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Sid.65 やっぱり魔法は創意工夫

 六本の腕に各々武装。でもコケ脅しだった。

 試しに剣で戦闘を試みると六個の武装が仇になり、僕の細かい動作に追随できず自分のバックラーを自分の剣で叩く有様。きっと素手で戦った方が強いでしょ。

 なまじ武器や防具を持つから上手く行かない。

 それでも僕の剣は初心者が使う安価な剣だ。戦闘中に折れてしまい結局蛙にして倒す。

 剣が簡単に折れるってことは僕の能力に対応できてない。レベル五十にはレベル五十に見合う武器があるんだろう。高そうだけど。


 とりあえずモンスターの武器を拾う。消えなかったから。

 体は消えるのに装備が残るのって、少し不思議な感じがすると思い、よくよく短剣を観察すると「Barney」とグリップに刻印が入ってた。もう一つある短剣も拾うと同様に名が入ってる。ついでにバックラーや棍も見てみると、各々別人の名が刻まれていた。

 もしかして冒険者の装備だったのかな。モンスターが名入りの武器を持つわけ無いし。きっと六本腕に倒されたんだろう。つまり素手の方が強い。武器を持って弱体化したってことで。

 物は悪くなさそうだから当面の武器として使うことに。


 朽ちた城内を進むと広間に出た。床は瓦礫の山。上を見上げると天井が落ちたようで空が見えた。

 瓦礫のせいで足場が悪い。ここで近接戦闘は嫌だな。

 上から何かの鳴き声がして見上げると、鳥かと思ったけど巨大だし翼が四枚ある。けたたましい鳴き声を上げ急降下してきた。


 足場が悪いから魔法で撃ち落とそう。そう思ったけど、新たな魔法に足場を組むってのがあった。


「ビッガステルニナ」


 唱えると瓦礫の上に半透明の細く平らな足場が出現した。

 長さは十メートルくらいで幅は六十センチ程度。とりあえず乗って駆けてみるけど、極めて薄そうなのに頑丈そうで撓むこともない。

 でも、あんまり意味はないなあ。

 接近する鳥にジーベンスを使うと落下し瓦礫に激突。少しして消えた。雷と落下の衝撃で死んだんだろう。


「ビッガステルニナ」


 鳥の落下地点まで足場を作り、魔結晶を拾いポーチに仕舞っておく。

 全然危険じゃないし、ここまで楽勝すぎる。

 ボスみたいなモンスターって居るのかな。


 足場の魔法は凡そ二分で消えるようだ。二分だと川幅のある河川では使えないな。湖とかも無理だ。途中で消えて落ちる。谷を渡るのも無理そうだし。使いどころが難しい魔法かも。


 広間をあとにし周囲を探る間にも、モンスターと遭遇し次々蛙にして倒す。

 蛙化の魔法は意外と使える。ここまで百パーセントの成功率。敵が弱過ぎるってのもあるんだろうけど。これ、人に使ったらどうなるんだろう。PKを楽しむような連中で試すのはありかもしれない。

 効果の有無だけでも確認しておきたい、なんて思う僕もすっかり物騒な思考の持ち主になった。


 出現するモンスターが激弱ってこともあり、足場の魔法もいろいろ試してみることに。


 水平方向への移動だけじゃなく、空中に階段状に発生させられないか。

 上下にも自在に発生させられれば立体軌道が可能になる。コミックで見た結界師が使うようなあの感じ。足場を作り駆け上がり戦闘を熟す。

 試す。

 魔法はイメージだ。どんな形にしたいか考えていれば、それに応じた変化をして見せる。だったら可能かもしれない。


「ビッガステルニナ」


 唱えると空中に階段が出現した。僅か十段ほどではあれ半透明の階段が目の前にある。

 二分しか持たないから駆け上がり降りてみた。


「問題無し」


 あとはこれを組み合わせれば空中戦も可能かも。

 と言うことで時々現れるモンスターを相手にしながら、足場の魔法をいろいろ試すと落ちそうになることも。


「落ちると危ないな」


 落下した先に受け止める足場を作れれば。

 それも試す。階段を駆け上がり飛び降りて足場を発生させる。


「できた」


 今は戦闘中じゃないから考える時間はある。戦闘中となると咄嗟のことだから、少しの慣れは必要だとは思う。まあ練習次第で使えそうな気がしてきた。

 ちょっと気分が良くなる。足場の魔法って使い方次第だ。上手に使い熟せば空中戦もできるし対地攻撃もできる。


 実践したい。

 と言うことで城内をうろうろし広間に戻り鳥が来るのを期待。

 期待通り現れる鳥だ。降下してくる鳥目掛け階段を作り、それを何度か繰り返し水平方向にも発生させ、立体軌道を可能な状態にした上で蹴り落とす。

 上手くヒットし鳥が地面に落下。藻掻いてる間にエルドクロットを見舞うと爆散した。


 作った先から消える足場だけど、消えたら発生させれば問題無い。

 下りて魔結晶を回収し広間をあとにする。


 戦闘時は驚く程に体が軽く感じる。疲れも無いし機敏な動きを幾らでもできる。

 同時にモンスターの動きも遅く感じるし。遅く感じるから対処がしやすい。

 レベルの大幅な上昇で戦闘が楽になり過ぎた。もう少し強い相手じゃないと手応えすら感じさせない。


 一度町に戻ることに。

 気付くと二時間はうろうろしてたみたいで。

 町に着き門衛に入町税を払うと「ちゃんと払うし支払ったんだな」なんて言ってた。少しだけ見る目が変わったかな。

 ギルドに行き中に入ると先客が居るようだ。でも揉めてる感じがする。少し離れて様子を窺うことに。


「冒険者舐めてんのか?」

「これじゃ安すぎるって言ってんだよ」

「苦労して取って来たんだからな」

「もう少し色を付けていいんじゃねえのか」


 ああ、なるほど。値切るのはよくあるけど、高く買い取らせようとするのが冒険者なんだ。

 でもスタッフが出てくれば事を収められそうなのに。なんで出てこないんだろう。

 と思っていたらカウンター奥の扉が開き、スタッフが出てきたようだ。


「揉め事は起こさないようにしてください」


 さらに魔結晶の買い取り価格はモンスターによって、適切に定められたものだから上乗せなどは無い、と言って納得しないのであれば買い取りしない、だそうだ。

 さすがにスタッフが出てくると、おとなしくなったのか「じゃあそれでいい」となった。

 本当に態度の悪い冒険者ばっかりだな。如何に住人を下に見てるかよく分かる。


 引き下がり向かってくる冒険者だけど、僕を見て「ちっ。初心者の癖に邪魔だ」と言って、僕にぶつかってくるんだけど。


「おわっ」


 逆に弾き飛ばされる冒険者だ。僕は見た目と違って高レベルだから、低レベルな冒険者だと壁にぶつかるようなものでしょ。

 床に転がり僕を見てる。周囲の連中も不思議そうだ。

 カウンターから受付嬢が「初期装備なのにレベル五十の冒険者さん。用件をどうぞ」なんて言ってきた。

 その声に驚く連中が居て「くっそ、そんな格好してんなよ」と口にし、背中を丸めギルドを出て行ったようだ。さすがに争う気はないようで。


 カウンターに向かい受付嬢に「すみません。ありがとうございます」と言うと目を丸くしてる。

 あのまま相手が僕の力量を知らずに突っかかってくれば、あの連中が大怪我するところだっただろう。ゆえのお礼だけど。


「何かおかしなこと言いました?」

「あ、いえ。お礼を言う冒険者なんて居なかったので」


 だよね。

 魔結晶をカウンターに並べると「どれだけ相手にしてきたんですか?」と驚かれた。

 でも高レベルな冒険者だから、この成果も当然なのかと納得したような。


「危険ではありませんでしたか?」

「楽勝でした」

「楽勝……」


 そう言いながら貨幣を用意する受付嬢が居る。時々ちらちら僕を見るんだよね。

 トレーに報酬を載せ「どうぞ」と言って差し出してくる。

 多いなあ。嵩張るんだよねえ。


「あの、預けられないですか?」

「え、あ、口座はお持ちですか?」

「無いので作ります」


 預けることに。

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