第4話 超絶コミュ障は、頭の中だけが騒がしい3
……どうしてこうなった!!
また頭を抱えたくなるが、今はそんなことができる状態ではない。
下を見ると、オレに膝枕をされて眠る制服姿の魔女がいる。
「ちょっと待って、髪の毛めっちゃつやっつやじゃない?」
思わず言葉がでてしまった。
魔女の赤毛が街灯に反射して揺れている。
オレは無意識の内に彼女の頭を撫でていた、手触りやばいなこれ。
魔女ってこんなに綺麗になれるの!?(錯乱)
よく見ると顔も小さいし、かっこいい顔立ちだけどまだ子供っぽさもあってバランスが良い。
読モとかやってそう。
このまま素敵な女性を愛でていたいがそんな訳にもいかないか。
穏やかな呼吸で眠っている魔女はしばらく起きそうにないので、今のうちに現状とこれからのことを考えたほうがよさそうだ。
さっきは魔物が現れたせいで中断してしまったからな。
どうやらオレは、魔力さえ枯渇しなければ生きていけるらしい。
人間みたいな生活は必須ではない。
食事もできる。
眠ることもできる。
けれどそれは生きるためというより嗜好に近い。
……正直、かなり助かる。
つまりお金いらず、家いらず。
生活コストほぼゼロ。
そう考えると、人の世界の中で生きること自体は不可能じゃないはずだ。
人間社会、いけるのでは?
例え誰かに見られたとしてもオレが魔物だってことはここで寝てる魔女以外知らないから、人間の女の子の姿ならぱっと見で魔物と気づかれない。
ただ中学生っぽい見た目らしく、日中は警察の人とかには気を付けないとダメかもしれない。
足りないのは正体を隠し続ける技術か。
どうせならもっと大人の姿だったら良かったのに!
人目のつかない所に隠れていてもいいんだろうけどいろんなことが知りたい。
何より寂しいじゃん?
コミュ障だからって人のいない生活はしんどいよ。
人恋しさが残ってるってことは元々人間だったのかな?
何回でも期待するけど人間だった過去があるなら嬉しいな。
「とにかく人が魔物に襲われないよう助けながら魔力を回収して、今回みたいにオレが無害だとアピールしていこう。
もちろん人と話す以外の方法で!
喋らなくてもいい感じでなんかこう、うまく!」
すでに暗くなった空を見上げながら呟く。
……現実逃避しすぎて最後は白目を向いていた気がする、まぁいい。
それにしても街中に光や街灯があってよかった。
完全に闇の中だったら考えがもっと暗くなっていたかもしれない。
具体的な打開策が得られたわけではないけど、とにかく人間と一緒に暮らすことができるように行動しよう。
さーて次は寝顔が素敵な魔女についてだけども。
え? まだ寝てるよな?
魔物と違って人間は魔力を使い果たしても死んだりしない、せいぜい意識を失う程度だ。
そのうち目が覚めるはず、不思議だが理解できている。
オレを亀から助けてくれた時やカマキリを一刀両断した時の魔力量はすごかったな。
けど改めて観察するとこの子自体の魔力は大したことないことがわかる。
魔力だけで人体を構成しているわけじゃなく、人間の体の中に魔力が混ざり合ってるという感じになるのか。
だとするとさっきの魔力はどこから持ってきたんだろうな?
この人が持っていた大剣を眺めてみる、刀身全体が深い赤色を帯びていた。
めっちゃごつごつした武器だな、男の人が好きそうなデザインをしてる。
「あ、なるほど??」
ブースター部分に取り付けた魔石に魔力を貯めた状態から放出してるのね。
最後は足りない魔力を自分の魔力で補って力尽きたってことかな。
そういえばさっき、この人がやっつけてくれたカマキリを吸収した時に魔石を落としたから拾っておいたんだよな。
これを人間に使ったら回復したりしない?
魔女の体に引っ付けたりしてみたけど特に反応はない。
まぁそもそも落ちてきた魔石の魔力はゼロだから!
「オレも死んだら魔石になっちゃうのかな」
……なんかヤダな。
頭をふるふると振って、湿った考えを追い出そうとする。
ちょっと別のことを考えよう。
説明回っぽいし、いいよね?
新たに得た能力を使うため集中する。
すると目の前にはオレと同じ姿の女の子が現れこっちを見下ろしてきた。
そう、さっきのカマキリの能力『分身』だ。
どうやら吸収した魔物の能力が使えるようになるみたいだ、物語とかだとめっちゃ強い能力じゃないか?
人類への脅威度がどんどん増してる気がする。
それはひとまず置いといて自分自身を見つめ返す。
今更だけどどんな姿をしているのか初めて知ったな。
魔女に学生かと聞かれたとおり、あどけなさのある顔にショートボブの銀髪、星屑を閉じ込めたかのような金の瞳。
黒を基調としたジャケットの下には、体に沿う白のインナー。
下は動きやすさを重視したパンツスタイルだ。
装飾が少なくシンプルでいいな。
なんだろう、オレ自身のはずなのに他人を見てる感覚に近いか??
自分の鑑賞の後は分身に何か動いてもらおう、一体何ができるんだろう。
――ちょっとその場でクルっと回ってみてくれ。
◇◇◇◇◇◇
「おー、すごいぞこれは」
最後に一踊りさせて満足した、そのまま踊っててくれ。
一通り分身を試してみたけど、これあれだチートってやつだ。
オレとまったく同じ存在を生み出してるから分身単体でも誰かと意思疎通可能、視界共有、果ては本体が倒されても分身を本体として変えることもできる。
さっきは同時に魔女が倒してくれたから気付かなかったけどとんでもない能力だ。
能力を吸収できるって知られたら人間が対処できなくなる前に倒さなきゃヤバいってみんな思うよな。
うーん、隠しておきたい。
でも嘘はつきたくない。
騙したらきっと一生信じてくれないだろうから……。
魔物として生まれてしまったのだからやっぱり魔女に倒されるべき存在なのかな、オレって。
……勇気を出して寝てる魔女が起きたら話してみるか? オレは悪いことしないよって。
最初の言葉さえ失敗しなければイケるんじゃないか?
そうだ、今ここで練習したらいいじゃないか!
オレって天才!
なんですぐ思いつかなかったんだ。
早速寝てる魔女へ話しかけてみよう。
「……お、おはよー、おはよー」
お、おぉ、いいんじゃないか?
うんうん頷いて小さくガッツポーズをした。
これで上手くいけば明日のオレは安泰だな!
隣に立っていた分身も頷いてくれている。
あ、出しっぱなしだった、もう戻っていいよ。
「よし、念のためもう一度れんしゅ」
「ん……、ぅん」
「!?」
意識を取り戻した魔女と目が合う。
次の瞬間、オレは転移で逃げだしていた。
コミュニケーションは未来のオレに任せるとしよう!




