Sid.64 初めて異なる町に訪れた
乗合馬車の御者だろうか、乗るよう促されたけど乗客居るでしょ。
首を横に振ると「遠慮してるのか」と言われ、他の乗客が嫌がるので遠慮しますと伝えた。冒険者となんて一緒に居たくないだろうし。多少は僕の噂も広まりはしても、まだまだ町の人に周知されてるわけじゃない。一部の話しだ。
「そうか」
軽いため息を吐き馬車内を見る御者だ。乗客の反応を探ってるのだろう。またもため息を吐き「確かに嫌がりはするけどなあ」だそうで。
よく見ると御者の隣に二人ばかり同乗する存在が居る。武装してることで冒険者かと思ったけど。
僕が見てるのに気付いたようだ。
「ああ、こいつらは護衛だ」
「護衛って冒険者じゃないんですか?」
「衛兵と同じだ」
訓練された町の住人で冒険者ほどではないが、街道に現れるモンスター程度は対処可能らしい。
それでも冒険者の方が安全性が増す。しかし乗客が嫌がる。リスクは高くなるも護衛を乗せるしかないそうだ。本来であれば冒険者が適任らしいけど。
「あの、時間が勿体無いですよ」
「まあそうなんだが」
やれやれって感じで「遠慮しなくていいんだがな」と言って、手綱を引き馬を走らせると「今度は乗って行けばいい」と言い残し移動した。
乗るのは町の住人から信頼を得てからだよ。今は無理でしょ。どれだけ嫌われてるか身に染みて理解してる。僕を受け入れてくれてるのは両手で数えられる程度。
過ぎ行く馬車を見送り歩き始める。
軽装だから一時間も歩けば五キロくらい移動できそうだ。初期装備の剣を一本と初期の服だし。ポーチの中は空っぽ。
早歩きで移動していると遭遇するモンスター。街道沿いに出てくるモンスターなんて、蹴れば弾け飛ぶ程度の存在だ。魔法も剣も不要。レベル五十ってのは、この世界じゃ魔族並みの強さだから。
一時間くらい歩くと洞窟や神殿を通り過ぎ、城壁に囲まれた町が視界に入った。
別の町ってのは初めてだ。寄ってみよう。
歩みを進めると街道から離れた位置に門があり、中に人影も見える。たぶん門衛だろう。
向かって行き門の前に立つと門衛が睨んでくる。
「入るのか?」
「ちょっと立ち寄ってみたいんで」
「その格好。初心者か?」
「いえ」
タグを見せると驚いてるし。ベテラン冒険者が、なんで粗末な装備なのかと。
「死に戻りなんです」
「ああ、そうか。死んでも復活するんだもんな」
実に羨ましいものだと皮肉を込めて言われた。
他の町から来たのであれば、入町税が必要だと言われるけど。お金持ってきてないんだった。
魔結晶は道中のモンスターから回収したものがあるけど。偶然、魔結晶を持つモンスターと遭遇したから。たった二匹だったけどね。あとは何も落とさない奴ばっかり。街道だと稼ぎは無いんだよ。
「ギルドで払ってくれ」
「そうします」
惚けて支払わず逃げるなよ、と言われたけど。払わない冒険者が居るんだろうな。
町に足を踏み入れると活動拠点としてる町と似たような感じだ。ギルドの場所を教えてもらい向かい中に入る。
建物は同じ構造で同じ配置。入って正面にカウンターがあり受付嬢が居る。目が合うも表情を微塵も変えず。相手するのも嫌そうな感じだけど、仕事だから仕方ないんだろう。
カウンターに向かい魔結晶を出す。
「黄色い魔結晶二個ですか。アクリーダですね。初心者?」
「いえ」
訝しむ感じだ。魔結晶を持つモンスターって言うか、十本足のバッタみたいな奴だったけど、アクリーダって言うのか。
「十スレブロですが、それでよいですか?」
「構いません」
ちょっと驚いた感じで僕を見る受付嬢だ。魔結晶を手に背を向けぶつぶつ言ってる。聞こえてるけどね。「変なの。ほとんどが高く買い取れって怒鳴り散らすのに」って言ってる。
そうか。他の冒険者は相場より高く買い取らせようとするのか。これじゃあ嫌われるよね。
少ししてトレーに小銀貨十枚載せ差し出してきた。
「えっと、入町税を払うように言われてるんですが」
「え」
「入町税をギルドで」
またも驚いてるし。驚くようなことを言ったかなあ。
「払うんですか?」
「払うものですよね」
呆気に取られた感じだけど「で、では四スレブロですので」と言って、小銀貨四枚を抜き取り残りを受け取る。六スレブロって二千四百円か。この額だと冒険で使うものは買えないな。
まあいいや。街道なら蹴れば吹き飛ぶモンスターしか居ないし。
あ、そうだ。
「この辺で強いモンスターの居る場所って」
「あの、初心者じゃないんですか?」
「いえ。レベル五十のアドバンス・スカラーAです」
仰け反って驚くし疑いの眼差しだしで、タグを見せると門衛と同じで「なんで装備が初心者」と疑問を口にしてる。
いちいち面倒だから強いモンスターの出現場所と言うと。
「町を出て二十分も歩けば古城があります」
そこはアドバンス・スカラー以上が稼ぎに行く場所だそうで。ただし四人以上のグループ推奨だそうで。ソロで向かうのは無謀だとも言われた。
今はソロだし。元より危険と言われた場所にソロで向かってたし。死にそうになっても何とかなってたし。
「じゃあ行ってきます」
町を出て東へ向かうと廃墟があり、そこの城にモンスターが出現するそうで。しかも強い奴ばかり。新たに入手した魔法を確かめるのに都合がいいかも。
あとは空を飛ぶ奴も居るそうで。
東に十五分も進むと古城が見えてきた。更に五分歩くと朽ちかけた古城に着く。周囲は確かに廃墟と化してる。モンスターが発生したことで放棄されたらしい。
何度駆逐しても湧いてくるそうで。人が住めなくなり廃墟になった町か。
足を踏み入れると確かに気配はある。廃墟と化した街中を進み城を前に見上げる。
崩れそうな感じだけど、中に入った途端崩れたりしないよね。生き埋めは嫌だから。
とりあえず城内へ歩みを進めると、早々にモンスターと遭遇する。
全長四メートル程のムカデみたいな奴だ。元々足の数が多いのがムカデだけど、逆に足が四本ってなんで足の数が減るんだろう。
向かって来てしかも何か吐き出してるし。たぶん毒液なんだろう。避けて試しにフロギフィエリンを使ってみる。
「えっと」
白い靄に包まれ晴れると蛙が一匹。本当に蛙だ。傍に行き足で踏み潰すと「ぐえっ」と鳴き拉げてしまう。地面に吸い込まれるように消えると、魔結晶を残すけど青い色だ。確か青いのは高額だった気がする。つまり形状が変化しても元の生命力のまま?
更に奥へ進むとモンスターに遭遇。蛇の頭に足が八本ってことは。オクタプレブロかな。弱いから魔法を使うまでもない。後ろ回し蹴りを試すと吹き飛ぶし。
体のスペックが大幅に向上してる。切れの良い動きと一撃の威力が凄まじい。
もっと相手が強くないと蛙化の魔法が、どこまで通じるか試せないな。
仕方ない。さらに奥へ進むことに。
意外にも遭遇率が高い。少し移動するとモンスターに遭遇する。
今度は巨大なワニみたいな奴だ。ただし足は六本で頭が二つに尻尾二つで角も生えてる。しかも三匹と都合よく出迎えてくれた。
「フロギフィエリン」
蛙化の魔法を使うと三匹とも白い靄に包まれた。
靄が晴れると見事にヒキガエルサイズになってるし。三匹居ても効果はあるのか。元の強さが分からないと、どの程度の相手まで通じるかも分からないな。次に出てきたら戦ってみよう。
とりあえず蛙は潰し魔結晶を入手しておく。なんか、潰すのに気が引ける姿だけど元はモンスターだし。
そして遭遇したのは人型。ただし腕は六本もある。顔は河童みたいなんだけどね。
上の手には短剣。中間の手にバックラー。下の手に棍を持ってるのか。




