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【第四章:正面から血反吐を吐いて戦うのが好漢なら、天降る奇兵こそが真のヒーローだ! 監督! ヒーロー役は俺にやらせろ!(好漢)】

 オールドマンと狂特ハイエナは、ホンヴァーシャの新領袖と共に装甲営地へと帰還した。 計画に抜かりがないか何度も入念な確認を重ね、各分隊長へと作戦指示が下されていく――。


 あっという間に清々しい朝が訪れた。 兵士たちが牽引砲を一台ずつトラックの荷台へと連結していく光景を見つめ、オールドマンは腰に手を当てて感心したように舌を巻いた。 「作戦計画を知らなきゃ、これが全部木製のハリボテだとは夢にも思わねぇな」


 傍らに立つ新領袖が感慨深げに息を吐く。 「正直、私だって驚いていますよ。提案を出しただけで、ホンヴァーシャの民が総出で偽砲の製作に協力してくれるなんて。難民キャンプでの鬱屈した生活が長かったぶん、いざ復讐の機会となれば一致団結して体を動かしたかったのでしょう」


(――老友よ……見ているか? 誇らしいだろう……?)


「3日の準備期間じゃ急すぎると思ってた。数座の偽砲でお茶を濁すつもりだったんだが……故郷を失って久しいというのに、ホンヴァーシャの絆はまだ潰えていなかったか……」 オールドマンは顔を背け、口元を押さえて軽く咳き込んだ。それから煙草葉を詰め直し、再び火を灯す。


 新領袖は心配そうに彼を見つめた。 「ボス……」


 視線はトラックの点検作業に向けたまま、オールドマンは手を挙げて言葉を制した。口元に穏やかな笑みを浮かべる。 「いいさ。この偽砲は民の血と汗の結晶だ。俺たちがその思いを踏みにじるわけにはいかねぇ」


 新領袖は意を汲んで唇を引き結び、深く頷いた。 「もちろんです……ボス」


 本隊の整備が最終段階に入ったのを確認し、新領袖は配下の兵士たちに向かって声を張り上げた。 「よし、準備完了だ! 出撃するぞ!」


 オールドマンは狂特ハイエナや軽歩兵たちと共にトラックの荷台へと乗り込んだ。 パイプを口から外し、吸い口を全員に向かって突き出す。 「いいか野郎ども。過去に都市防衛兵だったか俺の配下の騎兵だったかなんて関係ねぇ。これからの作戦中、どんな戦況になろうがお互いを信じ抜け。結束を乱さず、迅速に動け」


 軽歩兵たちは頷き、声を揃えて応えたものの、その表情には緊張と恐怖の色が隠しきれずにいた。


 それを見たオールドマンは再びパイプを口に咥え、両手を隣に座る兵士の太腿の上に重ねた。 「俺たちの先祖だって、見知らぬ大海原へ漕ぎ出した時は未来への恐怖と不安に震えていたさ。だが、結束があったからこそ『海の郷』を見つけ出せたんだ」


 左側に座る狂特ハイエナは、この唐突なスキンシップに一瞬居心地悪そうな顔をしたものの、素直に両手をオールドマンの手背と隣の兵士の膝の上へと重ねた……。


 それを見た兵士たちも次々と手を重ね合っていく。 拳を固く握りしめる者、唇を噛み締める者。だが、その瞳には覚悟の光が宿っていた。


 大車隊が台地近郊の作戦ポイントへと到着する。 先頭車両の助手席にいたオールドマンのトラックが、新領袖の乗る砲車の傍らで滑り込むように停車した。


 荷台越しに砲塔の外へ身を乗り出している新領袖へ向け、オールドマンは不敵に口角を上げた。 「計画通り、露払いは頼んだぜ」


「全力を尽くして道を清掃してみせますよ」 新領袖は砲塔に肘を預けて微笑むと、すぐさま駆け込んできた特遣隊の伝令に耳を傾けた。


 報告を聞き終えるなり、新領袖の表情が険しくなる。すぐさま特遣隊へ命じた。 「直ちに各部隊へ通信を打て! 計画通り、即時攻撃を開始させろ!」


「了解!」 特遣隊は携行型の通信装置を地面に設置し、アンテナを伸ばしてレシーバーへ向けて怒鳴り始めた。


 振り返った新領袖がオールドマンへ告げる。 「ボス、状況が芳しくありません。各地に分散していた敵集結地が動き出しました。我々が優先して敵の障害を排除します。作戦をそのまま執行してください」


「了解だ」 オールドマンはニヤリと笑うと、水筒の水でパイプの火を消し、荷台のフレームをコンコンと叩いた。


『――全車、直ちに行動開始! 第一波は散開し、歩兵は補給弾薬の埋設孔を掘削せよ! 第二波は副官の指揮下に入り、敵の行軍ルート上で伏撃を展開!』 新領袖の指示がレシーバーを通じて伝播する。装甲部隊は一糸乱れぬ動作で素早く展開を開始した。


 オールドマンもチャンネルを切り替え、自らの部隊へ命令を飛ばす。 「全トラックのドライバーへ告ぐ! 計画通り、最高速で台地へと駆け上がれ! 兵士どもは獲物を構えろ! 接近してくる敵歩兵を片っ端から蜂の巣にしてやれ!」


 言い終えると、オールドマンと狂特ハイエナは借り受けた制式小銃を構え、軽歩兵たちと共に戦闘態勢を整えた。 重厚なエンジンの爆音が周囲を振るわせ、トラック隊は砲車の側翼へと滑り込み、台地の斜面へ向けて照準を合わせた――。


 


 ──────────────────────────────────


 


 新領袖は双眼鏡で敵の進軍位置を補正・計算し、マイクに向かって叫んだ。 『――12時方向、3! 仰角65点45! 弾薬装填!』


 通信機から各砲車の復唱が届く。砲塔内部へ身をひそめた新領袖が号令を下した瞬間――。 ズドォォンッ! ズドォォンッ! 砲車が一台また一台と激しい火炎と黒煙を撒き散らし、爆音が樹林を揺らした。反動で揺らぐ巨躯が、周囲の粉塵を盛大に巻き上げていく。


『――全車前進! ターゲット、敵砲車! 自由射撃!』 『――砲車に追従し、一気に台地へ突撃せよ!』


 砲弾が敵陣のただ中へと次々と着弾し、閃光と土煙が敵兵を吹き飛ばす。 オールドマンと新領袖の怒号が、それぞれの無線チャンネルで交錯していた。


 装甲営の急襲に対し、深淵は即座に反撃へと転じた。 火光が激しく交錯する中、砲車の側翼から台地へと向かうトラック隊がギアシフトを叩き込み、限界まで加速していく。激しく旋回する履帯が巻き上げる土煙が、深淵の注意を引きつけた。


 深淵はすぐさま一部の砲門を側面車隊へと向けた。 だが、旋回する紫の砲車の無防備な側腹へ、連合軍の砲弾がズドンと直撃。黒煙を上げて沈黙する。


 新領袖は砲車隊を二手に分けた。一方は正面の敵を抑え、もう一方は旋回して迫る敵砲車を阻止する。


 連合軍の砲撃掩護を受けながら、荷台の軽歩兵たちは迫る敵へ向けて小銃を乱射した。 勢いを殺さぬまま車列は斜面を駆け上がり、ついに台地の頂へと躍り出た!


「急げ! 全員降りろ! 偽砲を下ろせ!」 オールドマンは荷台から飛び降りるなり怒鳴り散らした。 「ドライバー! 車体を遮蔽物として配置しろ! 歩兵は浅坑を掘って弾薬を埋設せよ!」


「残りはトラックを盾にして敵歩兵を食い止めろ!」 オールドマンは制式小銃を構え、斜面を下ってくる敵兵へ向けて容赦なく引き金を引いた――。


 他の集結地からの深淵の増援が次々と押し寄せ、台地の戦況は瞬く間に泥沼の膠着状態へと陥る。 西方のアーチの方角からも、かすかに凄まじい砲撃音が響き始めていた。


「ボス! 東南方向に異変ありです!」 友軍が台地戦区へ接近し、オールドマンが撤退命令を下そうとしたその時、傍らの軽歩兵が悲鳴を上げた。


 オールドマンは言われた方角――東南の地平線を見つめた。 地平線の彼方に、不気味で巨大な黒い影が蠢いている。


 双眼鏡を覗き込んだオールドマンは、思わず生唾を飲み込んだ。 すぐさまレシーバーを引っ掴み、チャンネルを激しくダイヤルする。 「新領袖! 直ちに打電して救援を要請しろ! 東南方向から敵の集団軍が接近中だ!」


 オールドマンはチャンネルを切り替え、叫んだ。 「人類営長! 聞こえるか!?」


『――こ、こちら……受信……』 距離のせいか感度が悪く、返答が途切れ途切れに届く。


 オールドマンは即座に怒鳴り返した。 「防衛陣形を構築しろ! 敵の大軍だ! 繰り返す、防衛陣形をとれ! 大軍が来るぞ!」


 オールドマンは軽歩兵たちと視線を交わした。 荒い息を吐きながらも、兵士たちの瞳には軍人としての確かな覚悟と強靭な意思が宿っている。


「新領袖! 台地の退路を確保してくれ! 危険と判断したら即座に撤退する!」


「野郎ども! 一部は俺と一緒に偽砲を台地の端まで押し出すんだ! 急げ!」 オールドマンは銃を背中に回し、放置されていた偽砲の後ろへ回り込んで縁へと押し進めた。


 狂特ハイエナや兵士たちが力を合わせ、偽砲を指定位置まで押し出す。 オールドマンは間髪入れずに命じた。 「残りは弾薬を持てるだけ持て! 持ちきれない分は偽砲の横に集めろ! 撤退準備だ!」


「負傷者をトラックに乗せろ! 予備の資材はここに捨てるぞ! 走れ!」 兵士たちがテキパキと指示に従うのを確認し、オールドマンはレシーバーへ叫んだ。 「新領袖! これより台地から撤退する! 周囲の敵を掃討してくれ!」


 全員が斜面の前に集結したその時――天空を切り裂く不気味な風切り音が急速に高まった。 ズドォォンッ! ズドォォンッ! 台地のあちこちで凄まじい爆発が巻き起こる!


 背後で炸裂する火光を浴びながら、オールドマンは身を低くして絶叫した。 「クソったれが! 急げ! 敵の射程内に捕捉されたぞ!」


 撤退命令の下、砲煙と火の海と化した台地から、負傷者を載せたトラックと軽歩兵たちが斜面を駆け下りていく。 敵の増援が到着するにつれ、容赦ない火力網がますます密度を増していった。


 南側の敵は新領袖の阻止砲撃によって押さえ込まれていたものの、北側の敵軍は執拗に斜面へ向けて猛攻を仕掛けてくる。


 新領袖は後方の通信兵へ救援を打電させると、激化する戦況を見て即座に作戦を変更した。 『――迎撃組、直ちに後退せよ! 2時方向、1! 敵増援部隊へ向けて一号砲門を使用! 仰角60点5! 自由射撃を継続せよ!』 『――西側のアライアンスへ呼応! 北から迫る敵への阻止砲撃を要請! 直ちに補給線を確保せよ!』

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