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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第2章 安寧への道のり
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第三十五話:闇夜


こんなドロドロとしたダークファンタジーを読んでいただいて感謝感激です。先月は4名の勇者が1話から最新話までぶっ通しで読んでくれたようです。これから更にドロドロとしたダークな物語が続きますので、引き続き宜しくお願い致します。(オイ


※毎週水曜・土曜の21時更新です。

12/4(月):第五十話の予約投稿(1/20)を完了しました。




宿に着く。

まだジグの姿はない。



子供の身体で一日中歩きづくしだった。

足が重い。ベッドで横になり、枕で足を高く上げる。夕食まで少し休むとしよう…。



次に起きると部屋は夕日で真っ赤になっていた。

ジグが座って何やら書き物をしている。



「起きたか、ファロイド。ほらよ。今日の稼ぎ分だ。やはりはした金にしかならないな。」


そう言って巾着袋に入ったお金を投げる。


1000エアだ。

つまり二人合わせて5000エア。

やっと子供1人分の旅費を確保できた計算だ。

自分、ジグ、ジル、リリは仮にもカトラ皇国までの旅費は確保されていて、それを証明した親書もある。二人合わせて3日、この稼ぎを維持して他の子供3人分の旅費となる。そして旅費以外に色々と買わなければならない事を考えると…。


微妙だな。

凄く微妙だ。

稼ぎを維持できるとも限らないし…

副業を考えた方がいいかな…?



「いや、副業はやめた方がいいだろう」とジグ。

理由は仕事のパフォーマンスの低下だ。お互い出来高、体調を崩しては元も子もない。早めに仕事を終わらせて、早めに帰宅して身体を休める。充実した医療もなく、薬も出回っていないこの世界では、早寝早起きこそが健康の秘訣なのだ。

まぁ自分は体調を崩す心配はなさそうだが…。

この能力は使わないに越したことはない。


自分もジグの提案を受け入れることにした。



夕食は普通に食べる。

今はただの子供。普通にお腹が空く。

パンと豚肉のソテーを食べ、玉ねぎのスープを飲む。


今日もちゃっかり(まかな)い用のパンと肉をもらう。

何せジグ含めて養う人数は6人。

結構な量だ。


今日はパンと肉は別の木箱に入れた。

昨日ハンバーガーにしようとしてグチャグチャになったからな。これでも学習するのだ。


昨日と同じようにジグに木箱に入れた食材を窓から放り投げてもらう。なんか強盗をやっているようでシュールだ。不審人物扱いされそうだ。明日はウェイターに正面玄関から出ていいか聞いてみよう。



美しい夕焼けのあとは曇り空。月明かりは地上に届かず、辺りは薄暗い。

こう言うときに能力が発動し、ホタルみたいに光ってくれれば便利なのに…残念ながら今日は髪は金髪のまま、普通の美少女(♂)である。


今まで能力は暗がりや夜に発動することが多かったが、必ずしも夜に発動するわけではないらしい。発動条件は依然として不明のままだ。


昨日と同じくジグには待機してもらい、アジトに着く。

路地裏はいつも通り真っ暗だ。



アジトからは声はない。

足元に散乱する音の罠に反応したのはジルのみ。

他は皆眠っているようだ。

月明かりのない日はさっさと眠ってしまうらしい。


ジルに起こされて他の子供達も目を覚ます。


セイラは開口一番

「あれ?ファロイド。今日は光ってないのね。」



全く、人をホタルみたいに…



今日はしっかりとしたハンバーガーを提供できる。

そのためにパンと豚肉を分けて運んだのだ。


ジルが「ちょっと待ってろ」と、どこからか松明をかっぱらってきた。周りが明るくなり、暖かい光がアジトを包む。


子供たちの晩餐の開始である。



昨日の牛肉ほどではないが、豚肉バーガーも子供たちには大変人気だった。美味しそうに頬張る姿を見るだけでこっちが幸せになってくる。


食べたあとは今日の活動報告。

ジルは王都の反対まで行ってパンを盗んできたとのこと。

リリはレイタといつもお留守番。


セイラとピコは…



セイラとピコの職業を聞いて、少し悲しくなった。



セイラとピコの職業は『性的接待』

セイラもピコも、年齢にして若干7、8歳である。

そんな年齢の女の子が、立派な娼婦なのだ。

貴族御用達、憎むべき特殊な性癖を持つ変態共のオモチャ。

生理はまだとのことで子供ができる心配はないが、身体には大きな負担がかかる。二人とも目にはクマが出来、少し(やつ)れていた。

いつもは夜はそんな変態共が宿を取って抱き枕のようにして寝てくれるので貧しい思いをしなくて済むのだが、昨日も今日も何故かお客が来なくなってしまったとのことだった。




どす黒い感情が腹の中で渦巻く。

怒り、憎しみ。悔しさ。

獄炎の如く。マグマの如く。

燃えたぎる熱い何かが内蔵を焦がす。




金のため、性奴隷となった幼い姉妹。

やはり、救わねばならない。




セイラもピコも、最初はお金欲しさに、そしてレイタを養うために志願して性奴隷になったとのことだった。逃げ出せないのかとジルに責められたが、やめられなかったのだそう。


何故やめられないか。



知ってしまったからだ。

愛され方を。


知ってしまったからだ。

幸せを。



変態共に身体を(ゆる)せば、愛して貰える。

楽にお金が手に入る。美味しいものが食べれる。

実に簡単で、実に単純。


仮初めの幸せ。

だが、幸せは幸せ。蜜の味。



一方リスクなんて考えてない刹那的な生き方。

身体はどんどん傷ついていく。



どうせこの国に風営法は無い。

子供奴隷を守る法律なんてありはしない。


ならば力で叩き伏せるのみ。



皆殺しにしたいところだ。

セイラとピコを抱いた奴を全て。

今は力がない。

だが見ていろ。

罰する法はなくとも。

俺が鉄槌を下してやる……。



固く誓った。

そのために力を付けよう。



ジルも歯を食い縛り悔しそうな顔をしていた。

救えないのだ。ジルでは。



ならば、俺から言おう。



「実は、お前ら全員を引き取ろうと思う。」



セイラとピコも交えて、初めて俺の全てを話す。

俺が転生者であること。

俺が不死の能力を持つ者であること。

ジルとの出会い。

王宮での出来事。

ジルの父親、ジグの復讐劇。


セイラもピコも、黙って聞いている。

というか、呆気に取られている。

特に俺が転生者で、見た目は同じ幼女だが、中身は立派なオッサンであるという部分のあたりから、目を丸くして、というか話をちゃんと聞いているのだろうか?ポカーンとしている。


まぁいい、最後に俺の計画を話そう。


子供達全員を引き取り、俺とジグが働いて稼いだ金でカトラ皇国に移り、一緒に孤児院に入ることの計画だ。カトラ皇国なら身分の敷居はあまりないと言われている。今よりは安全で豊かな暮らしが出来ると踏んでの計画だ。



セイラが口を開く。


「いいよ…私たちはさ…」


「なぜ?」


「迷惑かかるもん…」


「迷惑など。俺はただ、自分の好きにしたいだけだ。押し付けがましい好意と思ってくれていい。善意の押し売りとでも言ってもいい。これは単なる俺のお節介だ。昨日も今日もメシを持ってきて来ることから分かるだろう?迷惑と思ってこんなことを続ける奴はいないよ。」


「でも…」


「でも、…何だ。ハッキリ言おう。お前らの仕事はいけない事だ。お前らのやっていることは間違っている。自分がいいオモチャだと思ったことはないか?それで、もし赤ちゃんが出来たとしよう。お前らは『ガラクタ』とみなされ捨てられる。お前らはそういう運命にあるんだ。お前らの代わりはいくらでもいる。違うか?」


もはやセイラやピコは何も返せない。

続けよう。


「今はここにいる5人しか救うことはできない。だが、いつか必ず、力を付けて、この町丸ごと救ってやる。奴隷制度をこの世から抹消し、子供にこんなヒモジイ思いはさせない!だから、せめて今は、俺と一緒に付いてきてくれ…。」



祈りに近い願いだった。

それでも、俺はこの5人なら救える。

救えるならば、救いたい。



俺にコイツらを救う義理はない。血の繋がりはない。昨日会ったばかりの顔見知りに過ぎない。セイラもピコも、今の生活が破滅に向かっていると知っていても、今の幸せを知っている。


それでも、黙っていられないのだ。

見てみぬフリをして美味しくご飯を食べられるほど、俺は図太く生きれない性分なんだ。



ピコは静かに泣いている。

セイラは困惑し

「考えとく…」


という言葉が精一杯だった。



そして俺はジルの方を見る。

「お前も協力してくれるな?」


「勿論だ!家族だからな!」


よし。いい返事だ。



さて。

俺はそろそろ帰るとしよう。

帰ろうとしたところ、レイタと目が合う。

セイラとピコの弟で、このグループでは最年少。

砂色の珍しい髪の毛で、不思議な雰囲気の子だ。


…そう言えばレイタと話したことなかったな。

レイタにも挨拶すると、無言で会釈される。



「レイタはね。声を出せないの……」





月明かりのない漆黒の闇夜。暗がりに慣れた目でも暗く感じるのは、心の闇でもあるだろう。


この世界は、闇だ。


転生前の世界と変わらない。

いや、元いた日本よりよっぽど。



この世界は終わっている。


俺が。


俺がなんとかしないと…。




帰りの道中、路上にゲロが目立つ。

ゲロ臭い臭いに俺もゲロを吐きそうになる。


この吐き気は食あたりとかではないんだろうな…



人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)

偽善者というよりエゴイスト。


○ジル

シンクバトラ王国の路地裏で出会った孤児奴隷。

芯のある男の子。7、8歳くらい。

主に盗みで生計を立てている。

責任感と正義感が強い。

路地裏の子供奴隷(ストリートチルドレン)ではリーダー格。


◯リリ

ジルの妹。5歳くらい。

オドオドしている小動物系女子。

心優しき女の子。


◯セイラ

赤毛ツインテールのキリッとした女の子。

年齢7、8歳くらい。

風俗店勤め。性的接待がお仕事。


◯ピコ

赤毛ポニーテールのおっとりとした女の子。

セイラの双子の妹。

年齢7、8歳くらい

風俗店勤め。性的接待がお仕事。


◯レイタ

セイラとピコの弟。

砂色の髪の毛を持つ。年齢5、6歳くらい。

生まれつき喋ることができない。


◯ジグ

ファロイド専属の犯罪奴隷。

ジルとリリの父親。30台半ば。

心配性で義理堅い。

真面目すぎるのがタマに傷。

元護衛騎士、元盗賊。

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