住職2
「どうしてそんな事したんですか!?」
「そうですよ! そんな勝手な事、親族の我々に何の相談もなく」
「いや、私だって何度も説得したんですけどねぇ」
面倒くさいことこの上ない。絶対にややこしいことになる事は容易に想像できたが案の定だ。
俺の知った事か。そう言ってやりたかったが生きている限りは皆大事な客でもあるので無下にはできない。やんややんやと言いながらも、死んだその時は結局俺が呼ばれることになるのだからある程度良い顔はしておかねばならない。
ーーあの小娘。
妙な依頼だった。ずっと実家暮らしのはずなのに人見知りらしく顔を合わせる機会はほとんどなかった。しかしいざ矢面に現れると訳の分からない事をのたまって早々に実家を処理してどこぞに出て行ってしまった。
“私にも分からない場所に移してあげて欲しいんです”
魂抜き自体は珍しくない。生きている限り暮らしの変化は必然だ。様々な事情で仏壇を管理できなくなるのは仕方のないことだ。ただ、何度聞いても彼女の意図も詳細も分からず、しかも頑なであった事でどうしようもなかった。結局は遺族の言葉や気持ちには逆らえない。あるかどうかも分からない死後の世界や考えや理、様々な仏教武装をもった水際の営業
が無駄で不必要のないことは明らかだった。
結果これだ。何も知らされていなかった親戚の類がここにきてぎゃーぎゃーと騒ぎ立てている。文句を言いたいのはこちらも同じだ。向けるべき矛は俺じゃなくあのガキだ。そんな事は彼らも分かっているが当の本人とまるで連絡がつかず交流を遮断されている事で、その皺寄せが全てこちらに流れてきていた。
“ありがとうございます”
魂抜きを終えた後に見せた彼女のどこか安心したような顔が妙に頭にこびりついて離れなかった。




