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Sid.5 危険な森に入り負傷した

 何かしらアイテムを落とすモンスターは、たぶんだけど強い奴に限られそうな。

 雑魚をいくら倒しても何ら得るものはない、と言えそうだ。初心者の練習相手程度にはなっても、それ以上ではないと言える。

 さっさと森林や峡谷のような場所に行った方がいいんだろう。でもソロで行けば死ぬ、となれば。


「意外と面倒」


 未舗装の街道を歩き進むけど、時折轍に足を取られそうになる。


「もう少し丁寧に均せないのかなあ」


 それか石畳にするとか。あ、でもあれか、石畳を敷くとなると人手と金がかかる。それでも主要街道くらい、と思わなくもないな。路上に凹凸が多いと馬車で移動してたら、相当揺れるだろうし場合によっては倒れるでしょ。速度も出せないだろうからね。

 元の世界と比較すると文明レベルは相当低いな。良くて西洋のルネサンス期くらいか。食事が不要なのは少し残念ではあるけど、トイレが不要なのは助かる。


 しばし歩き続けるもモンスターと一切遭遇しない。一度馬車が僕を追い越して行ったくらいで。

 人の往来も頻繁にあるわけじゃないようだし。モンスターも町周辺だと数は少ないのか。

 何の当てもなく彷徨っていても時間の無駄だし。

 街道の右手に見える森。あの場所ならアイテムを落とすモンスターが居そうだけど。でも一人で入ればアバターを失う可能性が高い。まあ言ってもレベル一だし。下方修正のペナルティはあっても下がりようがないからね。

 入ってみるか。街道を歩いていても埒が明かないし。


 進路を変更し草むらを掻き分け森に向かう。

 森と草原の境界に立つ。目の前には鬱蒼と茂る木々があり、奥へ行くほど薄暗くなっている。

 あまり深入りしても戻るのが困難になりかねない。草原が見えるくらいの場所を探索しよう。

 森に足を踏み入れると空気感が異なる。確かに何かが潜んでいそうな。

 足元に注意しながらゆっくり進み、周囲を注意深く見回す。


「気配らしきものはあるんだけどなあ」


 目を凝らし見てみるも視界には太い木の幹、上は生い茂った枝葉。少々の木漏れ日が差す程度。

 足元は下草が少々と張り巡らされた木の根。歩く上で邪魔になる。

 一応注意はしていたけど、後頭部に衝撃が来て、視界が歪み前のめりに倒れてしまった。


「な、何?」


 ガサガサと音を立て移動する何か。上から聞こえるということは、枝を伝って移動する何かだ。

 猿?

 顔を上げ注意深く見てみると、時折、枝の間を移動する何かが見えた。

 あれが僕を襲った奴だ。

 起き上がれば攻撃してくる可能性はある。だからと言って伏せっていられない。意を決して起き上がると後方から近付く気配。

 振り向くと向かって来る獣が一匹。咄嗟に腕でガードするけど勢いがあり、後方に仰け反ってしまう。


「くっそ」


 たたらを踏んで倒れそうになるけど持ち堪え、剣を抜き肩越しに構え腰を落とし周囲を見回す。

 どこだ?

 どこから来る?


 ガサっと音がした。後ろだ。

 右足を引き左足を前に体を音のする方向へ。


「そこだ!」


 勢い剣を突き出すとざっくり突き刺さる獣。同時に手には抵抗感が伝わってくる。

 剣に突き刺さるそれは重く大きさは一メートルくらいか。支えるには重い存在のせいで剣先が地面を向き、刺さっていた獲物が何か分かった。


「凶悪な顔してる」


 人の姿に近いには近いけど、大きな目は見開かれ鼻は小さく、口は左右に広がり何本もの牙が生えてる。皺だらけで実に醜い風貌だ。

 腕は長く脚は短い。全身茶色の毛で覆われた得体のしれない何か。

 死んだのかと思ったら身じろぎして、刺さった剣から抜け出そうとしてる。


「まだ生きてるのか……エルドクロット」


 火の玉を飛ばすのではなく、剣先から燃え上がる感じをイメージ。

 きちんと魔法が発動したようで、炎に包まれた何かだ。暫くはもがくも動きが止まったと同時に炎が収まり、地面に吸い込まれるように消えて行った。


「あ」


 そして待望のドロップ品。

 キラッと光る何かを手に取ると一円玉サイズの赤い宝石のような。


「これ、ルビーとか?」


 モンスターが鉱石を落とすのか、と思うも、鉱石ではない何かかもしれない。まあギルドに持って行けば判明するんだろう。

 腰に提げたポーチに入れておく。


 戻ろう。

 今回は大きなダメージを食らうことなく、何とか対処できたけど、これが複数襲って来たら間違いなく死ぬ。

 引き返すべく森の出口に向かうと、またも後頭部に衝撃が来て前に倒れ込んでしまった。

 同じ奴だ。後ろから攻撃してくる卑怯者。

 立ち上がるべく体を起こすけど、攻撃パターンは分かってる。必ず後頭部に狙いを定めて突進してくるから。

 剣の切っ先を後ろに向け肩に構える。立ち上がらず地べたに座ったまま、迎え撃つ態勢を取っていると。


「来た!」


 ザクっと突き刺さる感覚があり、すかさず魔法を唱えると断末魔の悲鳴が聞こえた。甲高く耳障りな声だなあ。

 少しして剣先が軽くなったことで、消滅したと判断し振り向いて、地面を見ると光る石が転がっている。

 拾い上げると今度は緑色の五円玉くらいの石。エメラルドじゃないよな。そうかもしれないけど。判断はギルド任せということでポーチに。


 立ち上がり周囲を確認。

 微かな音も聞き逃さないよう集中し耳をそばだてる。


「居ない」


 近付く気配も音もないから移動し森を出た。

 街道を歩いていると、なんか、頭に濡れた感覚がある。風が吹き抜けることで気付いたけど。

 後頭部に手をやるとヌルっとした感触。手を見ると血がべったりだ。負傷してることに気付けなかったのか。この体って、痛みに鈍感なの?

 でもゴーレムに殴られた時は痛かったし。

 怪我をしていると分かった途端にズキズキ痛んで来るし。なんなのこれ。


 怪我をしてる場合、治療ってどうするのか。

 ギルドで金を払って治してもらうと金掛かりそうだけど。


 少しふらつきながらも町が近付くと、ガサガサ音がして草が揺れ動く。向かって右側に潜む何か。

 視線を向けると同時に飛び出す、ああ、スライムだ。剣を振っても当たらないから剣先を向け魔法を唱えると弾け飛んだ。

 さらに続けて三匹出てきて、同時に向かって来るなっての。対処できないだろ。


「エルドクロット!」


 連射すると二発外したけど四発は命中し、三匹とも弾け飛んだようだ。

 ドロップは無いだろうから歩みを進め、ようやく町の入り口に辿り着く。

 城壁の上を見ると哨兵だろう、こっちを見てるから手を振ると、何やら指示をしたようで重そうな扉が開く。


 扉を抜けると出る際に話をした門衛が居た。


「戻って来たか」

「あ、はい」

「お前、怪我してるぞ」

「そうみたいです」


 平気なのかと聞かれ痛むと言うと「教会にシスターが居る。寄付すれば治療してくれるぞ」と教えてくれる。


「寄付って幾らくらいですか?」

「気持ちの問題だ。額は問わない」


 教会では貧しい庶民のために無償で治療をするらしいが、冒険者は稼ぎがあると言うことで寄付を募るそうだ。

 ちなみに冒険者ギルドで治療をすると十二スレブロかかるらしい。十二スレブロってのは小銀貨十二枚。一スレブロは日本円換算で四百円くらい。小銀貨の上に大銀貨があり単位はベリキ。一ベリキで二十スレブロとなり八千円相当。

 銅貨もあるけど使うのは庶民だけらしい。それでも収入の低い庶民には必要な貨幣だ。バーカルが単位で一スレブロが二十バーカル。一バーカル二十円だな。

 さらに金貨もあるけど現時点で縁は無いな。いずれ手にすることもあるかもしれない。

 因みに手持ちの貨幣は無い。換金できそうな石を入手できたから、それを換金して教会で治療してもらおう。


「教会の場所って」

「ギルドの傍に見える白い塔だ」

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