瞳が特徴、か…。
そしてこの名前。間違いないだろう。
喫茶店で会ったメンバー、『ヴォルバタ』と『ムスカリア』さんはアマニタ一族で間違いない。そして名前からしてヴォルバタは『No.6 フクロツルタケ』の亜人。致命的な猛毒菌の1つ。ヤバい雰囲気を出すわけだ。
そして「レイタ」。
赤い瞳に栗色の毛。特徴からして恐らくはNo.8『ツルタケダマシ』の転生者なのだろう。ツルタケダマシも猛毒菌。あのおちゃらけたアイツが、ねぇ?
あとは…『ジャグラー』か。
謎の多い男だが、振る舞いやモノの見方など、とても6歳には思えない。というか可愛いげが全くない所からすると、アイツも転生者の可能性があるな…。
「アマニタ一族はカトラ皇国において、その所属を保証され、存在を保護されている。この白い円卓に座ることができるのもアマニタ一族とカトラ皇国の権力者であるこの俺だけだ。アマニタ一族は赤い瞳と、転生時・全身再生時に白い卵から産まれることが最大の特徴とされている。『天使の一族』と称されるほど美しい容姿や美貌の持ち主が多い一方、その名の通り何人もの人間を天に導くほどの毒性を持つ者も多い。」
「保護、ね…。そして保護の見返りが『カトラ皇国の秘密兵器』としての活躍と言うわけか?」
「いいところを突いてくるな。残念ながらその通りだ。我々カトラ皇国はお前達を保護する見返りに、非常時の協力を依頼している。」
「依頼?強制じゃないのか?」
「いいや?依頼だよ。だがカトラ皇国に身を置くアマニタ一族は、今のところは皆協力してくれている。」
「なるほど…。」
「ではお前達『キノコの亜人』が持つ基本的な能力と、『アマニタ一族』としての能力、お前が持つ特別な能力について話してやろう。」
衝撃的なカミングアウトはまだまだ続くようだ。




