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Sid.80 麻痺してしまう魔法使い

 木のモンスター、ネブマデンドロを凍結魔法である、フリサンデスピュートで凍らせる。炎系の魔法だとあとが厄介だから。

 しかし、霜が付着するようなエフェクトはあれど、凍った感じはあまりしない。

 何度くらいで冷却してるのか分からないけど、せいぜいマイナス二十度くらいだろうか。凍るまでに時間が掛かり過ぎるだろうし、樹木は種類によってはマイナス二十度に耐えてしまう。急激に冷えれば糖度を上げる間もなく凍るだろうけど。


「あのぉ。凍らないです」


 液体窒素とまでは言わないまでも、せめてマイナス四十度や五十度であれば。


「木には意味がないみたいですね」

「どうします?」


 フリサンデスピュートは穿つこともできるらしいけど、氷の強度が不足してたら穿てるはずもない。マイナス二十度で凍った程度の水分じゃなあ。

 多少動きが鈍りはしたものの、攻撃して来ようとするネブマデンドロだ。

 仕方ない。


「フラムスピュートで」

「他の木が燃えたりしませんか?」

「僕の魔法で防ぎます」

「あるんですね。使える魔法が」


 氷の壁で覆えば延焼は防げるでしょ。以前もそうやって防いだし。

 結果、フラムスピュートで一本ずつ燃やす。序盤ゆえに数は少ないけど、先へ進むと数が増えるからエルドスピュートを使ってもらおう。


 しかし、ここでも誤算が生じた。

 氷の壁の耐久値が上がったこともあり、容易に溶けることも破壊することもできない。

 魔結晶の回収が困難になった。


「ヒロトさん。魔法凄いんですけど」

「言わないでください」

「どうやって回収するんですか」

「考え中です」


 まあ、やるとしたらエルドクロットをぶち込んで、一部を破壊し回収するしかないよね。

 氷壁の一部に爆炎弾をぶち込み破壊。中に手を突っ込み無事回収し先へと急ぐ。

 進むと八本足の蛇頭と遭遇。オクタプレブロだ。威力の低い魔法だと倒されてくれない。

 でもそこは杞憂だった。魔法使いの魔法は木じゃなければ通じたから。

 フリサンデスピュートで穴だらけになるオクタプレブロだった。


「簡単に倒せましたよ」


 僕に向かって笑顔を見せブイサイン。

 さらに奥へと進むとネブマデンドロ祭りだ。十三本のネブマデンドロを燃やし尽くし、氷の壁で延焼を防ぎ爆炎弾で壊して魔結晶の回収。

 意外と手間取ったけど、稼ぎだけなら申し分ないんだよね。


「この先に行くと泉があります」

「泉?」

「空飛ぶクラゲが出るので注意が必要です」

「クラゲって飛ぶんですか?」


 飛ぶ。ファンタジー世界ならでは。


「電気ショックを食らわせてくるので、その前に倒す必要があります」

「え、それって」

「痛いし、痺れますね」

「なんか嫌ですぅ」


 嫌とかじゃない。大量に出現するから稼げる。レベルアップが目的だから今回魔結晶の回収はしない。泉の上に出てきたらモグラ叩きの如く対処してもらう。

 事前に説明し泉に向かい淵に立つ。


「きれいです」


 眺めていると水面が盛り上がりクラゲが出現。


「ひえっ!」

「攻撃してください」

「あ、えっと」

「早くしないと麻痺させられますよ」


 僕に麻痺を解除する魔法はない。ついでにファンタジーに付き物の回復薬もない。

 そう言えば、そんな話は出なかった。都合の良いポーションの類って無いんだろうな。

 もたつく間にしっかり電撃を食らい痺れて動けなくなるユズだ。僕にも攻撃が来るけど低レベルなクラゲの攻撃は効果なし。

 エルドクロットで倒しておく。


「ユズさん。動けますか?」

「う、ん、ん」


 駄目だ。

 まあでも、一度経験したから次は対処できるでしょ。それにしても敵の攻撃に対して脆いなあ、魔法使い。


「じゃあ背負ってあげるので一度戻りましょう」


 目で何かを訴えてるけど抱えて背負い森を抜ける。

 道中遭遇するモンスターの対処は最早片手間だ。華麗なステップで避けて躱して蹴りで倒す。数が多い時は魔法で処理して森を抜け、街道に出ると町へ向かい走ることに。

 門を抜ける際にセヴェリさんが「その子、どうしたんだ?」と聞いてくるから、麻痺して動けなくなってます、と言っておく。


「ヒロトは自力で歩いて帰って来たよな」

「たぶん耐性の問題だと思います」

「そうか。その子は弱いのか」


 教会に向かいマリッカに説明し麻痺を解いてもらう。


「ヒロトさんは顔が歪んでました」

「その程度で済んで良かったと思います」

「ヒロトさんは度々無理をするので」


 まあ、心配かけちゃったし。


「毎回すみませんでした」

「よいのですよ。私の仕事ですので」


 麻痺が解けたユズだけど、僕とマリッカを見て「仲が良いんですね」だって。


「ヒロトさんは顔が緩んでますし、シスターは乙女になってます」


 アイナと接してる時とは違う表情を見せてるそうだ。観察眼に優れるのか、それともわかりやすいのか。まあ後者だとは思うけど。

 僕とマリッカを交互に見て「付き合ってるんですか?」なんて聞いてくる。


「はい。ヒロトさんとは将来を誓い合ってます」


 マリッカは隠す気なし。堂々と公言するから面食らうユズだ。


「あの、付き合っても何もできないですよね」

「問題ありません」

「なんでです? ずっとプラトニック?」

「いいえ。しかるべき時には変化しますので」


 何のことかわからないだろうけど、そこはしっかり説明するマリッカだった。

 僕を見て「エッチできるんですね」だって。この子、なんか関心あり過ぎると思う。

 自分もできるようになるのかとか聞いてるし。

 そうなるとマリッカも神の加護云々から始まり説明しだすし。


「へえぇ、そうなんですね」

「すべては愛の成せる業なのです」


 結局、教会で祈りを捧げるユズだけど、下心満載で祈っても無意味だと思うよ。

 一応寄進もするけどマリッカに「多すぎます」と言われ「じゃあこれでいいですか」なんて言って、小銀貨二枚無理やり握らせてるし。ちょっと困った感じのマリッカもまた愛らしい。

 この子、金持ちなんだろうなあ。いきなり二十万円分ギフトカードを買うくらいだし。金銭感覚の壊れた人とは付き合えないな。


「じゃあ、またあとで来ますので」

「はい、お待ちしております」

「え、デートするんですか?」

「違いますよ」


 したいけど、どうせなら四時間で楽しみたい。残り二時間程度じゃ出掛けても半端だし。

 ちょっとだけ町の外で暴れたら、マリッカに会いに来よう。

 教会を出る際にマリッカが見送ってる。それを見たユズが「ヒロトさんって、こっちではモテるんですね」だって。

 元の僕を知っていればモテるのが不思議だろうな。どこが良くて、と思うだろうし。


 ギルドに戻るとアイナが呼ぶけど、レベル確認を済ませたら、としておいた。

 待機室でレベル確認をすると。


「レベル八になりました!」


 嬉しそうだ。クラゲを倒せなかったから十には至らなかったか。


「新しい魔法を覚えられますよ」

「え、またですか?」

「魔法使いはレベルが二から三で一つ覚えますから」


 つくづく不公平だ。魔法剣士なんて魔法と付いてるのに、覚えられるのはレベル十毎だからね。お陰で全然魔法の種類が増えない。

 今更文句を言っても仕方ないけど、威力は上がり続けるから已む無し。

 ギルド内に移動しアイナにガチャを用意してもらう。


「もう、ですか」

「ヒロトさんのお陰ですぅ」


 じっと僕を見るアイナだけど、ぼそっと「あたしもヒロトさんと一緒なら、少しでも強くなれるんでしょうか」なんて言ってる。たぶん、冒険者に攻撃されたことで、自分に少しでも力があればと思ったんだろう。

 でも連れて行けるわけがない。何もできずに死ぬ。人には適正ってのもあることだろうし。


「じゃあガチャを」

「あ、はい」


 ガチャを回して出て来た玉は緑。

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