表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第2章 安寧への道のり
50/108

第五十話:新たなる旅立ち




城門にて出迎えをしてくれたのは、カトラ皇国次期皇帝候補『ラキ』その人だった。



「早かったな。」


「いえ、滅相もありません。殿下こそ、わざわざ自ら赴かれるとは思いませんでした。」


「なに、気にするな。客人の出迎えも皇太子の仕事よ。」


ラキの誘導で客間へ導かれる。

客間、というか俺が倒れてからずっと寝ていた部屋で、もうなんか別荘のような感じだ。

会議まで待機。

その間に予想される質問への返答を考え、こちらの要望や将来展望を整理しておく。まぁとはいえ、大体言われる事の予想はつくんだけど。



時間となり、会議室へ。

会議室にはラキだけでなく、多くの国の要人が座っている。だが国王級はラキだけだろう。


話は今回の事件の一部始終から始まり、各国の派遣した医師や要人の数、その人件費や移動費など金銭が中心である。崩壊したシンクバトラ王国の親であるカトラ皇国及び、解雇し資産を没収したシンクバトラの大臣や要人のお金で金銭面は工面することとなり、その協議だったのだ。

各国の利益や貸し借りも意味合いに含まれる難しい問題だが、ラキはサラサラと問題を解決していく。カトラ皇国の代表として、決して折れることなく、妥協せず。時には牽制して、でも平和的に。落とし所を見極めながら。


さすが次期皇帝。

こういうことは俺には真似できない。



そして俺の問題だ。

一万人以上を死に至らせた全ての元凶。

まぁ死んでも死にきれないというか、何度死んでも拭えないほどの罪である。


だが『戦略兵器』と考えるならば話は別。

不死不滅の人間が、敵陣のど真ん中で毒を撒き散らすだけで数日後には死に絶える。これほど恐ろしい存在はいない。


俺の『所有権』はカトラ皇国にある。

当然だ。今回最も多くの出費をし、このシンクバトラ王国の事後処理もしなければならない。俺の保護責任者みたいなものだ。俺が迷惑をかけた分を、損害を与えた分を負担し、謝罪回りもする。だから俺がカトラ皇国に身を捧げるのは同然のことと思っていた。


だが、関係諸国は「待った」をかけたのだ。

賠償金はいらないから、『俺』が欲しいと。

特にイチャモンをつけてきたのは『ラカタ王国』。


実は今回の事態に、他国で一番先に駆けつけたのはカトラ皇国ではない。カトラ皇国やシンクバトラ王国と同盟関係にある『ラカタ王国』である。ラカタ王国の一団が、たまたまカトラ皇国への道中でこの騒動を耳にし、シンクバトラ王の呼び掛けにいち早く駆けつけたとされる。病気の特性や病原体の解析、前線指揮を率先して行い、唯一他国で犠牲を出したのもラカタ王国だ。


平行線を辿った末、俺がカトラ皇国国立学園を卒業するまでの間はカトラ皇国が俺を「所有」し、その後7年はラカタ王国が「所有」、その後カトラ皇国に「返却」されることで決着が着いた。

完全にモノ扱いであるが、仕出かしたことの規模が規模だけに何も言えない。


その後は各国の経済状況や治安情報の報告、今年の予想される天候、条約の確認など俺とは直接的に関係ない話が続いた。



1時間ほどして休憩。この後は昼食会だ。

昼はさすがに豪華絢爛。

フランス料理の様なコース料理となっていた。

俺は遠慮したが、気にすることはないとラキに半ば無理やり連れてこられた。俺はカトラ皇国側の席へ。

各国要人が俺のところにも挨拶に来る。

顔合わせの様なものだ。

俺としては今回の元凶である大量殺人犯の俺に対してそんな挨拶に来られても困る。恐縮過ぎる。

だが皆笑顔で俺に挨拶に来てくれる。

転生者であり不死である俺に対する興味か。

あわよくば力に肖りたいとしているのか。


楽しい一時、という訳ではなかった。

昨日のジルたちとの晩餐の方がよっぽど楽しい。

とても長く感じる一時だった。



昼食後は俺とカトラ皇国での協議。今後のことだ。

俺の今後の進路は一つ。

孤児院に入って生活し、カトラ皇国国立学園へ通って基礎知識や初歩的な武術を身につける。卒園後はラカタ王国へ送られ、8年後にまたカトラ皇国に戻ってくる予定となっている。


次にジグと子供達だが、カトラ皇国の外れに空き家があり、そこで平民の家族として暮らせることとなった。子供達もカトラ皇国国立学園に入園することができ、卒園まで全ての諸経費や出費はカトラ皇国持ちとなった。疑ってしまうほどの破格の待遇である。


まぁ理由としては、一つはカトラ皇国が他の国家よりいい条件を提示したこと、そして俺の持つ全ての知識の無償提供ということを前提としていて、かつ、カトラ皇国に所属する限り、俺には給料は出ないことを前提としている、ということだ。


三つ目はどういうことかと言うと、俺には一切娯楽に使えるお金はないということ。食費雑費医療費その他必要経費はカトラ皇国持ちとなり、例えば報償金などもカトラ皇国に没収される。

言うなれば生活保護受給者のようなもの。

身の安全は保証されるが自由はない。一生。

Barで飲み会も出来ないということだ。


メチャメチャガッカリしたが、仕方がない。

ジグたちのためだ。

いや、それ以前に俺はカトラ皇国に多大な迷惑をかけた。

それこそ一生ものの償いをして足りないほどの。

これもまた報い。それ以上望むのは贅沢というものだ。



提示された条件全てに同意のサインをする。

相変わらず読めないので全て読み上げて貰った。

書いてあることが本当に読み上げた内容と同じかどうか分からない。ジグを連れてくればよかったな……。

本当に字が読めないというのは不便だ。



俺に関する知識も公開しておく。

今のように髪がレモンイエローに光り輝いている状態は「覚醒」状態で、不死の能力が使えたり白い光が出せたりすること、眠る必要がなく食べなくても活動可能なこと、反動として覚醒状態が解けたとき、長い眠りについてしまうことなどだ。

俺が生成したとされる今回の感染症。毒の生成の仕方、毒性などについては「分からない」と答えた。その上でべリス婆さんの言っていた分析結果を話す。


俺のこれまでの経緯も改めて教える。

ラキは伝えられた情報と擦り合わせながら、答え合わせをするように淡々と聞いていた。


異世界の質問はカトラ皇国に入ってからとなった。

諜報される可能性もある。

またの機会に、少しずつ小出しに話すことにしよう。

早々とネタ切れ、では俺の存在価値も薄れる。

俺を所有することの意味と価値は俺自身で作らなければならない。そうしなければ、俺は無価値で無意味な存在として扱われてしまう。

焦らず、整理して。

小出しにして、一日でも長く。



『そう深く考えるな。異世界の知識がネタ切れになろうと、俺はお前を粗末に扱うことはしない。お前の存在を俺は認め、保護しよう。アマニタ一族に転生せし者よ。』



この感じは…テレパシーか!?

レイタと同じ??


ラキを見るとお茶目にウインクしてきた。


そしてまさか……



『その『まさか』だ。俺は『読心』の能力を持っていてな。俺の前では余計な詮索も、作戦も、意味を成さないぞ?』



……人が悪い王さまですこと。

しかし…

これ程の切り札を俺に明かして大丈夫なのだろうか。

ラキからの信頼の証ととって構わないだろうか?



『まぁそうとって貰って構わない。』



さいですか。

ところでその何とか一族って?



『追い追い教えてやろう。さて、会議に戻るぞ。』



突然の俺とラキの沈黙に場は少し騒然としていた。

この反応をみると、ラキの周囲にいる大臣も『テレパシー』を知らない連中が多いな。滅多には明かしていないということか。



会議はその後も細かい調整などを行った。

カトラ皇国への出発は明後日の朝。

勿論旅費はカトラ皇国持ち。


今日明日は自由に過ごしていいとのこと。

出立準備と言っても、持ってくものないしな。



会議は解散となった。


王宮を出る際にラキからノートとペンを渡された。

これは……これは俺がシンクバトラ王国に初めて入国した時、クソ監守に没収されたマル秘ノートじゃないか!!

正直メチャメチャ嬉しかった。

こいつに書き込むことは多くある。

今すぐにでも書き留めたい。



帰宅して全員に報告を行う。

子供達は「新しい家だって!」とウキウキしている。

この狭い部屋での生活も窮屈だもんな。


その日は晩餐会はせず、子供達を早く寝かせた。

ノートに出来事や俺の推測、能力、限界、今回の騒動の一部始終などを書き綴っていく。結局朝までかかった。眠らなくていいこの能力はこういう時に便利なのだ。



◇◇◇◇◇


次の日、俺は出掛けていた。

薬草探しの時に世話になった草原でひたすら花を摘む。


草原の隣には無数の石のオブジェが出来ていた。

言わずもがな、今回の騒動で死んだ人の墓だ。


積んだ花を、ひたすら墓に供えていく。

これくらいしか出来ないが、少しでも安らかに…。


結局日が沈んでも終わらず、深夜になってやっと1万の墓に花を供え終わった。



◇◇◇◇◇◇



そして、出発当日。


子供達はまるで遠足のノリだ。

レイタは我ここにあらず。想いを馳せている。

やめとけやめとけ。どうせお前に出逢いねーから。



ジグはこれからの生活にブツブツと考え事をしている。

そうそう、ジグにはまず約束を果たして貰わないとな。


「ジグ。約束、覚えているな。」


「ああ、覚えているとも。ジル、リリ!」


ジグは息子と娘を呼び、その場に土下座する。

「本当に……すまなかった。この1年、本当に辛い想いをさせたな……。こんな父ちゃんを許してくれ……。そして、そしてこれからも……どうか一緒に暮らしていこう…。」


「父ちゃん……俺も、俺も疑ってごめんよ……!」

「おとうさん…ごめんなさい…!」


親子抱き合って涙を流す。

あぁ、これで……本当に……。

よかった…な……。


グルンと目眩がする。

思わず膝をつく。


「ちょっと…ファロイド…あんた大丈夫?」


「あぁ、大丈夫。ちょっと昨日頑張りすぎたかな…。皆さん、お待たせしてすみません!行きましょう!」



馬車に乗り込み、馬車はゆっくりと走り出す。


馬車のコトコトとした振動は、とても気持ちよい。




この異世界に転生してまだ1ヶ月。


あぁ、本当に、色々なことがあったな……。


波乱万丈、濃密な1ヶ月だった…。


これからどうなるのだろう?


そんなことは分からない。



だが、今は…少し流れに身を任せてみよう……



ちょっと……疲れた……。




シンクバトラ王国を離れて1時間。


ファロイドは深い眠りに落ちていった。



その寝顔は。

周りに見せた事がない

安堵に満ちた顔をしていたという……。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ