第二十一話:王との謁見
クソ看守に連れられて外へ出る。
いやー、シャバの空気は美味しい。
数日ぶりだけど。
思いっきり伸びをする。
看守は「チッ!それどころじゃねぇ!こちとら悪魔を見付けたってのに…!」など不満タラタラだ。
何はともあれ、これでやっと無罪の主張が出来るのだ。不当な拘束・不当な体罰を受けたことも勿論暴露してやる。ざまぁみろ。
…とは言え、せっかくの身体中のアザや傷は、目覚めた何らかの能力によってすっかり癒えてしまった。
いや、癒えたと言うより、これは…。
外へ出たときには、髪の色はレモンイエローから元の金髪に戻っていた。ちなみに今「やってみせろ」と言われても出来ない。極限状態で自動的に発動するタイプの能力だろうか?自分ではコントロール出来ない…というかやり方が分からない。バトル漫画のように簡単ではないのだ。
そしてこの能力、ホイホイと明かすのはやめた方がいいかもしれない。切り札として取っておかなくては…。
いや、その意味もあるが、恐らく看守の言う通り、これは忌むべき能力に当てはまる類いだ。これを理由に悪魔と称されてはたまったものではない。
看守の暴虐を安易に暴露できないな…。
そうこう考えながら歩いているうちに、王国の城門に到着する。看守とはここで別行動。俺はここまでの道中、街の人々のドン引きの目線とコソコソという話し声には全く目を向けずに全く違う他のことを考えることで見事に乗り切った。現実逃避は得意なのだ。というか、偏見に慣れた。
このボロ雑巾みたいな服は王宮に入ってすぐ小部屋に連れていかれ、ここで脱がされる。流石にこの格好で王と謁見したらヤバイと判断されたようだ。新品の真っ白な布の服に着替える。
結局、また白い服か。
これ自体が差別の対象、この服を着ている限り俺の言動は弱く、俺の行動には偏見が伴う。
客人用の貸衣裳とかにして欲しかったな…。
さて、そうこうしているうちに謁見だ。
結局、マナーは学べなかった。
とりあえず、日本の社交辞令で乗り切ろう。
大丈夫、営業スマイルには地震がある。
「注目せよ!これより王の間である!くれぐれも粗相の無いように!」
ハイハイ。頑張りますよっと。
〈ギギギ…バタン…!〉
大きな扉が開けられ、中に入る。
王宮は…まさしくRPGのゲームに出てきそうな、中世の城だ。
石造りの壁、吹き抜けの天井、豪華な装飾、玉座に向けて一直線に敷かれた赤いカーペット、大きなシャンデリア…。その全てが、まさしく厳粛な雰囲気を醸し出している。
正面にはこちらを見つめる国王。50代だろうか。若いな…。ガッチリしてふっくらしたオッサン体型だ。威圧感は感じられない。威張り散らさなそうなタイプの国王に感じる。それだけで少し緊張が解けた。
この世界の礼儀作法なんて知らないけれど。
とりあえず日本で染み付いた礼儀作法をするか。
扉を越え、一度立ち止まる。
中に入って正面の王に一礼。
周囲の臣下に一礼。
振り替えって門番に一礼。
この動きは完全にお焼香を上げる時の法事の知識であり、卒業式の挨拶とかそういう時みたいな感覚である。
そして壇上の王から離れること5m程の所で方膝を着き、片手はグーにして胸に、片手をグーにして床に突き、頭を下げる。ここらへんは異世界アニメによく出てくる「騎士」っぽい振る舞いに。中世の王宮のような雰囲気だったからつい。
「初めまして。ファロイドと申します。この度はお呼び頂きまして至極光栄に存じます。礼儀礼節を知らぬ故、我が非礼なる振る舞いには何卒、御慈悲の程を宜しくお願い申し上げます。」
噛まずに言えた!
これだけで舞い上がる気持ちだ。
ついさっきまで、とんでもない虐待を受け、死の縁をさ迷っていたのだ。今さら怖いものなど何もない…とは言いつつも、やはり目の前の人物は「王」。俺の命運を握る絶対者。額に冷や汗が滲み、手は汗でビショビショだ。
さて、この挨拶にどう来る…。
臣下達の間ではざわめきが起こっている。
「…素晴らしい!」
「…なんだあの子は…?」
お、好印象だったか…?
臣下は感心しつつしっかりドン引きである。
「おい、子供だぞ…。」
「子供があんな口調で話すなんて…。」
「男児だと聞いていたが…これは…。」
「何だあの髪の長さは…。」
うるせぇなほっといてくれ…。
「静粛に。」
王が立ち上がり、こちらへ近付いてくる。
自分の先1m程の所で立ち止まり、
「顔をあげてくれ、ファロイドよ。ワシはこのシンクバトラの王、アルマンである。此度の旅路、大儀であったな。そして道中の苦難、誠に残念な気持ちである。あの男はワシにとっても欠かせない男だった…。話を聞かせてくれないか?」
「はい。それでは…」
とりあえず道中でキャンプ中に賊の襲撃を受けたこと、俺は死んだフリをして誤魔化せたが大臣と兵士2名は亡くなり、装飾品や馬などを盗られたこと、兵士1名は死体がなく行方不明であるということ、大臣からおおまかに経路を聞いていたお陰で王国付近まで辿り着けたが、そこで保護されたことなどを説明する。
6割がウソ、4割が事実。
俺はもう厄介事を抱えたくはない。
自分の転生や知識、そして恐らく忌むべき能力であろうこの身体の事は伏せておく。いくら質問者が王でも、聞かれてないから答える必要はない。
滑りそうになる口を必死で抑え、余計な事を言わないように慎重にゆっくりと簡潔に説明することにだけ専念した。
そして王は俺の一言一言に深く頷きつつ、大臣の最期を深く悲しんでいる、そんな様子だ。
それにしても、このアルマン王は…。
何という慈悲深い目だ。
もともと死んだ人務大臣から良君であると話は聞いていた。しかし看守がアレだから、良君というのは身内に対してのみで、俺のようなならず者に対しては「良い!我に従え!雑種!」とかそういう王様が出てくるものだと…。
「そうか、大変であったな。まだまだ君に聞きたいことは多くある、が、君も長旅、そして勾留の疲れも残っているだろう。私は君を客人としてもてなそうと思う。今日は宿を取らせる、ゆっくり休まれよ。そして明日、また会おう。」
…寛大すぎる。確かに良君だ。
こんな白い服を着た孤児奴隷の分際に宿とは。正直今夜は路地裏の雑魚寝を覚悟していただけに、本当にありがたい。
でも…大丈夫なのだろうか?
この服的にヤバイんじゃないのか?
まぁ、全て王に任せてここは従おう。
「ハッ!有りがたき幸せに存じます!」
「では翌10時に、この間に来られよ。」
「畏まりました!翌10時に!」
「では私はこれにて失礼致します!」
「そうそう畏まらずともよい。君は少々固すぎる。子供らしくないぞ。子供はもっと、無垢であるべきだ…。」
良君過ぎる。
「はい、ありがとうございます…。では。」
門番の指示に従い玉座を後にする。
ホッと一息。
さて、ようやっと軌道に乗れたかな…?
人物紹介
○ファロイド
この物語の主人公。
だいたい年齢は6歳くらい。
金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)
礼儀作法出来てる自分に酔っちゃうマン
○アルマン国王
シンクバトラ王国の王様。
年齢50くらい。ガッチリふっくらした体格のオジサン。
寛大で包容力半端ない。
目に慈悲深さを感じる。




