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Sid.96 古城での対ボス戦に突入

 六本腕の石像は魔法を使わず倒せた。少しは剣の練度が上がったかもしれない。

 少しずつだけどグレートソードも手に馴染んできた感じもあるし。


「もう少し先へ行ってみよう」

「完全攻略しちゃう?」


 どの程度のモンスターが出てくるかわからない。でも流体モンスターよりは楽な相手だろう。あれは危険すぎる。

 さらに進むことにして室内に二つある扉の内、一つを押し開け部屋に入るも何も無し。ただ室内に扉が複数あり各々から反応はあるようだ。待ち受けるモンスターが多数居る。


「どこに入るの?」

「正面」

「少し強い反応があるよ」

「だから」


 恐怖心を抱かせる反応ではない。敵わない相手ではないってことだ。

 扉を押し開けると強い反応を示す存在は、六体の人型モンスターだった。人の形は取っていても人形みたいな感じで、顔はなく簡単な防具を纏っている。役割分担があるのだろうか、剣と盾を持つ存在が二体、杖を持つ存在が二体、斧を持つ存在が一体と弓を持つ存在が一体。

 剣士と魔法使いと戦士に射手だろう。


「冒険者みたい」

「真似てるのかもね」

「来るよ」


 先制するのは魔法攻撃で炎と氷の矢が飛んでくる。いちいち魔法名を唱えることはないのか。杖の先端を向けると魔法が発動されるようだ。

 魔法攻撃をエルドクロットで相殺すると、剣士と戦士が駆け出し攻撃してくる。囲まれたら終わりそうだし、バックステップで幾らか距離を取り、雷魔法のジーベンスを使いまずは戦士を倒す。斧を振り回されると危ない。

 矢が飛んでくるから躱し剣士の一体と対峙。


「ちょっと戦いづらい」

「魔法なら楽勝だよ」

「剣に慣れたいから魔法は極力、うわっ!」


 フレージアと会話をする余裕はあまりない。攻撃が掠め剣士と応戦していると、魔法が飛んできて当たりそうになる。躱すと別の剣士が攻撃をしてきて、受け流すと矢が飛んでくる。

 一体を相手にするのと異なり多数はしんどい。レベル差があるから何とかなってるだけだ。


「手伝う?」

「要らない」


 フレージアが苦戦する様を見て手助けしたいようだけどね。ここで助けてもらうと成長が望めないから。

 剣士が二体居ると戦いづらいから、的を一体に絞り剣のリーチを生かし突く。

 しっかり突き刺さって剣を落としたようだ。そのまま倒してと思った瞬間、もう一体の剣士が上段から剣を振り下ろしてくる。

 連携も取れてる。魔法も飛んでくるし矢も飛んでくるし。


「苦戦してるね」


 魔法攻撃が当たる。矢も掠る。

 剣を落とした剣士は剣を拾い攻撃に参加してくるし。敵の動きの良さ。対して僕の動きはあまり芳しくない。

 それでも剣士の足を横薙ぎで斬り捨てると倒れた。これで攻撃の手が緩む。

 もう一体の剣士は腕目掛け刺突を繰り返し剣を落とした。隙を突いて射手に向かうけど逃げるんだ。


「逃げた」

「何かモンスターらしからぬ感じだ」


 ダッシュして逃げる射手を背中から斬り捨てる。魔法が掠めるけど、ほぼダメージはない。魔法使いに向かって突進すると、魔法を連発して放つ魔法使いだ。


「エルドクロット!」


 速射性能は僕の方が上のようで、弾幕を張りながら接近し二体の魔法使いを薙ぐ。

 あっさり事切れたようだ。

 残るは剣を落とした剣士と足を斬り捨てた剣士。


「僕の勝ちだ」


 それぞれの体に剣を突き立て動かなくなるのを確認。

 六体居た人形は全て消え去り魔結晶を残した。


「成長できた?」

「わからない」

「ヒロト、魔法はすごいけど剣は下手だね」

「仕方ないと思う」


 レベル相応じゃないのはわかってるし。魔法主体での戦闘を繰り返したから、剣士としてはレベルの半分にも満たないだろう。

 でも、今のままだと苦戦し続ける可能性がある。流体モンスターのような存在が居た。魔法だけではなく多彩な戦闘が熟せないと、どこかで行き詰るだろうし行き詰った。

 本来は仲間と共に、なんだろうけどレベル差が広がりすぎてる。一緒の行動は現状難しい。

 古城や神殿は可能でも流体モンスターの相手は無理。


「まだ進むの?」

「もう少し」


 と言うことで三つある扉の内の一つを押し開け進む。


「廊下だね」

「長いなあ」


 歩いて進むと時間の無駄。

 走って廊下の突き当りにある扉を目指す。


「居るよ!」


 フレージアが指し示すのは壁。

 壁から流れ出てくるように出現する液状のモンスターだ。これに剣は通じないだろうなあ。


「ジーベンス!」


 雷魔法で対処。瞬時に事切れるようで、ただの水のように流れ消えた。

 この古城では魔法なら楽な相手しか居ない。レベル六十が攻略する場所じゃないんだろうな。

 そして廊下の突き当りまで着くと異様な反応が漏れ出てる。


「すごいのが居るみたい」

「もしかしてラスボスかな」

「倒せそう?」

「そこまで脅威を感じないから」


 扉に手を掛け押し開けると広い室内の奥に鎮座する存在が一体。その両脇に二体の人形が居る。

 中央の玉座であろう椅子に腰掛ける存在は、まさにラスボスと言った雰囲気だ。ゲームっぽいなあ。巨大な剣を持ち全身を黒い鎧が覆ってる。

 両脇に控える人形はローブを身に纏い杖を持ってる。魔法を使うんだろう。


「どうするの?」

「魔法を使う奴は魔法で倒す」


 ボスは剣で試してみたい。


「フロギフィエリン」


 両脇の人形に向け蛙化の魔法を放つと、靄に包まれ晴れるとしっかり蛙になっていた。効果があるのはわかってたからね。レベル差を覆すのは無理だろうから。

 中央に鎮座していたラスボスが立ち上がり、剣を構え突進してくる。

 上段から振り下ろされる大剣。それを剣で受けるなんてことはしない。避けると床に大剣が叩きつけられ衝撃音が鳴り響く。


 剣を横に構え薙ぐけど床に刺さった剣で防ぐし。

 金属音が響き剣を引きバックステップで距離を取る。ラスボスも僕も剣を構え直し再び互いに突進した。

 突き出される大剣。避けて躱し懐に潜り込むようにして刺突。呻き声をあげるラスボスが居る。


「やった?」


 フレージア、それフラグ。

 大剣から手を離すラスボスの拳が僕の体にめり込んだ。重い一撃を食らい体が飛ばされる。


「あ、ヒロト!」


 三メートルくらい飛ばされたみたいだ。床と壁と天井が視界を巡ってたし。

 食事は不要な体だけど呼吸は必要なようで。苦しさで呼吸が暫しまともにできず。その隙に大剣を手にしたラスボスが迫る。

 上段から振り下ろされるけど、転がって躱し膝を突いて立ち上がり剣を構え直す。


「き、きつい」

「魔法使えばいいのに」


 駆け出すラスボス。迎え撃つ形の僕。

 横薙ぎが迫る中、足の指先に力を籠め床を蹴り剣を突き出し突進。

 体に触れる大剣だったけど懐に入り込んだことで、充分な威力を発揮できず突き出していた僕の剣がラスボスを貫く。

 しかし脇腹に重い感覚があり体を持っていかれそうな。上下に分割されるかと思ったけど。


 ラスボスの動きが止まった。


 剣を引き抜くと前に倒れ込むラスボスだ。

 僕の脇腹に大剣が食い込み気味だった。その大剣が手から離れ床に落ちる。


「ヒロト! 酷い怪我してる」


 フレージアの声で思わず痛みから蹲ってしまった。

 言わないで欲しかった。言われると意識するから。


「でも倒せたんだね」


 まあ消えたし魔結晶が転がってるし。

 痛む脇腹を手で押さえながら立ち上がり、魔結晶を拾いポーチに入れておく。


「戻る?」

「そ、うだね」


 でも帰りはどうなるんだろう。また戦闘を繰り返すとなると厳しいなあ。

 脇腹からの出血も酷いみたいだし、まともな戦闘はできない。魔法で排除しながら帰るしかないか。


「肩貸せれば良かったんだけど」


 フレージアは小さいからね。


「あ、そうだ」

「どうしたの?」

「発生源って」


 探すつもりだったけど無理か。

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