表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

Sid.4 冒険者は嫌われ者らしい

 翌日の予約はすでに一杯になっていて、二日後の予約になってしまった。

 日が空くことで異世界について少し予習をすることに。何も知らないことからネットを漁りプレイヤーたちの報告を見る。

 多くは誰かと組んで冒険しているようだ。やっぱりソロは極めて少ない。

 僕も誰かを探さないと厳しいんだろうな。剣は下手くそで魔法は低威力。とても異世界で活動できる感じじゃない。


 でも記事によってはソロでも町周辺であれば活動可能だと。

 森や山、谷なんかもあるけど、その手の場所には強敵が潜んでいる。単身向かえば死にに行くのと同じだと。またダンジョンもあって四人以上で挑まないと、確実に倒されてしまうらしい。時間も掛かるから、あらかじめ四時間の最大枠を取るべきとも。

 ダンジョンかあ。いつかは行ってみたい。

 仲間が見つかるまでは当面、町の周辺をうろうろするしかないか。


 異世界へ渡る当日。

 時間は前回と同じく午後二時から。出掛ける準備をしていると母さんが「出掛けるの?」と聞いてくる。頷くと「帰りに卵と牛乳買ってきて」と、お使いまで頼まれてしまった。

 自分で行く気は無いのか。専業主婦だよ、今どき。僕に手が掛からなくなって、時間的余裕はありそうだけどな。


 外に出てアーススパイアホールまで向かう。

 今日は天気がいい。春らしい陽気で風が強めだけどね。

 施設に着くと前回同様にブリーフィングルームへ。二回目の人は主に質問を受け付ける。

 事前に予習してるから質問は特にないな。


 個室に案内され前回同様手足に電極、頭にヘッドギアを装着されると異世界へ。


 見覚えのある顔が視界に入った。


「こんにちは。今日から冒険しますか?」


 頷くと「先に準備運動した方が良いですよ」と言われ、体と精神を馴染ませるべくストレッチをする。

 馴染むと「質問はありませんか」と聞いてくるけど、まだ外に出てないから分からない。とりあえず一度町の外をうろついて、疑問が生じたら聞くとしておいた。


「では、充実した冒険を」


 ギルドで見送られ街中へ移動し、町の外に出るべく進むと、頑丈そうな門と城壁がある。

 門の前には門衛らしき存在が二人居て、近付くと「見ない顔だな。新人冒険者か?」と問われた。頷くと「お前ら気楽だよな」だの「死なないんだろ」と。

 確かに元の体は早々死ぬことはない。アバターが死んでも復活はできるし。でも死ぬ際の苦しみはたぶんあるんだろう。

 死ぬ気で来たわけじゃない、と言うと「こっちはいつでも真剣勝負なんだがな」と、ゲーム感覚で訪れる地球人に辟易した感じだ。


「何かあったんですか?」


 辟易するのも理由があってのことだろう。疑問を生じたから聞いてみると。


「この町じゃないけどな、他所の町だとお前らみたいなのが暴れて」


 町の住人を殺害したらしい。諍いが生じた末に住人を殺害し、結果、そいつらは来なくなった。この世界の法では裁けないが、元の世界では何か罪に問われないのかと。

 聞いたことはないな。


「いえ。知らないです」

「お咎めなしかよ」

「だから気楽に人を殺せるんだよ」


 迷惑千万。本心では来て欲しくないらしい。それでもこの国と管理者間で条約が結ばれてる。資源となるモンスターのドロップ品を納品し、国の発展や安全性に寄与する代わりに冒険者を受け入れることを。

 冒険者の責務として脅威となるモンスターの排除。

 少々町の治安は悪化しても、町から町への移動のリスクは減少する。多少のことは目を瞑ってもらうことになっているそうだ。


 そんなの説明されなかった。

 僕らはゲーム感覚で訪れる。

 でも僕らの自由を担保するための条件はあったんだ。


「なんかすみません」

「まあ、新人冒険者に言っても仕方ないけどな」

「腹立ったからって殺すなよ」

「あ、はい」


 自分たちは異世界から来た人と違い、特殊な能力を得ていないし弱いのだと。

 守るべき存在だと言うこと忘れるな、だそうだ。住人を守る代わりに自由が保障される。そこを理解しない冒険者が多い。腹立たしい、と怒っていた。


「じゃあ通っていいぞ」

「どのくらいで戻るんだ?」

「えっと、一時間くらい」

「まあ、新人じゃその程度だな」


 因みに、この世界の住人に僕らを助ける義理は無いそうだ。原則放置。外で死んだところで精神は元の世界に戻るからだ。助けに向かい現地人が死んでは意味がない。

 自己責任だから誰も救助に向かわないぞ、と言われ送り出された。


 殺害か。ゲームだと思ってるんだろうな。この世界の人は生きていると理解しない。ゲームのNPCくらいに思ってそうだ。

 でも生きていて生活を営んでいる。命を持った人だと理解しないと。


 外に出ると門が閉じられる。

 振り向くと城壁の上に見張りが二人居るようだ。こっちを見てる。手を振ってみたり。

 いや、やめておこう。バカにしてるのかと思われそうだし。


 門に繋がる未舗装だけど均された地面。これが他の町へ向かう街道なんだろう。轍があることで馬車とか何かしら移動手段はありそうだ。

 周囲を草原が取り囲む未舗装の街道を歩き、暫く進むと草がざわめき何かが近付いてくる。

 モンスターかも。

 不定形軟体モンスターなら今の僕でも倒せるのか。


 草を掻き分け飛び出し向かって来る存在が居た。

 咄嗟に剣を抜いて構えるけど、視界に収める頃には僕に体当たりされる。相当な勢いがあるのか僕が弱すぎるのか、押し倒され一瞬だけど呼吸もできず。

 仰向けに倒れると上から落ちてくる何か。いや、スライムみたいな奴だ。

 最弱モンスターに追い込まれる冒険者って。


「くっそ」


 落ちてくるスライムを躱し起き上がると、剣先を向け魔法を発動させる。

 ポンって感じで火の玉が飛んで行くけど、向かって来た相手に直撃し弾け飛んだようだ。


「倒せた?」


 どうやら倒せたようで。飛び散った液体が地面に染み込んでいく。

 何かドロップしたのかと思って見るけど。


「何にもない」


 必ずドロップするわけじゃないのか。

 ため息を吐き体勢を立て直し再び歩く。この道がどこに向かうのか分からないけど、町の城壁が見える範囲をうろつくことに。

 あんまり離れて凶悪な奴と遭遇したら命取りだし。


 進むとまたも草がざわめき、今度は二匹のスライムが出現した。

 もう慌てない。剣で攻撃しようにも、扱いに慣れないことで空振りする。最初から魔法で倒せばいい。何発でも放てるならね。

 エルドクロットを連発すると二匹とも爆ぜたようだ。

 ドロップ品は無し。


 こんなの相手にしてても稼げないか。それでも慣れるにはいいのか。

 ほんの少し強い相手なら、何か落とすかもしれないけど。


 またも進むと右手に森が見える。あそこには強いモンスターが潜んでたり。今の僕だと瞬殺されるかもね。仲間も居ないし何かあっても助けも呼べない。

 レベル一でリスクを負う必要はないな。

 森を横目に街道を進むと、またも遭遇する。


「今度は何?」


 勢い付けて走って向かって来るのは、手に棍棒を持った猿のような存在だ。奇声を上げてるし。しかも三体も居る。

 殴られる前に魔法で牽制して怯ませるしかない。


「エルドクロット!」


 秒間二発の火の玉が向かって来るエテ公に当たった。バカだ。勢い付けてくるから、自ら火の玉に当たりに行くようなもので。

 知能は低いと判断できる。一匹に三発くらい当たって、先頭に居た奴は計四発食らって弾け飛んだようだ。残った奴もよろよろと歩く感じに。

 駆け寄って剣を一振りすると、しっかり斬られてくれて倒れると、地面に沈み込むように消えた。棍棒も消えるし。何も残らないのかよ。

 思わず盛大なため息が漏れるし。


「ドロップ品って雑魚じゃ出て来ないのか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ