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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第2章 安寧への道のり
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第三十九話:起死




「がっ………!は……!」



杭を。

頭頂部から後頭部まで杭を打ち付けられたような、痛みを超えた『衝撃』が駆け抜ける。


回転し、急速に暗転する視界…。



何が起こったのか。猛烈な頭痛と目眩で姿勢を保つことすらできない。気持ち悪い…。



「ヴッ…オ…」



大量の血が口から出てきた。




ヤバい…。


鼻からもポタポタと血が滴っている。



視界はさらに暗転し…



身体に大きな衝撃が走る。


床に倒れたようだ。


痛みは感じない。


頭がボーッとする…。


……ああ、ダメだ…。


意識が…。




「…イド!……ロイド!!」


この…声は…?


あれ…俺なにやって…。




「しっかりしてくれよ!お前まで死んだら本当に終わりじゃねぇかよ!!リリを!ピコを助けてくれるんじゃねぇのかよ!!」



ああ…


リリ…ピコ…


そうだったな…


ごめんな…



額の上に2つの掌。

赤い光と白い光が見える。


セイラとレイタか…俺に魔法を…



あぁ、ダメだ…


暗く…なって……



ーーーーーーーー



『待ってるからね。』




ダ…レダ…?




『ずっと、待ってるから…。』




オマ…エハ…。




『私を、きっと殺しに来て?』




お前は…!





ーーーーーーーーー

目を開ける。


ジルとセイラとレイタが、今にも泣きそうな顔で覗き込んでいるのが見える。


ここは…?


そうか俺は…。


寝ている場合じゃないのか…。


俺が寝てたらリリとピコが死ぬ…。


それどころか、みんな…



身体を起こす。


辛うじて動ける。

いや、感覚はない。

手足を動かしている感覚も、地面に接している感覚もなにもない。


身体を起こすと再び暗転する視界。

激烈な頭痛で再び、床に顔を打ち付ける。

このまま、身体が沈み…




「ガアアアァアァァアア!!!!!」



勢いよく立ち上がった。

気付いたら俺は叫んでいた。


「ゲホッ…ゴホッ……ァァアアアア!!」

叫びと共に、喉の奥や肺に入っていた血液が吹き出し、大量の血を吐き出した。


反響した声が自身の耳をつんざく。


下を見るとジルとセイラとレイタが驚きのあまり尻餅をついて目を丸くしている。



ああ、やっと…

やっとハッキリしてきた…。

頭の中に高原の冷たいそよ風が流れたように、一気に思考がクリアになっていく。



(なび)く髪の毛が、みるみるレモンイエローに輝いていく。いや、髪の毛だけでなく、全身が淡く光を放っているような感じだ。



「ゲホッ…!まだ…だ…!ぐっ…!」



血痰を吐き出し、深呼吸して息を整える。


「…フゥ。皆、すまない。心配かけた。…続きをしよう。セイラ!お前はリリを診てくれ。無理はするな。レイタ!お前は白い光を使うな。俺たちの出す白い光は、かなり反動がヤバいみたいだ。そこで休んでいてくれ。ジルはリリの汗を拭くタオルを持ってきてくれ。よし、再開!」



頭痛は消え、思考はいつにない程クリアだ。


いける。


確証があった。



ピコの治療を再開した。



掌から出る光は、先程より(まばゆ)く輝き。

ピコの身体を包み込むくらい大きくなった。


皆目を見開き感嘆の声を上げる。


いいぞ…。これなら回復も早そうだ…!




『へぇ。凄いね。そこまで強化されるのか。』



ん?誰の声だ?

少なくともジルとセイラではない…。



『髪の毛が光ると魔力が増したりするのかな?血を吐いてたし、どうみても再起不能な重症だと思ったんだけど…。これはとても興味深いな…。』



直感で分かった。

これはレイタの『声なき(テレパシー)』か。



あぐらをかいて座っているレイタを見る。


『えっ?!聞こえてる?』



『聞こえているぞ。レイタ。』

口には出さず、ただ喋ったつもりになる。

目線を合わせて、頭の中で語りかける。

『こんな感じかな?』



『えっ!スゲエ!俺の声聞こえるの!?声っていうか、もしかして俺の思ってる事も聞こえてたりするの!?ヤバ!ねぇそれどういう原理なの!?どんな魔法なの?テレパシーってヤツだよね!?』


『なんだこいつ…』



寡黙に見えていたレイタの『中身』は、実はメッチャおしゃべりで、若干ウザイ奴だった。そして、その発言から恐らくは…


『お前、転生者か…』


『そうだよ!俺の名前は「霧島(きりしま) 嶺太(れいた)」。よろしくな』


『なるほど。日本人か…。』


驚いた。転生者が、しかも日本人の転生者が他にもいたとは。しかもこいつは名前を覚えている…。



『あ、やっぱりキミも転生者なんだ。』


『そうだ。名前に関する記憶は無いから、俺の本名は教えることが出来ないが、同じ日本人だ。』


『おおお!それ凄い偶然だね!!』



喜んでいる姿がレイタの顔に出ている。

端からみれば無言なのにニヤニヤしている様子は気持ちが悪い。しかもこの極限の状況下で不謹慎極まる。


『悪いがお喋りは後だ。俺は集中する。』


『はいはーい。』



再びピコに集中。

治療開始から十数分、それほど気力を込めようとしたわけではなく、誰かさんのお陰で注意も散漫だったけれど、ピコの全身を包むほど大きな白い光は、程無くして黄色く変色した肌や手足の浮腫みを治し、綺麗な身体に戻っていた。

呼吸も戻り、静かな寝息を立てている。


「セイラ!もう一回交代だ!」


覚醒していなかった分、リリの治療は不完全だった可能性がある。念を押して再びリリの治療にとりかかる。


一方、交代したセイラの掌から出る光は、ピコの身体の何処に当てても薄い緑色のままだった。おそらく、もう大丈夫ということなのだろう。

セイラには疲労の色が見える。

長い時間続けさせるのはマズイな。


「セイラ!リリは大丈夫そうだ。一度休め!」



はぁーっ!とセイラが大きく息を吐き出して床にヘナヘナとへたりこんでいく。なるほど、息の詰まる、とはこのことか。



「ファロイド!俺はどうしたらいい?」


ジルが問いかける。

んー、ジルに出来そうなことは…。

いや、最優先事項があった。

この病が感染性のものであるならば、リリと多くの時間を一緒に過ごしてきたジルも、いや、まだ症状は出ていなくとも全員が感染している可能性がある。

待機させた。



10分ほど、リリの治療をして、次はジルとセイラを床に寝かせて気を当てる。両手から子供1人包み込むような光が出せるようになった。ジルとセイラも10分ほど。


その時、偵察に行っていたジグが転がるように帰って来た。

息も絶え絶え。病を患った身体で、昼間は昏倒していたというのに、それでも全力で走り、俺に与えられた任務を遂行したのだろう。


ジグからの報告を聞き、皆言葉を無くす。



病院では、もはや治療は行われていなかった。


いや、回復魔法を使うこの国でたった数人しかいない医師たちは、知恵を絞り工夫を凝らし、ありとあらゆる手で治療したが回復は見込めなかったらしい。とりあえず体裁を保つべく治療はするが、それは延命であって、回復の兆しもなく数刻のうちに死亡してしまうそうだ。



「回復の兆しもなく、ねぇ…。」

ならば、これはどうだろうか。


「父ちゃん!これ見てみなよ!」

ジルに手を引かれたジグがリリを見…


「おお!おおおお!!!」

大粒の涙を流して喜んでいる。

どうやら、病院とは違ったようだ。



「感動の再会は微笑ましいが、あんまり保菌者が触らないでくれよ?ジグ、お前もすぐ横になってくれ。」


ジグを横にして治療を再開する。


手から出る白い光は、体格のいい大人の男1人を包み込む程に大きくできた。これで大人の治療もムラなくできるというものだ。

ジグは白い光に驚いている。



見たことない光だそうだ。



人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)

元介護職。医療知識に興味あり。

医療魔法(?)、謎の白い光が掌から出るようになる。

反動で脳の血管が切れて生死をさ迷った模様。


○ジル

シンクバトラ王国の路地裏で出会った孤児奴隷。

責任感と正義感が強い男の子。7、8歳くらい。

路地裏の子供奴隷(ストリートチルドレン)ではリーダー格。

妹達の介抱に奔走。


◯リリ

ジルの妹。5歳くらい。心優しき女の子。

疫病が進行し非常に危険な状態だったが、ファロイドにより一命を取り止め、今は静かに眠っている。


◯セイラ

赤毛ツインテールのキリッとした女の子。

年齢7、8歳くらい。身体を売り、生計を立てている。

ピコを救いたい一心で医療魔法が開花。


◯ピコ

赤毛ポニーテールのおっとりとした女の子。

セイラの双子の妹。年齢7、8歳くらい

姉同様、性的接待をしてお金を稼いでいる。

疫病にかかるが、なんとか一命を取り止める。


◯レイタ

セイラとピコの弟。砂色の髪の毛。年齢5、6歳。

生まれつき言葉が喋れない…が、テレパシーを使うことができ、テレパシーの中では凄くおしゃべりな性格だった。

実はファロイドと同じ日本人の転生者。

本名「霧島(きりしま) 嶺太(れいた)



◯ジグ

ファロイド専属の犯罪奴隷。

ジルとリリの父親。30台半ば。

心配性で義理堅い。真面目すぎるのがタマに傷。

元護衛騎士、元盗賊。

流行り病にかかるも気力で任務を遂行する。

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