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006 領主の屋敷で『悪徳な領主』が絶望する

悪徳領主を懲らしめます

「えーい、小娘一人連れて来られぬのか!」

 そう激怒するのは、今、アチキ達が居る町、チェリの領主だった。

「邪魔が入って。なに直ぐに連れてまいります」

 あたいが鱗をつけて置いた衛兵がそう弁解するが、領主は、苛立ちを収めない。

「この町の女にも飽きて来てから、試しに小娘を抱いてやろうと思っていたんだがな。まあいい、今日の所は、人妻でも抱いて我慢しておくか」

 そういって領主は、帰してくださいと泣き叫ぶ女性を犯すのであった。



 幼女を助けるって事なので、あたいは、領主の情報をアチキにも伝えた。

「幼女でも抱こうかだと! 幼女は、至宝だというのに、そんな物の価値も解らぬ奴には、ぜったいにサクッラちゃんには、指一本触れさせてやるものか!」

 ご飯の他に服や玩具をプレゼントしまくって名前を聞き出したアチキがそう宣言する。

『それで実際、どうするつもりだ? 相手は、領主、この町の権力者が。多少痛みつけただけでは、懲りるどころか、サクッラにも危害が及ぶ可能性があるぞ』

「多少ならな」

 そういって微笑むアチキの手には、長い針と金槌が握られていた。



 その夜も領主は、嫌がる女性を抱いて満足してから寝床に入ろうとした。

 そこにアチキが現れる。

「小娘? もしかして部下の誰かが気を利かせたのか? だが、今夜ももうそんな気分では、ないぞ」

 領主は、そう言いながらアチキに近づく。

「近くでみるとなかなか美しいじゃないか。よし特別に……」

 言葉の途中で、アチキが隠し持っていた金槌が領主の左手小指を叩き潰す。

 豚を締めた様な悲鳴があがる。

 護衛の兵士が部屋に駆け込む。

「そのガキだ! そのガキが私を襲ったのだ! 直ぐに殺せ!」

 領主の命令に兵士達は、アチキの幼い姿に戸惑う。

「さっさとしろ! それともお前達の娘を私に差し出すか!」

 領主の言葉に兵士たちは、顔を歪めて近づくが、アチキの方が行動が早かった。

『サンダーブレイク』

 お馴染みの電撃攻撃で兵士を痺れさせたアチキは、倒れた兵士の腰に持ってきた長い針を突きさす。

 全ての兵士にそれを終えた後、アチキが宣言する。

「これよりお前が寝ようとした時にあちきが来て、その指を金槌で潰す。邪魔する奴は、二度と立てない体になるから覚えて置け」

 そういって邪魔する者が居ない中、闇夜に消えていくアチキ。



 その後の様子をあたいは、残した鱗を通してみる。

「逃げられただと! 揃いも揃って無能揃いだ!」

 小指の治療をさせながら、当たり散らす領主。

「町からの出入りは、防いである以上、町のどこかに居る筈です。必ずや見つけて始末します!」

 衛兵の言葉に領主が吠える。

「ただ殺すだけでは、飽き足らぬ! 生きたまま私の前に連れて来るのだ! そして私にやった様に指を潰してやる。その後、殺して下さいというまで犯してやろう!」

 荒れ狂うその様に、衛兵たちは、怯える。

 そんな中、兵士たちの治療をしていた者が報告する。

「襲撃の際に居た兵士達ですが、傷自体は、小さいのですが、足を動かせなく、もう兵士としては、役に立たないかと」

「ガキ一人、捕まえられぬ兵士などどうなった所で構いわせん! とにかくあのガキを捕まえろ!」

 領主の命令に衛兵達が駆け出していった。

 隣で持ち込んだ保存食を齧りながら領主の館の屋根裏に潜んでるアチキに尋ねる。

『この後、どうするつもりだ?』

「どうするもこうするも言った通りの事をするだけさ」

 アチキは、そう微笑むだけだった。



 翌朝、痛み止めも飲み、興奮も治まった領主は、寝る為に寝室に移動した。

 そしてベッドに横たわった瞬間、アチキの金槌が領主の右小指を潰した。

 再び屋敷に広がる豚を締めた様な悲鳴。

 当然の様にやってくる兵士達にアチキが告げる。

「あちきを止めるのかい? そうしたらあの兵士たちの様に二度と立てなくなるぜ」

 兵士達に動揺が広がる中、領主が叫ぶ。

「何をしているさっさとそのガキを捕まえろ!」

 領主の声に反応して兵士が動いた。

『サンダーブレイク』

 こうして放たれた電撃で再び兵士達は、麻痺させられ、腰に針を突きさされてしまう。

 そして再びアチキは、追跡者の死角に移動してから屋根裏に移動するのであった。



「また逃げられたですまされるか!」

 鱗を通して聞こえて来る領主の怒声と下の方から聞こえる怒声が被る。

「町の捜索に人手を割いていた為……」

 衛兵の言い訳に領主は、切れまくる。

「そんな言い訳は、良い! 直ぐにあのガキを私の前に引きずり出してこい!」

 そうして蜘蛛の子を散らすように捜索を始める衛兵達。

 だが、逃げていると思って居る相手がまさか直ぐ上で呑気に保存食を食べていると気付かず無駄な捜索を続ける羽目になるのであった。



 新たな傷の治療が終わり、結局未だ一睡もしていない領主は、苛立ちながらも睡魔に勝てずにベッドに入った。

 その瞬間、アチキが現れて、今度は、左手薬指を潰した。

 三度目となる豚を殺したような悲鳴に今までより早く兵士達が現れる。

 しかし、今までとは、様子が違った。

「何をしている! 早く捕まえろ!」

 砕かれた指を押さえてそう領主が叫ぶが兵士達は、アチキの道を塞ごうとしなかった。

 そんな兵士達を横目にアチキは、逃走するのであった。



「何で逃がした!」

 領主の怒りは、捕らえようとしなかった兵士に向けられた。

「それは……」

 答えられない兵士達。

「ふざけおって、お前等全員牢屋送りだ!」

 こうして兵士達は、牢屋に送られてしまうが、安堵の表情を浮かべていた。

「誰だって、脊髄をやられて下半身不随になりたくないよな」

 アチキの言葉にあたいが呆れる。

『そこまでする必要があったのか、痺れさせれば逃げるのには、問題なかっただろう?』

 アチキは、苦笑する。

「あれは、逃げる為にやってる訳でも兵士達を減らす為にやってる訳でもない。あいつを追い詰める為にやってるんだよ」

 屋根裏まで聞こえる怒声を上げる領主に心底厄介な奴を敵に回したと同情すら覚える。



 領主の睡眠欲は、限界に近づいて居た。

 元々、大怪我をしているのだ、体は、休息を求めている。

「お前等、絶対に侵入者を許すなよ!」

 そう宣言して領主は、今まで襲われてきた寝室と別の寝室に移動して出入り口に兵士を配置していた。

 中に誰も居ない事まで念入りチャックした後、ベッドについた所で、アチキが天井をぶち抜いて床に着地、 即座に領主の右手薬指を潰して、窓から飛び降り、前に立ち塞がる事すらしない追ってを振り切るのであった。



「私が何をしたというのだ!」

 治療もそこそこに叫び散らす領主だったが、周りの人間にしてみれば、色々やっただろうって思って居る事だろう。

「一刻も早く捕まえろ!」

 領主がそう叫ぶが、気付くと兵士の姿は、殆ど無くなっていた。

 衛兵達もその数を減らしている。

「どうしてこんなに少ない!」

 領主の言葉に衛兵の一人が口にする。

「今回の一件で多くの者が辞めました」

「馬鹿をいうな誰がそんな事を許した! 私は、認めて居ないぞ」

 領主の言う通り、領主の承認がなければ辞められない。

 勝手に辞めれば罪に問われるだろう。

「それでももうこんな無駄な事に自分の一生をかけたくないからです」

 既に多くの脱落者を生んだ兵士もその様を見て来た衛兵もこの茶番に付き合って一生を台無しにしたくないのだろう。

「冗談は、止せ! 私に逆らってただで済む訳がないだろうが!」

 残っている者達は、視線を合わせない。

 だが、内心、どう思って居るかなど、簡単に読み取れる。

 その逆らってただで済まない筈の相手が未だに逃げ続けている。

 それもそれは、幼い小娘なのだ。

 目の前に叫ぶだけの領主の力による恐怖は、その力を大きく失っていた。

「揃いも揃って!」

 周囲の物にあたり散らす領主だったが、睡眠不足からくる目眩に襲われる。

「何処かあいつが来ない場所に移動しなければ」

 そういって領主は、屋敷を彷徨う事になった。



 領主が屋敷を彷徨う様になって半日が過ぎた。

 左手の指は、全部潰され激痛が常に襲い続ける。

 しかし、それよりも強い睡魔が領主を襲い続けていた。

「何処だ! 何処だったらあいつが来ない!」

 覚束ない足取りで進む領主は、廊下で倒れ込んでしまう。

 そして強烈な眠気が領主を襲う。

「寝たら、奴が、あいつが……」

 そんな領主の視線の先にアチキが現れた。

「ま、まだ寝て居ない! 私は、寝てないぞ!」

 領主が必死に訴えるがアチキは、沈黙している。

「ゆ、許してくれ! なんでも言う通りにするだから、だからもう許してくれ!」

 その言葉を聞いてアチキが告げる。

「お前が女を無理やり抱かず、税金も正規の通りにするのであれば許してやろう」

「ほ、本当か?」

 領主の言葉にアチキが睨む。

「だが、その約束を破ったら次は、無いと思え!」

 アチキが去っていった後、領主は、死んだように眠りにつくのであった。



 目覚めた領主は、家臣たちに謝罪し、今回の一件で下半身不随になった兵士達にも補償をした。

 当然、女遊びは、一切行わない。

 それどころか、寝室に女性がいるだけで震える始末である。

 チェリの町の領主、デンロ=デーンは、悪徳領主と言われていたが、ある日を境に一切の悪行を行わなくなった。

 その後のチェリの発展にも大きく貢献したまれに見る有能な領主と後に国王にも称賛される事になる。

 ただ、そのある日の事に関しては、関係者一同、決して語ろうとしない為、後世の謎となるのであった。

やり方がえぐいです。

曳かれそうになった子供を救って転生する様な人たちには、真似できない残酷非道な幼女助けでした。

次回、今回の騒動のまとめです

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