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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第1章 異世界生活は分からない事ばかり
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第十一話:散歩の続きと品定め




病院に戻るとべリス婆さんが玄関の掃き掃除をしていた。


「おや、戻ったかい。机に朝御飯おいてあるよ!」


「ありがとうございます。あと、もしよかったら掃き掃除くらいお手伝いさせてください。」



いくら子供とはいえ居候。3食昼寝つきで自由気ままにフラついていては居たたまれない。

朝御飯の卵サンドイッチをサクッと食べた後、べリス婆さんから床や手すりの掃き掃除・拭き掃除の仕事を受け継いだ。お掃除は得意なのだ。


そうこうしているうちに開院時間になった。既に病院の扉の前にはチラホラと人が集まっている。

開院時間になるといても邪魔になるだけなので、とりあえず撤収し、散歩の続きに行くことにした。



青果屋は朝とは違い空いていた。売棚に並んでいるものは…見た目は殆ど日本と同じだ。ただ種類は比べ物にならないくらい少ない。

葉モノ、イモ類、根菜類…やはり文字は読めないのでそれが何でいくらの値段かは分からない。

香辛料は売っていないようだ。


魚屋に並んでいる魚は…目の前が湖なので川魚ばかりだった。鮎のような魚に加え、バス類だろうか。大型の魚も何匹か置いてある。

塩漬けにされているとはいえ、生臭い。

干物として売られているものもある。

保存用だろう。



次は生活品だ。

朝は閉まっていた服屋に入る。

恐らくここの村、あるいはこの地域の綺麗な民俗服のベースとなっているであろう、柔道着のように厚手に編み込まれた布の服がおいてあり、模様を作るための十二色の絹糸が様々な太さで並んでいる。

このくらいの厚みがあれば、肌寒くないだろうに…

この服を買うのは何年先になるのやら


靴屋はワラジを中心として売っていた。

皮の靴、それから木の靴もある。

ゴム長靴などはないようだ。


それぞれ、書いてある品名は分からないが、数字をメモする。こんなクソ目立つ白い甚兵衛は早いところ脱いでしまいたい。初ボーナスは服を買うと心に決めた。



さて、宝石店と思われる店だが…。

うん、知ってた。俺が入っていい店じゃなかった。酷い目線の嵐で身体に無数の穴が空きそうだ。今までも差別的な目をちょくちょくされていたが、これは酷いな。まぁ真っ白の甚兵衛着てる時点で宝石を買えるような人間でないと分かってしまうわけで。前にいた世界でも薄給だったからデパートとかの宝石コーナーは足早に通過していたが…


発見もあった。

宝石店に香辛料が置いてある。

胡椒、ハーブ、ローリエ、ローズマリー、バジルなどの香辛料、あとは蜂蜜やオリーブオイルのような液体が売られていた。紅茶の茶葉や珈琲豆もある。

食材店ではなく、宝石店のような貴重品を揃える場所に置いてあるのだ。恐らくこの村では貴重なのだろう。


目線は痛いが、この店が一番の収穫となった。



店を出ると、人だかりができている。

人々の目当ては、勿論俺だ。



こいつは何だと隅々まで観察するような目。

隅々まで舐め回すかのようなネットリとした目線。

そう。その目だ。

家畜の品定めをしているようなその目だ。

その目がもたらす結果を、俺は知っている。


見覚えがあるんだ。

自分がミスを犯した時、やらかした時、うっかり軽はずみな発言をしたとき、決まって周りの人間はそういう目で俺を見る。

その目は俺を不当に低く格付けする目だ。




ペコリと作り笑顔で言葉なく会釈し、その場を後にした。




何分くらい経っただろうか。

俺は湖畔端を歩いていた。

歩きたい気分だった。


広い空を、雲は優雅に歩いている。

そよ風が気持ちいい。日差しも心地いい。


だが先程の出来事のせいで俺の心にはそよ風は吹かない。

日差しは心には届かない。

全くエネルギーが沸いてこない。


ああ、やはり人間は嫌いだ。

前の世界も、この世界も。

本当に、人間は『格付け』が好きだな。

如何に相手を自分より下に位置付けるか。

高みから見下して、蔑むか。

そういうことが大好きな動物が『人間』なのだと。



湖畔端の土手に座り、仰向けに寝転がる。

真っ白い服が汚れるという事を心配する頭はここにはない。

我ここにあらず。



寝転がって辺りを見回すと…何だ?

小さい子供らしき影が木の裏に隠れたな。

子供に尾行されていた事にすら気付かないとは。

今は子供の相手をする元気もない…いや、俺も子供か。



「ねぇ。君たち。僕の後を尾行(つけ)ると、お父さんに怒られるよ。」



木の幹に向かいそう言い放つ。

やべっ!バレた!、と、ざわめきが聞こえる。

暫く様子を見ていると、木の裏から頭が生えてきた。

観念したのか、子供達が出てくる。

男の子3人、女の子2人。

皆、小学校低学年くらいの年齢に見える。

今の俺と同じような体格をしている。


皆刺繍入りの衣服を身に付けている。

男の子一人、この村では珍しい金髪の子が前に出る。



「おい!お前!この村の新入りなんだってな!俺がこの町の事を教えてやるよ!この街で誰が一番強いのかをな!」



さっそくお決まりの台詞から始まるこの流れも、俺はよく知っている。とうの昔に経験済みだ。それに関しては受けることに関してはプロの領域にあると自負している。



「子供の格付けチェック」こと「イジメ」だ。

人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公『鳥羽(とば) 幽仙(ゆうせん)』が名前に関する記憶を失い、新たに与えられた名前。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪、赤い瞳を持つ美少女(♂)。

家事掃除全般をこなす。


○ヴェレリウス

通称べリス。白人の容姿の女性。

ファロイドが入院している病院の院長。

白髪の老婆。意外といい人。

朝早くから病院の掃除をするのが日課。

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