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LOT 47  作者: 千代子
本編

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第九章 第二選別――崩壊

時間の感覚がなくなっていった。


なな、セレネ、ゆい。


三人は同じ部屋に置かれたまま、長時間にわたって薬物と恐怖に晒された。


最初に崩れたのは、ななだった。


「……セレネ、ここにいて……」


いつもの明るい声ではない。


セレネは隣まで移動した。


「いる。いるから」


自分も震えているのに、ななの手を掴む。


指を離そうとはしなかった。


ゆいは壁に背を預けていた。薄紫側の羽はすでに濁った紫へ沈み、その色が金色の羽の付け根へまで滲み始めていた。


りんがいたら。


こんな時でも、きっと強がって文句を言っただろう。


「……ほんと、こういう時だけいないんだから」


誰にも届かない独り言だった。


モニタールームでは、視聴者数が増え続けている。


コメント欄には、三人の恐怖を面白がる言葉が流れていた。


投票まで始まった。


『次は誰?』


投票率だけが、上がっていった。


再び扉が開く。


ひなたとせなが戻ってきた。


ひなたはせなに支えられている。


残った尾の一本が、またせなの影へ向かった。


「せ……な……?」


名前を呼んだ。


せなの足が止まる。


ほんの一瞬だけ、ひなたを見る。


「……ひなた」


すぐに表情を消す。


そして、ひなたを連れて部屋を出ていった。


その短いやり取りを見て、ゆいは目を伏せた。


ななは泣いた。


セレネは何も言えなかった。


その後、三人には選択が突きつけられた。


従えば扱いを変えるかもしれない。


逆らえば、ひなたやりんと同じ別館へ送る。


ゆいは最後まで交渉しようとした。


「……本当に、助ける気はあるの?」


はっきりした答えは返ってこない。


ただ、「可能性」だけは否定されなかった。


「そんなの信用できるわけないでしょ」


セレネは首を振った。


「でも、何もしなかったら終わる」


「だからって……」


言葉が続かない。


ゆいは目を閉じた。


正しいかどうかを考えるのは、もうやめた。


「……分かった。言う通りにする」


声は、自分でも驚くほど落ち着いていた。


「ゆい……?」


ゆいは振り返らなかった。


「生き残れる可能性があるなら、私はそっちを選ぶ」


ななはすでに会話できる状態ではなかった。


ゆいは提示された条件に従った。


途中で拒まなかった。


終わったあと、ゆいは自分の手を見た。


震えていなかった。


――できてしまった。


その事実だけが、妙に頭に残った。


けれど今は、それについて考えないことにした。


ふと、さっきせながひなたに名前を呼ばれて足を止めた場面が蘇る。


前は理解できなかった。


どうして、せながあんなふうに立っていられるのか。


どうして命令されたまま動けるのか。


今なら分かる。


ゆいも、同じことをした。


そこまで理解してしまったことが、何より苦しかった。


最終的に、三人とも競争へ戻れる状態ではなくなった。


配信画面が暗転する。


『綺羅星なな、汐見セレネ、天羽ゆい、脱落。』


終わった。


ゆいには、それだけは分かった。


生き残るために選んだ。


ただ、その答えを抱えたまま立ち続けることだけは、できなかった。


明かりが消える。


部下が入ってくる。


三人は別々の担架で運び出された。


ななの明るい声。


セレネの大げさなツッコミ。


ゆいの落ち着いた口調。


それらはもう聞こえなかった。


空になった部屋に、視聴者のコメントだけが残った。


第二ノルマを突破したのは四人。


・るる

・みこと

・つみき

・いぶき

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