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煉獄世界の死神  作者: 敗北の貴公子
第1章 異世界生活は分からない事ばかり
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第十話:朝の散歩




今日も爽やかな朝を迎える。

目覚まし時計はないが日の出と共に起床。

昨日夜遅くまで活動していても日の出と共に起床。

実に健康的である。


朝起きたら…


…風呂に入りたい。

昨日風呂について聞いておくべきだった。


俺は朝起きたら必ず風呂に入る。

寝癖を直し、眠気を覚まし、活動モードに入るため、夏は汗ばんだ身体を流すため、冬は寝ている間に冷えた身体を暖めるため。シャワー浴で十分だ。ガス代と水道代は高くつくが、俺にとっては必要不可欠なのだ。


しかし、この病院に風呂はない。

色々探索したが、そもそもトイレに水道がない時点でお察し。手を洗う洗面所にも水道菅はない。ここにはモーターで水道を汲み上げたり水圧をかけ水道管で供給するといった高度な上水技術なんてものはないのだ。


でも村の人々は垢まみれ土まみれという事はなく、顔も髪も小綺麗にしていた。ならばせめて水浴びをするくらいの文化はあると思うのだが…



とりあえずベッドから降り、トイレへ向かう前に流す水を汲みにいく。井戸の場所は昨日べリス婆さんから教わった。井戸はレバーを引けば蛇口から水が出てくる仕組みだ。これは現代でも田舎の蕎麦屋とかにに置いてあり、俺も使ったことがある。

新緑の季節だが井戸水は冷たい。

そして便座もやはり冷たい。

冬場はきっと辛いな…。

それもそうだが、やはり膝まで伸びるこの長い髪が邪魔でしかたがない。さっさと刈り上げてしまいたい。



トイレで用を足し、汲んできた水で流す。

手を洗うのも汲んできた水だ。

本当に手間だが仕方がない。慣れねば。

ついでに顔も洗ってしまおう。



部屋に戻った俺は改めて姿見に映る自分を眺める。

いやホント、見事に美少女の顔だ。

体格にしても、男っぽさはまるでなく…

ふっくらしていて、どこか弱々しいというか…

腰まで伸びる金髪も相まって、外見は完全に女の子のそれだ。

普通にチンチンついてるんだけどな…


裸になり、鏡の前でポーズを取ってみる。

うん、完全に犯罪臭がする。というかこれは恥ずかしい。20秒と耐えられず退散した。誰かに見られたら俺の第二の人生がやばい。


服を着て、寝起きボサボサの長髪を昨日貰った櫛で整えてみる。野球少年で大人になってからも男子の嗜みということで短髪カリアゲだった俺にはとても貴重な行為であり、難しい行為でもある。


何となく、上から下へ。上から下へ…。

寝癖で絡まってるととても痛い。

上から下へ…。何度上から下へ櫛を通しても毛先の細かい毛が揃わないのが気になる…。きっとこれは終わらない戦いだ。諦めよう。


ベッドメイクを済ませ、外へ出る。

風が気持ちいい。若干寒い。

今さっき解かした髪が風で速攻ボサボサになった。

俺の手間を返せ!

……気にしていたらきりがないな。散歩に行こう。


階段で出来た通りを降りていく。

今日はジロジロと見る目線…がないことはないが、昨日よりマシだ。もう俺は堂々と歩いていいわけだし、自己紹介は昨日済ませたし、ここは先制攻撃といこう。



「おはようございます〜。(ぺこり)」


「おはようファロイドちゃん。ん?ファロイドさんの方がいいのかしら?ごめんなさいね。」


「大丈夫です。どっちでも気にしないですよ。」



返事が帰ってくる。そうそう、こういう感じだ。

些細だがとても幸せを感じる。

前の世界では道行く人に「おはよう」なんて声をかけたものならば即、県警の「事案」リストに載る。小学生からの挨拶を返した事案があって、一時期ネットで話題になってたっけ。そう考えると恐ろしい世の中だ。田舎はそんなことなかったんだけどなぁ。



家々の煙突からはもくもくと煙が上がっている。朝御飯を作っているのだろうか。いい臭いがする。お腹減ったなぁ。


湖に近くなるにつれ、人の密度が高くなる。

肉屋、青果屋、魚屋などの市場は湖畔にあり、朝市で賑わっているようだ。人混みは採れたての魚を売る魚屋と、朝露で潤い十分の野菜を売る青果屋に集中している。人混みをくぐり抜け、朝はあまり混んでいない肉屋へ。

1kgほどの大きな肉に、紙がつけられ、文字が書いてある。

人の会話は聞き取れる。自分の言葉も相手に伝わる。

しかし文字は読めない。その意味が分からない。

実に不便だ。そして不思議だ。

値段と思われる数字は分かるが、価値が分からない。

モノの相場が分かればな…

これも帰って調べる必要がありそうだ。


文字は読めないが、会話は伝わる。

肉は何か聞いてみた。羊肉(マトン)だそうだ。

その隣は聞かずとも分かる。鶏肉だ。

勿論買えない。お金を持ってない。

俺は肉屋を後にした。

魚屋と青果屋は午後来よう。



その後も街をうろちょろした。

装飾具店、服屋、靴屋、家具屋、陶器屋、宝石店…

どの店も洒落ている。閉まってるけど。

図書館らしい建物はないか…


病院へ戻るか。

人物紹介

○ファロイド

この物語の主人公『鳥羽(とば) 幽仙(ゆうせん)』が名前に関する記憶を失い、新たに与えられた名前。

だいたい年齢は6歳くらい。

金色の長い髪、赤い瞳を持つ美少女(♂)。

お風呂は朝晩2回入るほど好き。


○村の女性

ファロイドに挨拶を返す。実年齢27歳に内心困惑。

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