表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

3話 魔法塔見学②

「ミリル様!! ちゃんと着いてきてくださらないと危ないですよ!」


遠くから声が飛んできて、職員が小走りで近づいてくる。


「ごめんなさい。こちらの男性と……」


振り返る。

けれど、そこにいたはずの黒髪の男の姿は、もうなかった。


一瞬で消えた。


(高位の移動魔法…)


「……いえ、なんでもありません」


それ以上は触れず、ミリルは静かに言葉を引いた。

その後も案内は続いた。

魔道具の性能、研究設備の規模、さらには維持費や財政状況に至るまで、やけに細かい説明が並ぶ。


(ここまで話すなんて出資狙いね?)


内心で冷静に結論づけながら、表情には出さない。


「施設の案内は以上になります。こちらの図書館には、ミリル様のご興味に合う魔導書もあるかと存じます。どうぞご自由に閲覧なさってください。お帰りの際はお声がけを」


丁寧に一礼し、職員は去っていった。

残された扉を、ミリルはそっと押し開ける。


――息を呑んだ。


二階、三階へと吹き抜ける空間いっぱいに、本棚が幾重にも連なっている。

さらに奥には、光の差し込む庭園と閲覧スペース。

塔の内部とは思えない、広大な空間だった。


(……空間拡張魔法かな)


胸を躍らせながら、ミリルは二階へと足を進めた。

手当たり次第に本を開き、読み、また次へ。

時間を忘れるほどに没頭していた、その時――



「ミリル・レシリア様」



不意に、名を呼ばれる。

はっとして視線を落とすと、一階に一人の男が立っていた。


「初めまして。僕はユリス。ずっと君を待っていたよ」


白い髪に、透き通るような青い瞳。

柔らかな微笑みと、どこか神聖さすら感じさせる気配。


思わず見惚れるほど整った顔立ち――

(…でもさっきの人に、似てる?)


一瞬だけ、違和感が胸をかすめる。


「……! 気づかず失礼いたしました、ユリス様。すぐに参ります」


慌てて本を閉じ、階段へ向かう。


「いや、謝らなくていいよ。こちらこそ邪魔してしまってごめんね」


穏やかな声が、やさしく届く。


「何か気に入った本は見つかったかな?」


「どれも興味深いものばかりで時間を忘れ読んでしまいました」


――でも本当に探しているのは、別のもの。

闇属性の魔導書。

それを口にするわけにはいかない。


一瞬の間。

それを見透かしたかのように、ユリスがふっと微笑む。


「もしよければ――」


軽く首を傾けて、


「今からお茶でもどうかな?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ