009 寂れた山村で『猫耳な老人』が呆ける
寂れた山村で何をするのか?
『物の見事な過疎村ね』
あたいの感想をアチキも否定しない。
マータタちゃんの案内で来た猫獣人の村、マタビは、一言で言えば人の住む場所では、無かった。
売っていた野菜からある程度は、予測していたが、周囲は、ろくな畑を作る事が出来ない山肌で、行くまでも身軽な猫獣人でなければ難しい場所が何か所もあり、行商人すら来ないだろう。
「こんな村が出来る理由は、まあ想像がつくな」
アチキがこっちを見て来るので視線をずらす。
はい、こっち側の手落ちですよ。
基本、どの種族にも平等になるようになっている筈だけど、何らかの理由で種族から逸れた集団が他の種族の場所で冷遇されるのは、仕方ない。
今いるイエーロ王国は、人間種族が幅を利かせている。
冒険者ギルドの受付嬢は、他の町のギルドから来たので特例だっただけで、基本、この国での獣人の扱いは、悪い。
そういう事情もあって、猫獣人がこんな人が住むには、相応しくない場所に押し込められているのだろう。
まともに動いている世界だったらここまで酷い環境になる前に、あたいみたいな使徒がフォローに入っている筈。
それがされていない所為で、あたい等の神様が言ってたみたいにマータタちゃんみたいな子が独りで町まで成果なんて望めない野菜売りに出てたんだろう。
『グッドアイデアを期待してる』
神様からも釘をさされているから傍観者として丸投げする事にした。
「取り敢えず、少なくとも一般客は、呼べないな」
アチキがそう判断しながら村を見渡す。
そこにいるのは、本当に子供か老人だけ。
まともな労働力になる大人は、一人も見かけられない。
「その上、今回みたいな行商も難しい。これは、普通のやり方では、駄目だな」
アチキは、そう言いながら村を進むが、周りの視線は、冷たい。
まあ、冷遇している人間種が村に来ているんだから当然だろう。
「ここが村長の家です」
マータタちゃんが案内したのは、他の家と変わらぬあばら家。
他の家よりくたびれ方が酷いくらいだ。
「村長! 野菜売れた! これで薬も買えるよ!」
マータタちゃんが嬉しそうに結局お釣り件を誤魔化されて全額受け取っていた野菜の代金を見せる。
その大量の穴銀貨を見て村長と思われる猫獣人の老人が驚いていた。
「こんなになるとは……」
暫く呆然としていた村長だったが、アチキの存在に気付く。
「マータタ、あの娘は?」
村長の問い掛けにマータタちゃんが元気に答える。
「あの子が全部買ってくれた!」
それを聞いた途端、村長の顔が歪む。
まあ、不当な大金を出しているのには、何か企んでると思うだろう。
実際、物凄く邪な欲望を抱いているのだから怪しまれても仕方ない。
マータタちゃんからそのお金を受け取った村長は、アチキの前に行く。
「お嬢さん、きっとあんたの後ろで動いている大人が居るんだろう。その人たちにこのお金を返して貰えるかい?」
『面倒ね、あんたの後ろに誰か居るって思われていると、あんたが何を言っても通じないんじゃない?』
あたいの指摘にもアチキは、平然としている。
それどころかお金をあっさり受け取る。
その様子を見てマータタちゃんちゃんは、泣きそうな顔をする。
「どうして返しちゃうの! それがあれば村の皆のお薬買えるんだよ!」
村長は、辛そうな顔でマータタちゃんの頭を撫でながら告げる。
「持って行った野菜には、とてもあれだけの価値は、無い。不当なお金は、不幸しか呼ばないんじゃ」
「でも、でも……」
ぐずるマータタちゃん。
そんな中、アチキは、背負ったバックから薬を取り出す。
「だったら現物だったら良いでしょ」
差し出された薬を見て村長が戸惑う。
「それは……しかし、それらが有効な薬とは、限らんじゃろ」
そう絞り出す村長に対してアチキは、あっさり答える。
「そんなの使ってみれば解る事だよ。マータタちゃん、いま一番病気が辛い人の所に連れてって」
「解った!」
疑う事を知らないマータタちゃんは、あっさりアチキの指示に従ってしまう。
賢明な村長は、止めようとしたが、そこは、老人と若い子の体力差で、あっさり振り切られてしまうのであった。
「はい、これで一通り回ったね」
村の老人や病気になった子供への投薬を終えたアチキに尊敬の視線を向けるマータタちゃん。
「アチキさんってすごーい!」
それに満足そうな顔をするアチキにあたいが尋ねる。
『まさか医療知識まであったの?』
「幼女には、病弱な子が多かったからな。治療が終わった後、恩返しだって言って喰ったものさ」
アチキが本当に最低のクズだと言う事を良く解る一言だ。
そんな言葉の意味が理解できずに首を傾げるマータタちゃんを他所に投薬が終った村人達を確認してからやってきた村長が苦々しい顔をする。
「お前さんは、本当に何者なんじゃ? もしやエルフか?」
普通に考えたらこんな子供が的確な投薬なんて出来る訳が無いだろう。
「そんな事より、解ってるよね?」
アチキの言葉に村長は、躊躇をしつつも頷く。
「村人を救って貰ったのじゃ、何でも言う通りにしよう」
それを聞いてアチキは、告げる。
「それじゃあ、やりますか、村興し!」
「はーいー?」
村長が呆けた顔をするのは、仕方ない事だろう。
神々の政策の失敗がこんな所に影響出てます。
アチキの技能は、多分、必要に応じて増えていきます。
基本何でも出来る人ですから。
次回、何にもない村に在ったのは?




