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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第3章 少年時代
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第七十七話:悪魔の種族




「…魔力が『異物』?どういうことだ?」


「そのままの意味だ。普通の人間では耐えられなかったのだよ。その異物の発する毒素に。」


「……なるほど。それを耐えうることができたのは…!」


「そう、大災害から唯一生き残った『亜人』というわけだ。」


「他の生物は耐えられなかったのか?」


「耐えても早世だったらしい。10歳に満たないうちに死んでしまう、とか。まぁ植物の一種は耐えたようだが、動物は無理だったようだな。隕石衝突後にゼロからの進化を遂げて繁栄した動植物は耐性を示していて、1億年前も草木や、過去の地球に存在しなかった見たこともない姿形をした動物はいたようだが。」


…なるほど、単細胞生物の方が放射線耐性も高いと言うしな…。謎の物体で構成された隕石は人体にとっては毒だったのだ。1億年前にオリジナルが見た動物は魔物とか魔獣とかそういう類いのものかもしれない。



「隕石の衝突から約1億年後、唯一生き残った『キノコの亜人』…我々は『オリジナル』と呼んでいるが、1億年ぶりに地上に出た際に、早速、種の再生と再興を試みたのだそうだ。結果は先述の通り、全滅だ。奇病にかかり数日あるいは数年で死んでしまったり、奇形が生まれたり、受精卵自体が崩壊してしまったそうだ。しかし自分たち亜人は何ともない。さぞかし不思議だったことだろう。そしてその時、『オリジナル』もまた『人間の本能』に従い繁殖をしたのだが…。」


「繁殖をして、どうなった?」


「『オリジナル』たちは交配をして人類を増やそうとしたが、その子や孫には、亜人としての能力や魔力耐性は、残念ながら引き継がれなかった。所謂(いわゆる)『普通の人間』が生まれてしまったのだ。勿論大気中の魔力に当てられ早くして死んでしまう。『オリジナル』達は繁殖を諦め、ある程度魔力を吸収した後、大気中の魔素や魔力が元の地球に生息していた生物にとって適した環境に薄れるまで、『方舟』が埋まっている地下に潜り、待つことにしたのだ。」


「なるほど。それで隕石衝突から復興までに2億年もかかったのか。その間の地殻変動や噴火、嵐などで大気中の魔素や魔力は薄れていった、と?」


「然り。そうして環境が、普通の生物が暮らすことに適した環境となる数千万年の後に再び地上へ現れ人類や他の動植物を再興させた、とされる。」


「ふむ。なるほど…。それで、キノコの亜人である俺が魔力を有する理由は、1億年前に地上へ出たときに魔力を取り込み、それを耐えうることができた名残、というわけか?」


「そうだ。付け加えるなら、キノコの亜人からはほぼ『普通の人間』が生まれたが、ごく稀に、それも隔世遺伝として、ごく僅かな力ではあったが、生まれながらに『魔力』を『魔法』として扱うことができる人間が現れ始めた。それが今現在、ごく少数ではあるが『魔法』を扱える者ということだ。」


「なるほど…。…それで?今では地下深くに埋まってしまった大量の魔力が、噴火や噴気により地表に現れる“火山”のど真ん中にカトラ皇国を作ったというわけか…?」


「恐ろしい展開力だな…。…その通りだ。といってもここの土地にカトラ皇国を築いたのは数百年も前の話だけど、当時の王はそれを計算に入れて建国したらしい。勿論、寒さや資源のためでもあったようだけれど。特にこの土地は、火山ガスに混じって、人体に影響のない、極微量の魔力が常に放出されている。そのお陰か知らないが、建国から数百年、カトラ皇国はミノア帝国を除けば、国民の「魔力適性人数」はかなり多い国となったわけだ。」


「なるほどな。」



「…次にキノコの亜人についてだ。ここまで大丈夫か?」


「ああ、続けてくれ。」



「滅んだ世界から唯一生き延びたキノコの遺伝子を宿す亜人、『オリジナル』。彼らは地上へ現れたとき、大量の魔力を取り込んだことで、『亜人』としての本来の能力以上の、それぞれキノコの特徴や特性、さらには信仰にも由来した固有の能力と強大な魔力を持つようになった。」


「ふむ。」


「『オリジナル』の寿命は個体によって極端な差があるが、一部は数百年も生きたという。だが産まれてくるのは魔力に適性を示しても何の能力も持たない普通の人間、寿命も人間と同じ。子供が孫を作り、孫が曾孫を作り…。何十、何百と代を継ぐごとに、彼らの始祖が『世界を再興させた英雄』であるという事実は忘れられてしまった。いつしか物語や御伽噺(おとぎばなし)になっていったのだ。しかしあまりに非現実的で、かつ分かりにくい話であるが故に、残った『オリジナル』がどれだけ声を大にして正統性を主張しようと、狂人の妄言としか受け入れられなかった。」


「………。」


「『オリジナル』は魔力を有した際に、キノコとしての種の特徴や特性、言われや伝承、信仰まで、様々な能力に昇華させた。…ファロイドはキノコが好きと言ったな。例えばどんなことを知っている?」


「キノコは…そうだな。本来、木や土壌に寄生して養分を吸い成長するもの、とか。他の生物では生存できないような貧栄養の土壌からでも生える、とか。」


「そうだな。だからキノコの亜人は“本来は”食べなくても生きていけるとされる。覚醒したとき、飯を食べたいと思わなかったろ?『吸収』『寄生』の能力だ。“本来”キノコの亜人は土中の栄養分や大気中の魔素、それに水気があれば生きていける。しかも“本来は”人間より遥かに寿命が長い。基本的には『不滅』だな。」


「“本来”って言葉が引っかかるんだけど?」


「例えば能力や魔力を使ってしまうと、必然的により大きなエネルギーが必要となる。普通の人間は動植物を食べることにより生きるエネルギーとするが、それ以上のエネルギーが必要となるのだ。」


「それ以上のエネルギー?」


「人間の血肉だよ。地球上で多くの種類の動植物を食し、自然界の魔力や魔素を微量ながらも多く取り込む人間の血肉。」


「………。」


頭が真っ白になった。さっきの興奮はどこへやら。

今日何度目かの青天の霹靂か、もはや分かりもしないが、最も衝撃的なワードが出てきた。



「……他に知っていることは?」


「………他には胞子を出して種を保存する、とか。雌雄による繁殖でなく無性生殖だとか。キノコとして地表に現れているのは『子実体』で、キノコの本体は土中にあり、本体が無事な限り何度も生えてくる、とか。」


「そうだな。それが『転生』という能力の起源になったとされる。ただ転生には膨大な魔力と人一人分のタンパク質が必要ではあるが。転生すべき宿主に胞子とも言える遺伝子を『寄生』させて人格を乗っ取るんだ。『分裂』もできるぞ。勿論それも人一人分のタンパク質を必要とするが。」


「………。」


「今の話を聞いて、どう思った?ファロイド。」


「……ヤバい、と思った。心当たりもある。」


そう、あれはシンクバトラで大臣暗殺の濡れ衣を着せられ投獄された時……。メチャメチャ腹が減って……看守を…。



「……まぁ、簡単に言えば、お前たちは産まれながらの人殺しだ。殺さなければ転生できず、一部の能力も使えない。逆に多くの人間を殺せば、それだけ強大な能力を有することができる。さらに言えば、『キノコの本能』として、養分の吸収は避けられない衝動とも言えるな…。」


「ごめん、ちょっと待って。1億年前、まだ大気中や土中に魔力が豊富に含まれていた時は、普通の人間はすぐ死んでしまったって言ってなかったか?なのに人間の血肉は魔力を豊富に有するだとか、矛盾していないか?」


「いい着眼点だ。本来魔力は人間含む生物にとって毒。だがそれは魔力以外にも言えることだ。薬だって一度に大量に飲めば毒となる。他には『痛み止めを飲み続けていたら効かなくなった』ということはないか?少量づつ、定期的に服用することを続けた結果、痛み止めの毒性に耐性がついてしまった、といった具合だ。魔力もそれと同じこと。人間は何千、何万と代を重ねるごとに、微量の魔力が蓄積された母体から子へ、その子が成長し、食べることで魔力を蓄積し、やがて母となりその母体から子へと魔力耐性が徐々に、本当に長い期間をかけて耐性を付けてきた。さらに隔世遺伝的に魔法を使える者が産まれてくるのだが…。極僅かだが、数千年前よりも今の方が魔力適性のある人間の割合は増えているとされる。」


「…なるほど、分かった。最初に人間を食べた『オリジナル』は人間を食べれば強くなることを知ってて食べたんだろうか?」


「さあ、分からないな。偶然の産物だと思う。ちなみに『食べる』と言ってもグロテスクなものじゃないぞ。手から菌糸を出して『吸収』するんだ。すると対象はミイラみたいに枯れ果て、骨と皮だけが残る。勿論口から食べることも可能だ。菌糸を出せないほど弱ってる時は口から食べるらしいな。」


「そ、そうなのか…。……分かった。キノコの亜人について話を続けてくれ。」


「キノコの亜人は強力な魔力、凶悪な能力、そして先に述べた“食人”によって人間から畏れられ、忌み嫌われ、強い差別の対象となった。兵器として扱われ、使い捨てられ、理不尽な扱いを受け、時に濡れ衣を着せられ無実の罪で殺された。元は自分たちが世界を救った英雄にも関わらず、だ。」


「殺された、とはどういうことだ?キノコの亜人は不死ではないのか?」


「違う。キノコの亜人は『不滅』であるが『不老不死』ではない。キノコだって枯れるだろ?普通に老いるし、刈り取られれば死ぬ。ただそれは地上に出ている『子実体』の話。キノコの本体は土中にあるから、キノコを切ってもまた生えてくる。キノコの亜人は本体を隠し、『子実体』という分身を使って動く者も多い。お前もできるんだぞ。」


「??いや、俺は使ったことはないけど、何度も死んで、甦ったぞ?焼き尽くされても再生した。それはどう説明する?」


「それがこれから説明する、『アマニタ一族』とお前の能力についてだ。』



会談はまだまだ続く。




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