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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第2章 安寧への道のり
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第二十四話:正直者




城門には10分前に着いた。

ギリギリだったな…。ちょっと走った

というかちょっと迷った。


門番は意外にも素直に開けてくれた。まぁいくら俺が白服を着ていても、俺が客人であるということは伝えられているのだろう。



検査を済まし、王の間に入る。

今日の玉間は以前とは正反対の雰囲気だ。

シャンデリアの明かりは消され、昼だというのに光はステンドグラスを通した僅かな日光と、小さな蝋燭の光のみ。

玉間にも王と近衛兵だけでなく、大臣職も勢揃いで中央のレッドカーペットを向かい合うように囲んでいる。


…かなり厳粛な光景だ。

ふっくらして優しそうに見えた王も、暗がりで頬杖をつきこちらを眺める様は、何度も王者の風格があり畏れ多い存在に感じる。


そして玉座にの手前に縄に縛られ近衛兵に槍を突きつけられている人間…そう、大臣が殺されたときに死体がなかった兵士が転がっていた。



「バカな!貴様…やはりが生きていたのか!俺が確かに殺したはずだ!どうやって!」



俺を見るや否や、その兵士は上体を起こして怒声を上げ…すぐ近衛兵に床に叩きつけられる。



まずいな…非常にまずい。

まさか、このタイミングで裏切りの兵士が捕まり、しかもこの場に連れてこられているとは。

覚悟を決めるか…。

だがまずは…



「遅れまして申し訳ありません、王。」


「おお、ファロイドか。待っておったぞ。」


「その男は…」


「ああ、昨日お主が去った後、こちらの事件を調査していた精鋭兵が大臣の遺品を売り捌いていた商人を特定してな。辿っていったらアジトがあり、そこでこの男を見つけたわけだ。かなり手を焼いたが、このまま全面戦争か、そこの裏切りの兵士一人差し出して手打ちかと協議した結果、あっさり差し出したというところだ。」


「なるほど。裏切り者の末路は呆気ないですね。」


「そういうところだな。さて、ファロイドよ。その男からも事情は聞いておる。お主の言ったことは殆ど正しい。だが、お主、ワシに隠し事をしておらんか…?」



早速、切り込んできたか…。


いや、恐らくあの裏切りの兵士は全て白状したのだろう。身体にはいくつもの拷問の痕が残り、ボロ雑巾のようになっている。そしてここまでの大罪を犯したのだ。恐らく奴隷にすらなれず、打ち首などの極刑が妥当だろう。兵士の目からは怒りと憎しみ、そして絶望の感情が感じられる。そういう点では、死に際の置き土産程度に白状したとしてもおかしくない。



隠すだけ無駄か…。



「申し訳ございません。前回の謁見で、私は王と初見にも関わらず、推測事や私見も含めた全ての見解を申し上げることは失礼に当たるのではないか、控えるべきであると勝手ながら判断致しました。王の意向に背いたご無礼を、どうかお許し下さい。」


「相変わらずソナタは…そう畏まらずともよい。例え前世で知識を得ていようとも、ソナタの姿は子供なのだ。見よ。周りの誰もが目を丸くしておるぞ。」



王は笑うが、他に誰一人として笑うものはいない。

俺のキビキビとした言動に目を丸くし、沈黙している。


まぁ、某アニメの、どこぞの春日部住まいのおねいさん大好き5歳児が王様に膝まづき、静かな口調で馬鹿丁寧で遠回しな物言いをした、そんなイメージだ。そりゃ誰もが呆気に取られる。



しかしやはり、俺の転生を知っていたか。



「無理を言わないで下さい。王よ。これは私の忠義の現れでもあるのです。しかし、我ながら困ったものだと思っています。転生したら齢幾ばくの男児であったなど。不便極まります。」


「まぁそう言うでない。20年若返ったと考えればよいのだ。ある意味若返りの能力なのだぞ?ワシも手に入れたいところだ。」



ワハハと王は朗らかに笑う。

そして…



「さて、お主はワシの庇護を受けるためには、その知識を明かしてもらう必要がある。お主の知り得たこと、全てとは言わん。教えて貰いたい。」



相変わらず、慈悲深い目だ。

この王は悪ではない。

だが、善というわけでもない。

今は目の奥に『飽くなき欲』が見える。



偽ることは出来ない。



「分かりました。では…」



それからどれくらい喋っただろうか。

前世の国際世界、便利な暮らし、高度な文明、高度な科学力、就いていた仕事、知識など、そこそこ色々な事を語ったと思う。


そしてこの世界に転生したこと、べリス婆さんのもとでお世話になったこと、シンクバトラ王国への道中ら賊の襲撃を受けたこと、致命傷を受けた痕があるが生きている理由は不明であること、襲撃を受けてからの旅路の苦難とサバイバルの知識、この世界に転生してから耐え難い差別を受けていること、大臣殺害の主犯、黒魔術師という悪しき噂が立っている事などである。そして、俺の能力の推察…。



誰もが呆気に取られたままだ。

目を丸くし、開いた口は塞がらない。

王すらも呆気に取られている。

だが俺か嘘を言っていないということは伝わったはずだ。

さて、どう出る…?



「そうか…」


そう、王も「そうか」としか言い様がない。

本人ですら訳が分からないのだから。


王はしばらく考えた後、再び口を開く。


「…お主の事情はよくわかった。概ねそこに転がっている裏切り者の口から出た情報と一致する。お主の自信ある言動からも嘘は言っていないようだ…。…それで、お主はこれからどうする?…どう生きる?何を望む?」



俺の望むものはたった2つ。

『安定した暮らし』

『差別からの解放』

言ってみる価値はあるか。



「王の判断にお任せ致します。しかしながら…今のこの白装飾のまま孤児奴隷として生き、この知識を腐らせるのは私としても本意ではありません。出来るならこの地で我が知識を活かしたいと考えていますが、この国では私の悪い噂が広まり、印象は決して良くありません…。私を庇護すれば王の名誉にも傷を付けましょう。願わくば、ここシンクバトラ王国と親交のあるカトラ皇国に私の身柄を移送し、カトラ皇国にて一時の安寧を手に入れ、この世界に関する知識を充分に身につけた後、汚名が晴れた頃合いを見計らって再びこの地に戻り、恩を返したいと考える次第であります。」



あまり恩返しという言葉は好きではない。

だが今、その恩返しという言葉は双方の利益に繋がる命綱となり得る。シンクバトラ王国側のメリットとデメリット回避の手段を提示ししつつ、自分の利益を考えなければ、このまま宙に放り出される可能性もある。あとはカトラ皇国で誰かの養子なりに入り、このクソ憎い白装飾とお別れ出来れば万事丸く収まる。


いや、要求が高すぎたかな…?



王は暫く考え込み…。


「そうか。お主はよく考えておるな。いや?口がうまいと言うべきかな?自分の利益だけを求めるのではなく、王である我が名誉も気にかけ、この国の将来的な利益も考えているとは。なるほど、全くよく考えておる。」



王の表情は悪くない。

後ひと押しか…?



「お主の提案、なるほど分かった。善処しよう。だがお主のその能力、その『不死』の能力は、何やら悪い予感がするな。それは明らかに常軌を逸脱している。あり得ない能力だ。我々としては警戒せざるを得ないな。」



ちっ…。

あの裏切り者め余計なことを…。

いや、クソ看守にも見られている。

いつかバレていた可能性が高い。

ならば…



「私も同感です。王よ。私もこの得体の知れない能力を警戒し、恐怖しています。無いと願いたいですが、何らかの形で暴走し、この国を巻き込みかねない事態も、現時点ではゼロとは言い切れません。そこで、この不可解な能力をカトラ皇国で調べたいと考えております。」



ふむ、と王は考える。

「よし、あい分かった。ソナタの意見にワシも同意しよう。カトラ皇国には声をかけておく。カトラには『女神』がいてな。処遇は悪いようにはしないだろう。」



よし、一段落。

言った甲斐はあったな。

やっと軌道に乗った感じだ。

息が抜け、肩の力が落ちる。



「さて、ファロイドよ。ソナタにもう1つしてもらうことがある。」



ん?

まだあるのか?


王は転がっている裏切りの兵士を指差し。



「こやつの処遇を任せたい。」




そうきたか…!

気が緩む間もなく、再び肩に力が入った。



人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)

礼儀作法出来てる自分に酔っちゃうマン


○アルマン国王

シンクバトラ王国の王様。

年齢50くらい。ガッチリふっくらした体格のオジサン。

寛大で包容力半端ない。

目に慈悲深さを感じる。

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