第二十八話:強気交渉
王宮は不気味に静まり返る。
王が、ダメ親が、誰もが。
ついさっき、自害し、鮮血を撒き散らして床に倒れ伏していた異質な子供をを見ている。
子供は立っていた。
髪は金髪から、鮮やかで、そして淡く輝く光を纏うレモンイエローに。赤色の瞳は怪しく輝き、薄暗い王宮で神秘的、いや、これは神秘の正反対、悪魔的で不気味な雰囲気をかもしている。
心なしか体系も少し変わったか…?
さっきまで血潮を吹き散らしていた胸の傷口は、煙を上げてみるみるうちに塞がっていく。
俺が気付いた時はそんな光景を目にし、あんぐりと口を開けた王が目の前にいた。誰もが呆気にとられて、どこか違う世界に行っている。
誰一人として、声を出すことが出来ない。
「さて…。」
沈黙を破るは俺の一言。
「これで処断は完了しました。この男にもはや罪はない。王よ。寛大な処置を誠に感謝致します。」
場の空気は凍りついたままだ。
俺にここまでさせたのだ。
釘を指さねばなるまい。
「この男の解放と、この男とその子供2人の身の保証を…していただけますよね?」
王はまだ上の空だが、問いかけに答える。
「あ…、ああ、好きにするといい。」
「好きにして良い、ですか。ありがたき幸せに存じます。ではお言葉に甘えさせて頂くとともに、これよりこの男と、及びその子供2名は、私の配下として身柄を預からせて頂きます。」
「な…」
俺がそう言い終えたところで、周りの誰もが遠い世界から戻ってきた。口々に異を唱える。
「静粛に!」
「国王様!幾らなんでもそれは…。」
「良いと言っておる。ワシが許そう…。…ファロイドよ。ソナタの覚悟、しかと受け取った。」
「良いものが見れましたか?」
調子に乗るなと周りが色々言っている気がするが、今の俺にはそんな雑音は耳に入らない。
それより交渉の続きだ。
「王よ。質問を。」
「良い。述べてみよ。」
「カトラ皇国への我々4人の身柄の移送は、いつぐらいになりそうですか?」
ちゃっかり親子3人を含めた人数を言ったことに、若干、王の眉がピくつく。交渉どころではない、メチャメチャ無礼な物言いであることは分かっている。
でも今は、何故か言えてしまう。
高揚しているのだろうか?
怖くないのだ。王が。
俺の運命を握る絶対者も。
今は怖くない。
「カトラ皇国までは急いでも往復に1週間はかかる…。1週間後、この王宮に参れ。」
「ご配慮、感謝致します。…それで、それまでの間、我々4人はどこでどうやって過ごせば宜しいですか?」
大臣、近衛兵、そして王。
全ての人間の眉がピくつく。
焼けつくような怒気が王宮を包む。
だが…、誰も、何も言えない。
発せられる怒気とは裏腹に。
誰もが確かに、いや、酷く怯えている。
たった今、死を克服した子供に。
衝撃的な現実に。
「…分かった。ソナタの意向を尊重しよう。」
心折れた王が、衣食住の確保を約束した。
そう、「衣」もである。
俺には、ここに滞在している間は異国の客人が来訪した時用の青地の服が渡されることになった。これで堂々と町を歩ける。
願ってもないことだった。
だが…、所詮は口約束。保証はない。
この場で勅令を書いてもらい、衣服を受けとる。
このダメ親に関しては、奴隷に格下げとなってしまった。
まぁ仕方がない。さすがに反逆した兵士がのうのうと復帰はできない。だが、俺の専属奴隷とすることはできた。
交渉は、こんなもんだな。
上々だろう。
「では、王よ。1週間後の同じく10時、再びここに参ります。本日の数々のご無礼、非礼及び、神聖な玉座を我が忌まわしき血で汚した事に関しまして、心よりお詫び申し上げます。では、我々はこれにて。」
王に一礼。
大臣達に一礼。
近衛兵に一礼。
そして振り返り、まだ呆気に取られ腰を抜かしているダメ親を見る。縄をほどき、身体を自由にさせる。
「そういう事で、お前にはこれから俺の奴隷として働いてもらう。立て。詳しいことは後で聞こう。…そう言えば名前を聞いていなかったな。名前は?」
「あ、あぁ、『ジグ』だ…。その…俺の罪を被ってくれた上に、俺たち家族の身の安全まで…その…何て礼を言ったらいいか…。」
「礼の言葉は不要だ。働きで返してもらう。俺を一度殺した罪も含めてな。これから宜しく頼むよ。『ジグ』。」
「あ、ああ…、そうだったな…。宜しく…。」
こいつ、俺を殺したことを忘れてやがったな?
人物紹介
○ファロイド
この物語の主人公。
だいたい年齢は6歳くらい。
金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)
いらないことを言ってはよく墓穴を掘る。
○アルマン国王
シンクバトラ王国の王様。
年齢50くらい。ガッチリふっくらした体格のオジサン。
包容力はどこへやら。
きっちり利害を考えてる強かな男。
◯裏切り者の兵士『ジグ』
30半ばくらいのオッサン。
妻の不倫、妻の死。親族の裏切りなど。
数多の悲劇をその身に受け、復讐の鬼となる。
ファロイドに命を救われる。




