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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第3章 少年時代
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第七十六話:滅亡と再興




この世界に転生した俺の正体は、太古の昔に“作られた”『キノコの亜人』だった。それは青天の霹靂。いきなり「お前は人間じゃない」と言われたようなものである。


そう、『亜人』は“作られた”のだ。




『亜人』の開発は、今から遥か昔の地球に起こった二つの悲劇の産物だとラキは語る。



悲劇の1つ目は火山の噴火だ。


今から2億年前、アメリカ北部の超巨大火山が過去最大の破局的噴火を起こし、アメリカ及びカナダは、成す術もなく一瞬で滅亡してしまう。

それから間もなくしてアフリカ東部でプルームが噴出。溶岩のカーテンが南北150km、幅10キロに渡って立ち上がり、アフリカ大陸全ての生物及びサバンナが消滅した。

世界はその後10年に渡り火山灰の暗闇に包まれ、平均気温が15度下がったことで世界的な飢饉が発生、物資の不足により世界人口は5億人にまで減少、動植物の種類は噴火前後の5%に落ち込んでしまう。



それから更に100年後、太平洋上に直径100kmの隕石が衝突することが人工衛星からの通信と分析で分かった。それが2つ目の悲劇である。

直径100kmの隕石の衝突は、恐竜を大量絶滅に追いやった直径10km程度の隕石の比ではない。一瞬にして太平洋が消滅するレベルの威力である。それでも人類は生き残る術を考えなければならなかった。



当時、滅亡したアメリカに変わり世界をリードしていたロシアは、核弾頭による隕石の迎撃を試みつつ、万が一の衝突に備えて、種の保存のため、ノルウェーにある『方舟』に、世界中の植物の種子や、凍結保存されたあらゆる動物の精子と卵子を地下深くに『封印』することを決定した。



その時に同時進行していた実験が『亜人』という実験だ。

恐らく人間は隕石衝突の衝撃波や電磁波により、例え地球の裏側にいても一人残らず死んでしまう。せっかく種を保存しても復活できなければ意味がない。ならば衝撃波や電磁波に強い種族を開発すればいい。動物・植物を問わず、白人、黒人、黄色など人種を超えて、様々な亜人の品種開発に取りかかった。

そして、亜人開発は100年という短期間で成功する。



開発された亜人はその生物由来の様々な能力を有していた。

最初に開発された猿の亜人は、類人猿との組み合わせが相性が悪かったのか、単に知能が下がってしまっただけだったという。しかし、その後に開発された犬の亜人は何より嗅覚に優れ、猫の亜人は超人的な跳躍力を有したと言う。


そして、最後に開発を目論まれたのが『菌類』の亜人。

35億年前、原初の地球より生息する菌類と微生物。

全火球や全球凍結など過酷な原始地球の環境を乗り越えることができた存在。結果的に微生物や細菌との融合は不可能だったが、キノコは辛うじて遺伝子に取り込むことが成功したのである。


原初の『キノコの亜人』はある程度の高温や極低温、低酸素、高圧、放射線、衝撃波など、自然界を問わず考えうる様々な環境変化に耐えることができ、開発された亜人で唯一、冷凍保存(コールドスリープ)から自力での復活と脱出を遂げることができたという。


そして、開発の後、多種多岐に渡った亜人は、隕石衝突の際、『方舟』に乗り、人類の未来を託されることが決定した。全ては地球滅亡後も人類という素晴らしい生命の傑作を再興させるため。



亜人開発の間、ロシアや中国を主とした迎撃チームは、何度も巨大な重水素爆弾を用いて破壊しようと試みるが、隕石は当時の科学力では未知の物体で構成されており非常に硬く、重く、大きいため、宇宙空間上での核爆発による爆破は失敗に終わり、進路変更も微々たるものに終わってしまう。




無情にも、隕石は衝突した。



隕石は時速8万キロメートルの速度で太平洋に衝突後、マグニチュード13の揺れと高さ6000mの津波を引き起こす。太平洋は熱で一瞬にして蒸発、めくれ上がった地殻や岩盤は隕石となって世界に降り注ぎ、気体となった大量の岩石が、2500度の岩石蒸気となって地球全土を包み込んだ。南極、シベリア、北極海、インド洋、大西洋…。地球上の全ての水分は蒸発し、ジャングルもツンドラも、全ての植物は焼き尽くされ、地球は灼熱の惑星となってしまう。


やがてその熱も冷え、蒸発した海は再び海として降り注ぐ。

大気中の酸素濃度や地表の平均気温など、地球が生物を養うのに適した環境に整うまで、およそ1億年。



その膨大な時を地下で生き延びることが出来たのは、様々な環境変化に対する耐性を持ち、コールドスリープからも自力復活することができる『キノコの亜人』のみ。他の亜人は、隕石衝突の際の衝撃波や、何千万年に及ぶ超長期間の冷凍保存による細胞の壊死などで生き残ることはできなかった。



1億年以上の膨大な時を地下深くに埋まった『方舟』で過ごし、なんとか地上に出た『キノコの亜人』達は、変わり果てた地球を見て絶望したという。



そこから更に数千万年。その間地球は不安定な地殻変動が続いた。巨大火山の噴火やスーパープルームの噴出、巨大地震や巨大津波。何度も何度も滅亡と再興を繰り返した。

その間も『キノコの亜人』は地下でずっと耐えていたという。



約2億年の地球変動の結果として、そして文明衰退の結果として、この世界地図に残ったのは、現代で言うヨーロッパの位置にできた、ユーラシア大陸程度の大きさをしたドーナツ状の大陸のみ。


その名を『フレグラシア大陸』。


カトラ皇国のある位置は、元々はヨーロッパそのものであったが、約100万年前に噴火した超巨大火山、つまりはドーナツの穴部分の火山の噴火により形を変え、地中深くに埋まってしまったらしい。



ここ数万年は安定し、キノコの亜人は方舟の決められたマニュアルに従い人類や動植物の一部を復興。各種族が何百、何千世代にも及ぶ交配を繰り返し、以前の地球ほどではないがその種類は30%ほどに回復したという。


また、ここ数千年であるが、『新しい人類』は徐々に文明を興すようになり、今ではカトラ皇国、ミノア帝国を始め、カトマイ共和国、ラカタ王国、マザマ王国の5つの大国を築き上げるようにもなった。

水洗トイレの技術やガス灯など、新しい人類は以前の人類同様に遺憾なく知恵を発揮し、生活の質をを高めていったのである。


長い年月の中で廃れてしまったものもあった。

1つが高度科学技術である。

以前のような近代文明の知識やノウハウは完全に廃れてしまい、

今では方舟の維持管理や仕組みを理解できる人間は殆どいない。

文明開化の礎となる、石油や石炭、硝石やレアメタルなどの地下資源の情勢も激変してしまったため、未だ文明の近代化には至っていないというのが現状だ。


大型帆船を作る技術はあるにはあるが、地球を一周する程の船舶を作る技術はなく、未だ他の島や大陸の発見には至っていない。この世界の地図にフレグラシア大陸以外が記載されていない理由だ。

他の大陸を発見したとしても、この大陸以外で固有の進化を遂げた人類が生存する可能性は限りなく低いとされる。逆に未知の巨大生物がいたり、ドラゴンのような空想上の生物がいる可能性があるが、それも発見には至っていない。





……。



それが、この世界の歴史。

俺が生きていた世界から約2億年後の未来の姿。





……絶句。


予想はしていた。

太陽の位置関係。気候、自然法側。

一見すれば何一つ地球と変わらないこの世界は、もしかしたら未来の地球なのではないかと。当初に予想した結果は当たらずしも遠からずだったわけだ。


猿の惑星、なんて映画があった。

まさにそんな感じだ。


そうか……。




「どうする?少し休むか?」



いや、落ち込んでいる暇はない。


「いや、続けてくれ。……それで、お前としては、地球に衝突した“謎の”隕石の正体は……いや、その隕石は何の元となったと考えている?」


「…さすが、察しがいいな。その隕石は衝突の衝撃で完全に粉砕され、地球全土に散らばったが、それこそが体内から生じる『魔力』や空気中の『魔素』の元となったのだ。」


「そうだろうな。少なくとも俺のいた時代の地球では、そんな物理法則・科学技術を完全に無視した『魔法』なんてものはなかった。きっかけがあるとすれば隕石以外にないだろう。」


「なるほど…。なら、それからどうなったと思う?」


「どうなった、とは?」


「現在に至るまでの経緯だ…。何故、今では魔力を扱えるものが殆どいなくなってしまったか?」


ふむ、膨大な魔力や魔素が散らばったのならば、もっと魔法を扱える人間がいていいはずだ。だが隕石の衝突から約二億年の年月が経っている。二億年ともすれば、地球環境はかなり変わる。


「世界中に散った隕石の残骸は遥か地下の中、大気中に含まれる魔素も地中や海中に吸収されてしまった、とか。」


「その通りだ。さらに言えば、地球外から来た『魔力』は普通の人間にとっては本来『異物』だったのだよ。」




会談は続く。




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