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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第2章 安寧への道のり
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第四十九話:帰還




宿に戻ってきた。

雨は最後まで止まず全身ずぶ濡れだ。


ジルやリリ、セイラ、ピコ、レイタはよく寝ている。まぁこの時間だ。無理もないだろう。



ジグに判決内容と恩赦について話す。


そう。ジグ及び子供達全員は「平民の家族」としてカトラ皇国に認められるということだ。さらにはカトラ皇国の国立学園に子供達5人は諸経費など全額無償で入ることが出来る……今回の騒動における俺の活躍に対してと考えると少し疑ってしまうくらい過ぎた恩赦の様な気がするが。



「そうか…そうか!ありがとう…ファロイド……!俺はもはやどうこの大恩を返していいかも分からない……。」


ジグは涙を流して喜んでいる。

よかったよかった。


実質、俺の目的は達成されたと言っていい。

俺とジグが必死でお金を稼ぐ必要も無い。


だが今後の事を考えると、協力者が必要だ。

俺はもはや大手を振ってこの世界を歩けない。

唯一、心を許せる場所がいる……。

そして、生き残る術を磨かなければ……。


「いいや、恩返しとして、という訳ではないが、ちょっと頼まれて欲しい事がある。……あと、油断は禁物だ。ここまで過ぎた恩赦だと、何か疑ってしまう。」


「ああ、何でも頼ってくれ。俺に出来る事ならな。あと、あんまり何でもかんでも疑うものじゃないぞ……。好意を好意と受け止められなくなったら、それは目に見えない所で態度に現れる。部下の不信感を見抜けない王はいない。こちらの不信はやがて王からの不信に繋がるってもんだ。」



……なるほど。やはり年の功というか。

本当にジグは尊敬できる。学ぶところが多い。

コイツとの付き合いは絶ちたくない。

俺が異世界を生きるのに必要不可欠な存在だ。


「分かった。とりあえずこれからもそういう助言をお願いするよ。俺は世渡りは本当に下手なんだ……。」



ジグと再度友情を誓ったところでジルが起きる。


「ファロイド!!?? …え!?ファロイド!?え?夢でも見てるのか?俺!?ファロイド??何で生きてるの??」


いいリアクションだ。

とりあえず動揺するジルの耳たぶをつねってみる。



「いてててて!!!あれ?夢じゃない?」


「当たり前だ。言ったろ。不死だって。」


「マジで!?本当に!?本当だったの??凄ぇ!!……え、でも俺達が泣いた意味なんだったの!?」


「ちょっ…、とりあえず静かに!みんな起きる!」



ジルに静かにするように言うも時すでに遅し。

ジルの声で起きた面々は、



「あーっ!?ふぁろいどお兄ちゃん!?なんで!?」

「ファロイド!?本当にファロイドなの!?」

「もうダメだと思ってました……。」


全員がほぼ同じ顔。同じ反応。同じリアクション。

お前ら打ち合わせでもしてたのか。


レイタも思念を送ってくる。

『ウッソ!マジで!!?ホントに不死だったの!?だって火葬されて完全に骨になってたじゃん!脳ミソとか全部焼けちゃったじゃん!』


『それな。』


そう、この中では恐らくジグとレイタのみ理解していることであり、俺の想像を遥かに超えた能力であることが分かった魔法、『不死』の能力である。脳ミソが溶け落ちようが肉体が骨すら残らず灰になろうが復活してしまう能力。ただの不死ではなく、いよいよ『事象の拒絶』や『因果操作』なんていうビックリチート能力が頭を過る。



まぁ使いこなせはしてないんだけど。


リリを始めとして、部屋は安堵の涙で満たされる。

泣いていないのはレイタくらいだ。

コイツ……!


『ま、まぁ落ち着けって!涙もぶっ飛ぶくらい興奮しちゃうじゃねぇかよそんな能力の話されたら!な?』


はいはい…



子供達も揃ったところで改めて今後の事を話す。

ジルは両手を上げて大喜びし、リリは俺に抱きついて大泣きし、セイラとピコはちょっと複雑そうな表情をした後、笑顔になって。レイタは予想通り上の空……というか大体考えてることは分かる。『やっと俺の第二の人生も軌道に乗った…!異世界の学園ヒャッホォオオウ!!』とかそういう表情だ。



あんまり子供を夜更かしさせたくはないが、今日は特別、パーティーといこう。お疲れ様会だ!


フロントからジュースとお酒を持ってきてもらう。ここのホテルの面々は恩もあったし病院巡りの合間を縫ってウェイター達を治療したこともあってか、俺に協力的だった。無償でいいとのことなのでありがたくいただこう。

ホールも貸し出すとの申し出があったが、断った。

この狭い部屋でのパーティー感がいいのだ。

隣室への騒音被害?知らん。



その後は料理を食べたり。お酒を飲んだり。

ジルやリリにお酒はいけないと注意されたけど「俺中身は大人だし」とか言ってからかったり。セイラがちゃっかり酒を飲んで酔っぱらってストリップショーを始めたり、大にぎわいだった。おいこらレイタ!お前も飲むな!お前中身男子高校生だろうが!



楽しい夜は更けていく。





朝。

俺は一応、一睡もしてない。

覚醒中は眠くないのだ。

まだ髪は光り輝いていて、覚醒は続いていた。


昨日はかなり飲んだが、どうやら覚醒中はアルコール分解能力も桁違いの様だ。本来の俺の限界は大体テキーラのカクテルで5杯くらい、日本酒でいえば5合くらい?でヘナヘナになるのだが、昨日はワインを10杯くらい飲んだだろうか。全く酔わなかった。

朝になる頃には子供達は爆睡していた。

最後まで頑張ったジルも撃沈していて起きそうにない。


朝の散歩にでも行くか…と思って立ち上がったとき、後ろでムックリと誰か起き上がった。

セイラか。


「セイラおはよ…うげ。」


まぁ見事に世界地図を描いてますこと。

ズボンも床もグッショリとしていた。

セイラが涙目で見つめてくる。

プルプルと震えていて、今にも泣き出しそうである。

まぁ妹たちの手前だしな…。

いや、未成年なのに調子乗って酒飲んだお前が悪い。



……ハイハイ。なんとかしますよ。

幼女に泣かれたらたまらない。

本当に女の涙に弱いな…俺。

まぁ実験したいこともあったし、丁度いいか。



この手から発せられる白い光の能力。

『回復魔法』の類いではなく、べリス婆さんの言っているような『事象の拒絶』の様な術ならば、もしかして回復だけじゃなくて、それはとても有能な能力なのではないか、と。


ビショビショになった床に白い光を当てていく。

白い光は高熱を纏っているため、床は湯気を上げて急速に乾いていく。一見するとドライヤーのような用途だが、そうでないことは直ぐに分かった。おしっこの匂いから床のシミまで、キレイさっぱり消え失せているのだ。引き続きセイラの服に白い光を当てる。

やはり、乾いただけでなくシミや匂いもない。それどころか服はおろしたての様にシワすらない。

思った通りの結果になった。


セイラは目を輝かせ

「ありがとー!!ファロイド!!大好き!!」

と抱きついてくる。


「ハイハイ、お酒は気を付けること。」


頭を撫でてやる…、と、セイラは顔を真っ赤にし、何かを思い出したように急に部屋を出ていった。トイレだ。

乾いた端から漏らされてはたまらない。

間に合ってくれることを祈るのみである。



その後、色々あってのんびりとした朝とはいかなかったが、ここ最近では一番羽を伸ばせたと思う。なんか、楽しいドタバタだった。こんなことも、今は本当に幸せに感じる。生きてて良かったと思う。





昼前にカトラ皇国の兵士が迎えに来た。

急に現実に引き戻された感じだ。

これからの調整に入るとのこと。


ジグにも同席してもらいたいとの事で、子供達は宿で留守番してもらい、俺とジグ、護衛の兵士1人で王宮へ向かう事となった。


護衛一人で大丈夫か…?



だが理由は直ぐに分かった。


大通りはモーゼの海割りだ。

俺が歩みを進める度に大きく人混みが割れていく。

少なくとも俺の周囲に人は寄り付かない。

誰もが怯えた目で俺を見るようになった。


俺に蔑んだ目をした半月後には怯えた目をする。

本当に忙しい奴等だな。


そんな怯えるほどの存在じゃなかろうに。

そんなオーラないだろうに。


俺に危害を加えようとする者はいない。

中には俺に殺された者の家族もいるだろう。

それでも俺に石を投げたりはしなかった。



王宮前の広場には黒く焦げた場所があった。

俺の処刑場所跡だ。

キレイさっぱり片付けられていて、今や地面に残る焦げた跡だけが痕跡として残るのみとなっている。

感慨深いな。



目の前には王宮の城門。

シンクバトラ王国の旗はなく、カトラ皇国と思われる旗が飾ってある。改めて国が崩れたのだと、国王が死んだのだと思わされた。



その城門の前で俺を待っていたのは、他でもない、カトラ皇国次期皇帝、『ラキ』だった。



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