010 人無しの高原で『獲れずな鳥』が乱獲される
鳥が獲れない理由とは?
『やっぱり、貴重な野草の類は、無かったわね』
村の周囲を探索し終えたアチキが頷く。
「最初からあまり期待していなかったがな」
そんな物があったら元からこんな赤貧な生活を送って居ないだろう。
「こうなると全く新しい技術を導入するのも検討にいれなければいけないな」
アチキがかなり危険な事を考え始めて居た。
『忠告しておくが、世界レベルで影響が出る元の世界の知識を拡げようとしたら、この世界に常駐するあたいの同僚が始末に来るからな』
基本、上位世界から下位世界への干渉は、あたい等の神様が禁止している。
アチキの存在自体が、その禁止事項にあたるって言うのに、下手な知識を拡げた日には、この世界の監視役の七尾鳥の先輩に目を付けられる。
主にあたいが怒られそうな気がするから、一応釘を刺して置いた。
「一応、気にして置こう」
全くそんな気を感じさせないアチキの答えにかなりイラっと来る。
村に戻ると村長が恐縮した顔を見せる。
「アチキ様、やはりこの様な村を復興するのは、難しい話では?」
仮にも村長って名乗っている以上、今まで何もしなかった訳が無いのだから当然の言葉だった。
それに対してアチキは、相手の気遣いを無視して尋ねる。
「どうしてこんな何もない所に村があるのだ?」
「そ、それは……」
ドストレートな聞かれたくない質問に村長が躊躇しているのであたいが諫める。
『差別から避けるために決まっているでしょうが。少しは、相手の気持ちも配慮すべきでしょ?』
アチキは、一瞬だけあたいに視線を送ってから口にする。
「人を避ける為でも、ここまで酷い環境に村をつくる必要は、無い。何等かの理由がある筈だ」
すると村長が諦めた様子で頷く。
「この村は、元々は、ある目的で強硬登山した人間種の荷物持ちとして連れて来られ、放置された猫獣人が仮拠点を元に作ったのです」
そういう経緯なら、こんな何にもなく、所に村があるのも頷ける。
しかし、問題は、目的がまるで見当もつかない。
「もしかして、貴重な印玉も持つ印玉獣がいるのでは?」
アチキの問い掛けに目を見開き、驚く村長。
「どうしてそれを?」
アチキは、淡々と答える。
「そんな難しい話では、無い。こんな辺鄙な処まで態々来る以上、何かしら貴重な物がある筈だが、それを入手するのは、難しい筈。仮拠点と言っていた事からもここから探しに出ていたのも解る。ただし、それは、見つからなかった訳じゃない、放置されるだけの何かしらの困難があったとすれば、貴重で強力な印玉獣が居ると考えるのが妥当だろう」
言われてみれば納得の論理だが、少ない情報からよく導き出せるものだ。
「強い訳では、ありません。その印玉の性質上、捕まえるのが不可能と思われたからです」
村長の反応にアチキが少し思案する。
「見つけ辛い訳では、無いな。それだったら、人海戦術を使う。強過ぎて採算が合わなかった訳でないとしたら、もしかして鳥系の印玉獣、それも回避能力に優れている物か?」
村長が深く頷く。
「はい。空移隼と言う、二つの印玉を持つ印玉獣でございます。その力は、空間転移。それも、攻撃を感知して直ぐにその範囲外に逃げる事が可能な為、いくら攻撃しても落す事が出来ませんでした」
空間転移、回避としては、一番厄介なタイプ。
それでも戦うのなら、攻撃の瞬間を狙う等の手があるが、回避のみに専念されたら、地上からでは、どうしようもなくなる。
『それを捕まえるのは、無理ね』
あたいの言葉を無視する様にアチキが告げる。
「それは、使える」
「ここだよ!」
アチキは、マータタちゃんの案内で空移隼の生息地に来ていた。
確かに上空には、空移隼が飛び交っている。
それに向かってアチキは、矢を射る。
直撃コースを進むが、空移隼は、消えた。
空間転移して、別の場所に現れる。
「あーん、やっぱり駄目?」
悲し気な表情を浮かべるマータタちゃんに対してアチキは、自信たっぷりに答える。
「大丈夫だ。任せておきなさい」
優し気な表情を浮かべて、マータタちゃんを安心させるとアチキは、矢を乱射する。
そんな事で当たる様ならとっくの昔に乱獲されているだろう。
あたいの異空間も見る視界には、ランダムに空間転移する空移隼達が見える。
法則性も何もあったもんじゃないそれでは、まず当たらないだろう。
そう思っていると、アチキの手が一度止まった。
諦めたかと思った瞬間、早業で放たれた矢は、一羽の空移隼に向かっていく。
多少、不意を突けたとしても、半ば条件反射で空間転移をする空移隼は、あっさり避けてしまう。
しかし、空移隼が空間転移した先には、アチキが既に次の矢を射て居た。
矢は、空間転移直後の空移隼の急所を貫いて居た。
そして落下した空移隼を直ぐに確保するアチキに目を見開き歓声をあげるマータタちゃん。
「すっっっっっっごぉぉぉぉぉい!」
『どうやった。距離も方向、タイミングすらランダムなそれを捉えるのは、至難の筈だぞ?』
幼女の賞賛に嬉しそうな顔をするアチキが何でも無い事の様に言う。
「種族で見ればそうだが、個別の能力と癖を読めば簡単だ」
こいつ、空に舞う空移隼を個別識別してやがる。
『鳥の見分けなんて出来るのか?』
あたいの疑問にアチキは、ニヤリと笑う。
「鳥好きな幼女を落とす時に習得した」
相変わらず最低な理由だった。
『獲れたのは、良いが、それを狩るとしても、そんな真似をこの村に居る連中だけで出来るとは、思えないが?』
あたいがそう指摘するとアチキは、空移隼から印玉を刳り抜き答える。
「そっちも考えてある。マータタちゃんこれを額に付けて、あの鳥の動きを知りたいと思いながら『サーチ』っていってみなよ」
アチキから『空』の印玉を受け取ったマータタちゃんが不思議そうな顔をしながらも素直に言われた通りにする。
『サーチ』
すると、『空』の印玉が空移隼の空間移動の動きをトレースしていた。
「それを村の人達に教えて、空移隼を狩って売れば、村に一杯お金が入るよ」
アチキの説明にマータタちゃんが歓喜の表情を浮かべる。
「もうこれで、お父さんもお母さんんも出稼ぎに出なくていいんだね!」
「勿論だ!」
そう答えるアチキの笑顔の下には、どれだけの邪な思惑があるかと思うと、気が重い。
「あたし、皆に教えて来る!」
そう駆け出していくマータタちゃんを他所にあたいが確認する。
『この方法がばれれば人間種が独占するよ』
「村の連中には、秘密を徹底させるさ。何より、買い取りは、チェリの領主にさせるつもりだからな。独占しようとしたら、また思い知らさせてやるさ」
怖い事を笑顔のままいうアチキであった。
それから数日が過ぎ、村に食料を届けに来た大人連中に村長から印玉の件を伝えられ、アチキの交渉を経て不幸な領主との取引が始まった。
季節が代わりあたい達が来た、日本でいう所の春、芽の月が終り、初夏の頃である葉の月を迎えるころには、村人たちが戻り、空移隼の乱獲で得た資金でこの村、マタビは、潤っていた。
真摯そうに空移隼の狩り方や領主との交渉をしていたアチキが拳を握りしめて告げる。
「マータタちゃんの心は、確実にあちきが掴んだぞ!」
『確かに、マータタちゃんは、アチキの言う事は、うのみにするわね』
あたいが苦々しくそういってしまう程にマータタちゃんは、アチキに懐いて居た。
「これなら、身も心もあちきに捧げるって応えてくれる筈だ」
自信満々なアチキだったが、あたいにもそれを否定する根拠が見当たらない。
なにせ、アチキは、間違いなく村を救った英雄で、どんだけ下種な考えで接していたかしらなければ、マータタちゃんが惚れてもおかしくないくらい優しくしていたからな。
ろくに性知識もないマータタちゃんなら、良い様に言いくるめられてしまう可能性が高い。
そんな中、まるで火に飛び込む夏の虫の如く、マータタちゃんが訪れてしまった。
「アチキさん、あたしね、言いたいことがあるの」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうだが、何処か嬉しそうにそう口にするマータタちゃんのその仕草は、告白のそれにしか見えなかった。
「何かな?」
笑顔を取り繕うアチキだが、あたいから見たら欲望がダダ漏れである。
しかし、マータタちゃんは、その片鱗すら気付いて居ないままに口にする。
「あたしの婚約者が帰って来たの!」
アチキが石になった。
「三つ上で、初めての出稼ぎに行っていたんだけど、アチキさんの御蔭でもう出稼ぎにいかなくてよくなったから結婚するの!」
マータタちゃんが本当に嬉しそうに語る中、アチキは、ただただ、呆然とその言葉を聞き、生返事を返すしか出来ないのであった。
基本、こんな感じでアチキがチートで問題解決し、最後の最後で上手く行かないって展開になります。
一応次、第三幼女は、ロリババア、第四幼女は、奴隷幼女ってネタがありますが、基本落ち目の方を優先してきます




