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アオハル  作者: 駒里倉葉
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5話 野球とテニス

 暁月先生に言われて、渋々クラスメートについて行って会場の体育館に向かう。隣にいる遥を見るととても楽しそうだ。この学校は部活動の種類が豊富で、定番の吹奏楽部やサッカー部から、少し珍しいコンピューター部やディベート部などといった部活がある。しかし、部活というものは高校生活の貴重な時間を大量に消費してしまう。凛は部活という面倒な活動の存在意義がわからない。

 「うわあ、改めて見るとたくさん人がいるね。」

遥が体育館で部活動の宣伝をしているおよそ600人の先輩たちをみて驚いた。部活を紹介するプラカードを持った人が歩き回り、あちこちで先輩が勧誘している。凛たち高校1年生は体育館の中に入り、様々な部活動紹介を見てまわった。

「バスケ部の試合で大活躍しようぜ。」

「吹奏楽部で一緒に楽器を奏でましょう。」

「茶道部の抹茶一杯いかが?」

多くの部活が勧誘している声が体育館中に響く。遥はとても興奮しながらあちこちを見てまわっている。どうしようか。適当に楽にサボれる部活がいいと思いながら、凛は部活の紹介を見ていた。凛の理想の部活は、活動日数が少なくて、かつめんどくさい内容をしないことだ。なんなら、幽霊部員としてサボれる部活の方がいい。しかし、そのような都合の良い部活は存在しない。

「甲子園へ行こう!」

そんな声が近くから聞こえた。遥とともにその声が聞こえたあたりへ向かって行く。野球部だ。兄がこの学校を甲子園の歴史に残る、3年連続優勝させたおかげで、この学校は甲子園強豪校になった。甲子園に憧れて入ってくる人も少なくはない。

「漣君は野球部だったけど、凛ちゃんはどうするの?」

「…入らない。」

野球部には入らない。入るわけがない。あの日兄と大喧嘩をしたきり、野球のクラブチームは辞めた。いつも使っていたグローブも、クローゼットの一番奥の、絶対視界に入らないところに封印している。野球なんてしたら、あの日見た兄のカッコ悪い姿を思い出して憎らしくなってしまいそうだ。野球なんて……。

「じゃあ、テニス部入ろうよ。」

「えっ。」

遥に急に言われて驚いてしまった。そういえば、遥は中学生の頃からテニスをしている。これでもかなり上手くて、全国大会常連者である。遥が風を切ってラケットを振る姿はとても美しくて、惚れてしまう。遥が汗を輝かせてこちらへ笑いかけた時には綺麗で、失神するかと思ったぐらいだ。また遥のテニスする姿を見てみたい。

「凛ちゃん?」

凛はハッとする。妄想をしていたせいで、周りの状況が全然掴めていなかった。

「それで、どうする?」

「うーん。」

凛は迷った。運動部となると活動日も多く、大会もあって結構手間がかかる。しかし、遥のそばにいてテニスをすることも悪くはない。この学校はテニス部もかなり強く、頭が良い人が多いという噂も聞いたので、もしかしたら勉強などの相談に乗ってくれるかもしれない。部活には絶対入らないといけないので、テニス部にしようか。

「テニス部に入る。」

凛がそういうと、遥は目を輝かせて、

「本当⁉︎ 一緒に頑張ろう!」

と笑顔で返事した。遥の可愛らしい笑顔に、凛は思わずドキッとしてしまった。


 今日は下校時間が早かった。時計は3時30分を指し、多くの生徒が校門を出て帰路につく。凛は一人で街中を歩いて行く。遥は自習室で勉強するらしいので、後で帰ると言っていた。本当のところは、おそらくこれから兄と話すときに、凛たちに気を遣わせたくなかったのだろう。

 「あぁ、眠いな。」

これが凛の口癖である。眠かろうが眠くなかろうが、とりあえず面倒くさい時やだるい時についつい言ってしまうのだ。まだまだ高いところにいる太陽が凛たちを照らし、眩しい。少し歩いて駅につき、凛はちょうどよく来た電車に乗って平和公園に向かった。


「次は、平和公園、平和公園。」

車掌さんがそう読み上げ、同時に宣伝のアナウンスが流れる。凛は鞄を手にもち、電車の扉が開いたのち降りていった。ここら辺は船の汽笛が聞こえることもあるが、港という独特の雰囲気が薄れ、なんだか落ち着く。爆心地に近いせいか、平和というイメージがある街である。駅のすぐ近くのコンビニで最近足りなくなっていたシャーペンの芯とノート1冊を買ったのち、すぐそばにある平和公園に向かった。

 階段もあったが、なんとなくエスカレーターに乗ってみた。そばにある花壇は季節の花で埋め尽くされていて、とても綺麗だ。冬は少し寂しいが、今は春なので鮮やかな花がいっぱいある。しばらくすると、平和の泉が見えてきた。この噴水は平和公園の中でも有名なスポットの一つで、今日も何人かの観光客が訪れていた。その奥に見えるのは、かの有名な平和祈念像だ。凛は道幅の広い道を歩いていき、平和祈念像に近づいてみる。とても広い広場の目の前にその像があった。水色の巨大な像で、右手をあげ、左手を横に伸ばしたあのポーズは幼い頃からずっとみてきている。小学校でも頻繁に訪れて、その都度巨大な平和祈念像の迫力を感じていた。


 「何、ぼーっとしているんだ。」

肩に手を置かれ、後ろから声がした。振り返ると、兄の漣がいた。暖かいからか少し薄い服をきて、カッコ良い着こなしをしている。午前中に何か用事があったのか、茶色のレンズの眼鏡をかけていた。漣が少し怒った口調で、

「5分遅刻だぞ。」

と言った。凛は驚いて、腕時計を見る。確かに、時計は4時5分を指していたので、遅刻してしまった。凛は申し訳なささに少し苦笑いをした。


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