Sid.71 仲間が新たな魔法を取得
待機室でフラウとヴィーラのレベルを確認すると、二人揃ってレベルが上がっていたようで。
しかも一気に三も。さすがにスタッフも驚きを隠せないようだ。それでも僕と一緒に居ることで無茶なことをさせたのだろうって。無茶はさせてないし危険な場合は僕が対処してるし。
ただ、僕が居ると出てくる数が増える。そのせいでしょ。
「お二人は新たに魔法を覚えられますが」
そうか。僕と違って覚えられるものが多いんだよね。レベル十毎にしか覚えられない僕。レベルが上昇すれば適宜覚える回復職や召喚士。魔法使いも三から五程度上がれば次々新しい魔法を覚えるようだし。
羨ましいと思う反面、一つの魔法を極めることができる、と言うのもまたメリットかもしれない。
一度ギルド内に戻りガチャをやるようだ。
アイナに声を掛けると「ガチャですか? ヒロトさんが?」と聞いてくる。
「僕じゃなくてフラウさんとヴィーラさん」
二人を見るアイナだけど「じゃあ用意しますね」と言って、屈むとカウンターの下に潜り込んだようだ。暫しごそごそしていると思ったら、ガチャを一つずつカウンターに載せ「こっちが治療士のガチャで、こっちが召喚士のガチャです」と説明する。
二人がガチャを見て「これ緊張するんだよね」なんて言ってるし。
「では運試しと言うことでどうぞ」
アイナに促され把手を回すとフラウには緑の玉が出てきた。ヴィーラは白い玉だ。
「これって」
「飲めば分かりますよ」
「当たりかなあ」
「外れたらがっかりだよね」
言いながら手にした玉を飲み込むと、喜びを隠さないヴィーラが居る。
「当たり!」
「何を得たんです?」
「アストラピだって」
何それ。と思っているとヴィーラによる説明が始まった。
「ヒロトの扱う雷の魔法あるでしょ」
「あります」
「あたしが呼べる精霊も同じ系統」
アストラピと名の付く精霊は電気を司るらしい。これまでの精霊とは毛色の異なる存在で、百発百中の命中精度を誇り高レベルな相手でも、最低限麻痺をもたらし低レベルな相手であれば即死。
極めて強力な精霊なのだと自慢げだ。
電気って物理現象だけど、この世界では精霊が司るものなんだね。まあでも火や風なんてのも物理現象。科学が発展していない世界では、理解の及ばない現象は霊的なものだったり、精霊や妖精の類と考えられていたわけで。
ヴィーラは日本人だから科学に接してるはずだけど。ここではファンタジーに浸かるのがいいんだろう。
「これであたしも主戦力になれるかな」
嬉しそうだ。でもいいの引いたんだね。
フラウは、と思って見ると。
「回復の上位魔法だった」
「それってなんです?」
「オムローデレーカ」
集団を回復できる魔法だそうで。今までは対象は一人。今後は同時に複数人を回復できる。しかも回復量が増していて深い傷も瞬時に治るそうだ。
半径十メートル以内の制限付きではあるそうだけど。
「もう一つあるみたい」
「え、一回に付き一つじゃないんですか?」
「じゃないみたいで」
リュースクロットと言う魔法らしい。ただし戦闘で使えるものでもないし、せいぜいが暗い洞窟内や暗い夜道で使える程度らしい。
「それって」
「光球って意味」
微妙だ。
「持続時間とか」
「一回唱えて三十分みたい」
「明るさは」
「八百ルーメン程度みたい」
六十ワットの電球くらいか。まあ使えなくもないとは思う。拡散したら暗いけど洞窟内を照らす程度なら。
松明が不要になるなら当たり、と考えていいと思う。
どうせなら攻撃力アップとかあれば、なんて思ったりもする。都合が良過ぎるけど。
と言うことで新たに魔法を覚えた二人だ。
ギルドをあとにしリコール。日本に戻った。
施設内で合流し最寄り駅まで一緒に向かうけど、ヴィーラは「ヒロトだけに活躍させずに済むかもね」と言ってる。片っ端からモンスターを薙ぎ倒し、どんどん強くなるよ、なんて言ってるし。
駅でヴィーラと別れフラウとはホームで電車待ち。
「ヒロト君」
「なんですか?」
「向こうの生活って不便なのかな」
不便? 分からないけど、アイナの家は照明があって明るさは充分だった。
風呂やトイレとか食事事情は分からない。娯楽の類もそう言えば分かってないな。移動は馬車だから現代と比較して時間は掛かる。鉄道があるのかどうかも不明。たぶん無いとは思うけど。
何よりネット環境は存在しない。きっと退屈する日々になるんだろう。
「僕もよく分かってません」
「今度、受付嬢に聞いてみてくれる?」
「いいですけど、自分で」
「もののついで」
電車が来ると乗り込み少しして話し掛けてきた。
「スマホ、無いんだよね」
「え」
「向こうの世界って」
「あ、ああ、そうですね」
退屈しそうだ、なんて言ってる。
えっと、退屈とか向こうの世界を気にしてるってことは、もしかして。
「フラウさん。もしかして向こうで生活したいとか」
「まあ、なんかそうね」
「でも可能なんですか?」
神の寵愛を受けないと向こうで生きるための体は得られない。マリッカはそう言っていたしアイナも知ってるようだった。
ただ、気になったのは一部冒険者の言葉。戻れなくてもいいと。
フラウを見ると目が合う。
「裏技? みたいなのがあるんだって」
「え、なんですか、それ」
「今度話すね。今はまだ確証を得てないから」
いろいろ調べたり冒険者の言葉から推測するに、何かしら手段が無いわけじゃないかもしれないと。
今はまだ分からないことの方が多く、もう少し調べたら相談するそうだ。
寵愛以外に手段ってあるのかなあ。ただの噂とかデマとかありそうだけど。だって、向こうの神が受け入れない存在なのに、体を得て現地で生きていけるって不自然。
「あの、なんで向こうで生活したいって」
「あ、それも今度話すから」
半端な感じだけど自分の下車駅に到着したことで別れた。車窓から手を振るフラウだけど、なんか少し寂し気な感じだった。
ここでの生活が上手く行ってないのかな。仕事での悩みとかあるんだろうし。そもそも一人暮らしなのか家族と一緒なのか、それすらも知らない。プライベートまで明かしてるわけじゃないし。
聞き出そうとするより、自ら話してくれるまで待つのが良さそうだ。
三日後。
フラウやヴィーラは居ない。単身僕だけ異世界に向かう。
待機室でスタッフにあいさつしギルドに入ると、アイナの弾ける笑顔が眩しいなあ。
「あ、来てくれたんですね」
「まあ」
「少し待っててください」
嬉しそうに何やら作業するアイナだけど、休憩時間にアイナとデートの約束だし。マリッカはまた別の日にってことで。同じ日に掛け持ちは駄目だとフラウに言われたからね。まあ常識で考えても不誠実だろうし。でも二股の段階で論外な気も。
あ、そうだ。
「あの、仲間を募集したいんで」
「ヒロトさんなら不要じゃないんですか?」
そうだけど、僕以外には必要だと思うから。
「他の仲間には必要なんで」
「そうですか。まあ居た方がいいんでしょうけど」
当座預金から掲示板使用料と用紙代を支払い用紙を受け取る。
「どんな人を募集するんですか?」
「えっと魔法使いと剣士がいいかな」
「どっちもヒロトさんが賄えますよ」
「僕が居なくても問題無いように」
レベル三十以上の魔法使いと、レベル三十以上の剣士、または戦士を募集。
受付嬢に話を通してもらい面談日時を設定。面談をして双方が合意をすれば採用とした。
「レベル三十だとフリーの人って居ないですよ」
「え、そうなんですか?」
「ソロで行動してるのなんてヒロトさんくらいです」
だから募集するのであればグループ丸ごとになるそうだ。
グループ同士の合流になると。




