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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第1章 異世界生活は分からない事ばかり
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第十九話:冒険の幕切れ




3日目。

暑草と草を敷いていたというのに、やはり岩場の河川敷で寝ただけあって、全身が痛い。足つぼマッサージを全身で受けた気分だ。一方草の布団は悪くはなかった。焚き火の遠赤外線をうまく吸収し、こちらの放射熱を拡散させなかった。



さて、今日も頑張るか!




今日は山越えがある。

とは言え、感覚的に標高差は500m程度。

里山程度の山なんだけれど。



山はキノコ狩りやキャンプとかで慣れたものだ。

しかしここは異世界。

どんな動物が出てくるかわからない。

熊なんか出てきた日にはその場で冒険が…

…というか人生が終了する。


方位磁針も地図もコンパスもない。

野性動物から逃げてルートを外れても詰みなのだ。



山の麓にさしかかる。

ここで川沿いの道は終了。川はこの先深い谷間の渓谷を走っており、およそ人は通っていそうにない。やはり辺り一面は家一件小屋一つないが、山奥へ向けて一本、狭いが馬車が通れるだけの小道がある。馬の蹄の跡や人の足跡が残っている。ルートはこれで間違いないだろう。確定といってもいいかもしれない。そしてよく、ほぼノーヒントでここまで辿り着けたものだ。

我ながら感心する。



山道をゆっくり登っていく。

まだ日は登ったばかり。

河原のように魚を釣って補給ということはできない。

省エネで行かなければハンガーノックを起こしてしまう。

山道のハンガーノックは怖いのだ。

道中の万が一のときの体力も温存しなければ。


この時期は本当に冬眠明けの野性動物がヤバい。

熊だけじゃなくて蛇なんかもかなり危険だ。


周囲の警戒を怠らないようにしなければ……。

気を付けていこう!






…と、意気込んで歩いていたのだけど。



河原のキャンプから半日ほど山道を歩いていた時のことだ。突如馬に乗った5、6人の男たちに囲まれた。



疲労で注意散漫になっていたのだろうか。周囲を警戒してたつもりだったんだが、完全に気付かなかった。潜んでいたのかも知れない。ピィーという笛の音がが鳴ったかと思ったら、瞬く間に男たちが集まってきて囲まれてしまった。



ここで最悪な状況は、この男たちが賊の追手という事態。

今までの俺の頑張りは全て無駄になる。

次に最悪な事態は、他の賊だった場合。


だがそうではなさそうだ。

集まった男たちは馬を止め、馬を降りる。

リーダーらしき人間が高らかに名乗りを上げる。



「注目せよ!我々はシンクバトラ王国第3師団である!訳あってとある事件の調査を行っている!小僧!お前に問う!」



お、憲兵だったか。

これなら話も早い。

向こうから出迎えに来てくれたか!



「スルツェイ大臣一行を殺したのはお前か!?」



おいいい!!

何でそうなる!

そこはあれでしょ?!よくぞ生きて戻ったとか、もっと労いの言葉があってもいいところでしょ!!?

何で俺が容疑者!?何で俺が疑われてるの!?

おかしいでしょ!!



「いえ!そんなことは…!」


「構わん!そいつを捉えろ!牢に入れる!」



問答無用とはこのこと。

ここは抵抗しないのが良策…ぐはぁ!

両腕を後ろに組まれ地面に叩きつけられる。

いやいや、抵抗しない犯人にそれはあかんでしょ!


あれよあれよと言う間に縛り上げられ、目隠しをされ、口も喋れないように縛られ、荷物のように乱暴に馬に積まれる。やめて!落ちる!もっと上手く積んで!



あぁ…波乱は続く、か…。


暫くすると馬の振動は鳴り止み、今度は歩かされる。

階段を下り、部屋の扉が開く音、鉄柵がガラガラと開く音が聞こえる。ここで目隠しが外される。


ここは地下牢か…。

洞窟のようにひんやりした空気。

灯りは僅かしかなく真っ暗だ。殆ど何も見えない。



「オラ!さっさと入れ!」

〈ゲシッ!〉



後ろ手を縛られたまま尻を蹴られ固い石の床に土手っ腹を強打する。悶絶。数分は悶えた。ぶっちゃけ賊に捕まった方がまだマシだったかもしれない。というか王国を目指さず、多少距離も伸びるし山登りはするだろうが、引き返してフジの村に戻るべきだったのだ。何で俺は王国を目指したんだ?こうなる可能性も予想できなかったわけじゃないのに…。



今さら何を後悔しても襲い。

ノートもペンも没収され、今はただ屠殺を待つ家畜のような気分である。有無を言わさず俺を捕縛した兵士の行動からするに、俺には弁明の余地もなく完全に悪者に仕立て上げられてしまうのではないか。



この白い服を着ている人間に人権なんて存在しないのは、ここ数日の実体験からよーく分かった。冤罪だろうが無実だろうがお構いなしだ。大臣を殺したと思われる低俗な輩を捉え処刑した、とだけ事実を残せば面倒事なく全て丸く収まるのである。





はぁ…。

頑張って生きようとしただけに、残念な人生だったな…。結局俺はべリス婆さんやエメティカさん、アルテシアさんに恩を返せずここで死ぬのか…。




恩…?


何だ…?



「恩を返す」という言葉が。

ただそれだけの言葉が深く胸に刺さる。



そもそも恩って、どうやって返すんだろう…。




人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪と、赤い瞳を持つ美少女(♂)

怒鳴られるのは場数を踏んでいるが慣れない。


○シンクバトラ王国第三師団

行方不明になったスルツェイ大臣を捜索する。

6人組。騎士。


○ソグ看守長

ファロイドを投獄し尋問にかける。

酒浸りのアル中。不良。

ついうっかり手を滑らせて囚人を殺したことが何度か。

33歳。

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