第3話 超絶コミュ障は、頭の中だけが騒がしい2
オレがいるテナントビルの近くから魔物が現れる気配がした。
ゆっくり考える時間をくれよ!
愚痴りたい気持ちを必死に抑えつける、冷静になれてると思いたい。
魔物が生まれる時って魔力が発生するのかな。
もし魔物が出てくる瞬間がわかるならだいぶ助かるんじゃないか。
いつのまにか現れていたなら、人は逃げる暇もなくすぐ襲われていただろうし。
ビルの窓から外を覗いてみる、すでに辺りは暗闇に包まれていた。
街灯は灯っているし部屋の電気がもともとついているのもチラホラ見かけるので何も見えないということはない。
魔物より先に自分が魔女に見つかる可能性がゼロではないので、少しビクビクしながら様子見を続けるがどちらも現れる気配がなかった。
魔力を使わないように行動したほうがよさそうかな。
些細なことでも手探りで進めないといけない。
下手な失敗をするとすぐ自分の命が狙われる今の状況は正直しんどい。
と、少し離れた建物の陰からどうやら魔物が現れたようだが、カマキリ?
魔物って動物っぽい姿が多いのか、気持ち悪い見た目じゃないのは嬉しいよな。
こんなことで喜んでも仕方ないけど、もし触手みたいな敵だったらイヤすぎだぞ。
ぎゃー!! 自分が触手に襲われる想像しちゃった、鳥肌が!
両腕をさすりながらカマキリの様子を伺う、大きさは人間サイズだ。
大怪獣みたいな大きさもあったりするのかな?
魔女vs大怪獣、B級映画の完成だ。
しかしこの街ほんとうに人の気配がないな、魔物に襲われるのが日常的で避難も慣れてるってことか。
……そんな慣れはイヤだな。
でもなんで誰もいないところに魔物は現れた?
人が多いところを狙えばいいだろうに。
くだらないことを考えているとさっきの赤毛の魔女がカマキリの前まで駆けつけてきた。
まぁそうなるよね。
ん? 少し疲れてる感じが見えるな。
連戦疲れ?
魔物は連続で現れたりするのが珍しいのかもしれない。
大丈夫かな、助けてあげるべき?
魔物のオレが? 一緒に倒されるのがオチでは??
うんうんと唸ってるオレをよそに、鋭い金属音が空気を切り裂いたことで戦闘がはじまったことを理解した。
危険は承知だ、それでも外に出よう。
オレの出る幕はないと信じたいけど、あの人に何かあったときは出来ることがあるかもしれない。
魔力を使わないようにそーっとビルの扉を開けて外へでる。
魔女が戦っている近くの建物から様子を見ることにした。
魔女もカマキリも持ってる武器が近接型だから素早い斬撃が繰り広げられてる。
うーん、大剣なのに両手鎌のカマキリ相手に手数で負けない魔女すごいな。
武器の扱い方を完璧に理解してる戦い方だ、まぁオレ武器持ったことないからわかんないけど。
ぱっと見は互角だったが、本能だけで戦ってるカマキリより技術で立ち回ってる魔女が勝ちそうな気がする。
オレを噛んだにっくき亀を真っ二つにしてくれたあの大剣。
ロケットみたいに噴射して叩き切る魔法は使わないのかな、もう使えない??
さらに気になったのは、魔女の魔力。
あの人とうまく馴染んでないように見えるんだよね、右利きなのに左利きのはさみを使わされてるようなチグハグさを感じる。
ほんの些細な違和感はあったけど、魔女がカマキリの両腕を横凪ぎで弾き飛ばした勢いで仕留めようしたから問題なさそう……だが。
―――なっ!?
次の瞬間、オレは転移で魔女の真横まで飛んでいた。
何故かもう一体のカマキリが彼女の真後ろに現れたからだ。
亀の時も似た流れだっただろ!
魔物は倒される直前に自分の能力を発動させることが多いのか!?
分析してる場合か、とにかく動け!
このままだと彼女が後ろから切られてしまう!
転移で魔女ごと飛べるか? 無理!
なら突き飛ばす!
次の瞬間、背後からの刃がオレを裂いた。
痛い! でも浅い。
すぐに再転移、カマキリと距離を取る。
この間はコンマ1秒もなかったはず、オレすごい!
「っ!? あなたもやっぱりまだ近くにいたのね」
よろけていた魔女がオレを見る。
!?
おい! 突き飛ばされたことは気にしないのかよ!
そうなるとやっぱり話しかけてくるよな。
カマキリとの戦いで殺気だってるところに、魔物のオレが現れたら増援かもしれないとめっちゃ警戒するだろう。
??
ちょっと待て。
二体になったカマキリがなぜかこっちを睨みつけてくるんだが?
なんでオレだけ? 魔女とオレでなぜあっちを警戒しない!?
位置的にオレの正面に二体、そのさらに後ろに魔女という魔物を挟んだ状況なのに両方こっちを見ていた。
あれ、これってオレが狩られる立ち位置なのでは??
まずいまずい!
魔女も警戒してるしどうにかして味方アピールをしなきゃ!
でもどうする?
コミュ障のオレじゃ会話できないしそもそものんびりお喋りできる状況じゃない。
よし、じゃあ行動で示すしかない!
カマキリの意識をできるだけこっちから離さないようにその場から一歩近づく。
狙い通りこっちに攻撃を仕掛けてきた。
魔物二体といえどオレには転移がある、最悪逃げに徹していれば魔女が何とか倒してくれるだろうと淡い期待を抱く。
こいつの後はオレが狙われるんでしょうけどね!!
「その魔物の技能は分身みたいね! 今のところあなたから敵意を感じないしそのまま時間を稼いで頂戴。一撃で倒してみせるわ、魂源解放!!」
オレの意図をすぐ察した魔女は、大剣を低く構えて魔力を練り始めた。
彼女の強大な魔力が大剣のエンジン機構らしきとこへ収束していく。
カマキリからの斬撃を転移で避けながらその光景を見ていた。
やっぱり魔力が変な感じだな。
あれだと魔力を練り上げる本人はすごい気持ち悪いんじゃないか?
転移のおかげで攻撃を避けるのは特に問題なかったのでついそんなことを考えていると、案の定魔女の額には大量の汗が出てきている。
えぇ、大丈夫?
彼女の状態を考えると倒せるのか心配になってきた。
オレ攻撃手段ないんだけど、あの大剣借りるのか?
というかあれ持てるか? あんなでっかいの。
みたいな最悪の状況になったときの事を考えていると、
「……ありがとう、あとは任せて!!」
魔力充填が終わった魔女が叫びながらオレとカマキリの戦いへ突撃してきた。
ブーストの推進力で大剣を振り切ったらオレごと切られそうな勢いだが、こっちには転移があるしおそらく彼女もそれを見越しているんだろう。
予想通り魔女はお構いなしに大剣を振りぬいてカマキリを二体同時に切り裂いた。
その瞬間に転移で一気に後ろへ下がる。
断末魔をあげるカマキリから魔力を吸い上げ、ついでに裂かれたキズも癒す。
これは食事だ。
魔力の大部分を奪われた魔物に対抗する術はない、カマキリの叫び声も魔力と同様に小さくなっていった。
ふぅ、一先ず終わったかな……って、えぇ!?
目線を前へ向けると大剣を振り抜いた姿勢のまま、魔女の体が前に傾く。
そのままこっちへ倒れ込んできた。
どうも全力を出し切って力がでないみたいだ。
魔女の体を受け止めたオレに対して彼女は、
「怪我は大丈夫? ごめんなさい、私、ちょっとつかれ…て…」
魔物のオレに対して気遣う言葉を残しながら意識を失った。
「ぅわ!」
だが魔女の体を支えきれなかったオレは彼女ごと後ろへ倒れ込み、二人まとめて地面に転がった。
え? これどうしたらいいの??




