Sid.84 古城でモンスターハント
さっき換金してた冒険者だけど、揃いも揃って僕を見てる。眼光鋭く睨まれてる感じだけど、知らない相手だし恨みを買った覚えもない。
あるとすれば好き勝手しづらくなった。その原因と見てる可能性。だとすれば恨みだよね。この連中にしてみれば原住民を蔑んで、足蹴にして最悪殺害して何が悪い、そう思ってるんだろうし。
やりたい放題ができず苛立ってるんだろう。また仕返しに来るかもしれない。
気を付けておこう。
視線を逸らし気にしない風を装いスタッフに声を掛ける。
「あの、ユズのレベル確認をお願いしたいんですが」
スタッフの一人に声を掛けると「少々お待ちください」と言われ待つ。
ユズも気になったのか僕の腕を引き、目線を合わせるよう腰を屈めさせられ、耳打ちしてきた。
「あの椅子に座ってる冒険者ですけど」
「恨まれてるかもしれないです」
「なんでです?」
「暴れられなくなったからでしょうね」
チラチラ見てるとユズもターゲットにされるよ、と言うと「守ってください」だって。
あの手の連中は視線に敏感に反応する。何せ敵対視してるだろうから。
リコール作業により椅子に腰掛けていた冒険者は、全員が抜け殻となり人形のように変質した。まさにユズが言ってたマネキンってのが相応しい。血の通った生命体ではない。
精神体が抜けると人形みたいになるのか。
そう言えば洞窟で見た死体は人と相違なかった。あっちで見た自分含めた死体は生物のそれだったような。冒険者の皮を剥いだ時も、皮下に血管があって生物のようだったのに、どういうことだろう。
「お待たせしました。レベル確認ですね」
手の空いたスタッフが来てユズに対応する。
LIDを使いユズのレベルを確認すると、十一まで上がっていたようで。
「もうレベル十一ですよ」
「ヒロトさんのお陰です」
「新たに魔法を覚えられますので、ギルドで手続きしてください」
喜ぶユズと呆れた感じで僕を見るスタッフだけど、僕にも確認してはどうかと言ってる。
「ついでですので」
「いえ。弱いモンスター相手で倒してもいないので」
「そうですか」
少しは相手したけど、ほとんどはユズに任せたからね。レベル五十に至ってそう簡単に上がるとは思ってない。
ギルド内に戻るとアイナがガチャを用意していた。
「準備できてます」
「じゃあ早速回してみて」
「良いの出るかなあ」
把手を掴み回すと赤い玉が出て来た。
「火属性ですね」
アイナが言うと手に取り口に放り込むユズだ。そして何の魔法か理解したようで。
「ブランベッグって言う魔法です」
「どんな魔法?」
「火の壁ですね」
火の壁ってことは自分の周囲に火で壁を作るのか。そう聞いてみるけど使わないとわからないそうだ。
まあそうだよね。威力とか効果は使うまで不明。
でもモンスターを近付けさせないなら、守りの弱い魔法使いには都合がいいかも。
「ヒロトさん。仲間に入れてください」
また言い出した。
「えっと」
「彼女と組むんですか?」
「その気はなかったんですが」
掲示板に貼られたメンバー募集の用紙が無駄になる。元よりユズと組む気はなかったから募集させた。
ユズを見ると目を輝かせてるし。ただ一つ懸念事項がある。
「僕と居ると、とばっちりを食らいますよ」
「何を食らうんです?」
「他の冒険者から恨みを買います」
「寄せ付けない強さがあるじゃないですか」
それでも多勢に無勢ってこともある。前回は不意を突かれたのと目晦ましで倒されたし。
「一度やられてるんですよ」
倒せる可能性があると踏めば挑む奴も居るだろう。入念に準備して陥れる奴だって居る可能性はある。
逆恨みされ嫌な思いをしてまで来たいと思うか、だよ。僕はマリッカやアイナが居るから、めげずに来るけど。二人だけは何としても守りたいし。
「さっき見た連中も何かするかもしれません」
「返り討ちです」
ユズに返り討ちにできるだけの実力ないでしょ。まだまだ弱いし。
粘るユズだけど仲間と相談してからとして逃れる。納得してないみたいだけど。
アイナが「入れてあげたらどうです?」なんて言ってる。僕の一存で決める気はない。相談してからと言っておいた。
「ユズさん。そろそろ時間になりますよ」
「ヒロトさんは四時間活動できるんですよね」
「アドバンス・スカラーなんで」
「それにならないと駄目なんですか?」
レベルで二十、スカラーBで四時間枠を取れる。
「レベル二十になれば四時間活動できますよ」
「まだ九もあります」
「まあ頑張ってください」
「ヒロトさんが鍛えてください」
勘弁して。
レベル十一程度で仲間に入れると、他の人のレベル上げが困難になる。僕が引き受けてると僕が足踏み状態。それはまあいいんだけど。元々レベルはみんなより先行してるから。
はあ。レベル二十まで鍛えるしかないのか。しつこそうだし。
「じゃあ二十まで」
「ありがとうございますぅ!」
やれやれ。とんだ荷物を背負い込んでしまった。
あ、もしかして二十になると今度は三十までとか言い出すかも。三十まで到達すれば結局仲間にすることになりそうな。
それを目論んでるのか。まじで厄介な子だった。
ユズがリコールのため待機室へ向かうと、僕は町の外に出ることに。
アイナにどこに行くのか聞かれ古城に、と言うと「瀕死の状態で戻って来ないでください」だそうだ。見るとつらいから。
無理はせず戻ると言っておいた。
町を出る際に「一人か?」とセヴェリさんに聞かれ、少し一人で探索しますと言って町を離れる。
古城まで走れば馬車より早く着くから、ジョギングレベルで走ることに。
三十分も走ると古城に着いた。
なんか久しぶりな感じだけど歩みを進めると、早々に四本足のムカデ擬きと遭遇したけど。
前回は蛙化の魔法で突き進んだ。元はモンスターとは言え、蛙を踏み潰すのも可哀想な気がするし。
「エルドクロット!」
まあそうなるんだろうと思ったけど。あっという間に蜂の巣になり爆散してしまう。秒間二十発は発射されるようで。そのうち、バルカン砲みたいになりそうだ。
どこまで発射速度が上がるのか不明だけど、前に聞いた時は十発程度までなら、なんて言ってた気がする。でも実際には余裕で上回ってるし。
まあいいや。威力が増すなら。新しい魔法覚えないし。
そして進むと六本足で双頭のワニ擬き。前回三匹出てきて即座に蛙にされたからか、今回は十匹の団体さんで迎えてくれる。
これもエルドクロットを見舞ってみる。
結果は無残だ。追尾する秒間二十発の爆炎弾だからね。成す術もなく粉々。
レベル五十だと浅い場所に出てくるモンスターじゃ意味がないな。
腕が六本ある人型モンスター。今回は武装がない。動きは悪くないけど瞬殺。
少し進むと同じタイプの奴が八体出現するけど、数を揃えても一分間で千二百発だよ。逃れる術もなく粉砕され木っ端微塵だ。
四枚羽の鳥モンスターが居る場所に行き、上を見上げると総数三十羽は居るだろうか。けたたましい鳴き声を上げ次々降下してくる。
手を上に向けエルドクロットを発射。対空砲火により爆散しながら落下する破片。
三十程度じゃどうにもならないだろうなあ。百や二百は用意しないと。
この程度じゃレベルは上がらないだろう。
片っ端から虐殺しながら古城内を移動し、気付くと残り時間が十分程度に。
「つい夢中になってた」
今から戻ると三十分は掛かる。古城の近くの町でリコールした方がいいか。
確かテューネスって言う名称だったっけ、古城を出て向かい門の前に辿り着くと、以前見た門衛が居た。
「お久しぶりです」
「古城にでも行ってたか?」
「そうです」
「馬車は、使わないんだよな」




