Sid.63 新たな魔法を得られるも
驚くしかない。レベルが一気に十五も上がってた。
レベル五十ともなると上には二十人しか居ない。上がり過ぎてることで頭を抱えるスタッフだけど。
とりあえず魔法を二つ覚えられる、と言うことでギルド内に戻る。
「あ、ヒロトさん。あたしの家に来てくれるんですか?」
「じゃなくてですね」
「なんです?」
「魔法を」
レベル上昇に伴い魔法を覚えられるようになった。だからガチャをと言うと。
「幾つ上がったんですか?」
「十五」
ここでも驚愕の表情を見せ顎が外れそうなアイナが居る。
おーい。アイナさん。どこに行ってるんですか。ガチャを用意して欲しいんですけど。
どこかに行ってたけど戻ってきたようで「ガチャを用意しないとですね」って言いながらも僕を見て「ヒロトさん神に愛されてますね」だって。
そうなのかな。ただ上がり方を見れば、そう考えても不思議じゃないけど。
ガチャをカウンターに置くと「二回ですよ」と言ってる。
また変なのが出たらどうしよう。しかも二回とも。
緊張しつつガチャを回すと一回目は。
「……ヒロトさんって」
「ガチャの女神に嫌われてるんですね」
「居るんですか?」
「え、いや、何となくです」
白い玉。属性無関係の暗視と同じ感じだ。と言うことは補助系の魔法。使いどころが限られるってことかも。
手にして眺めて幾らか気落ちしながらも、飲み込むと魔法を理解できた。
「ビッガステルニナって」
「き、希少な魔法ですよね……」
額に汗を掻きながらもフォローしようとして、無意味なことを口にするアイナだ。
足場を作る魔法って、どこか使い道あるの? 橋が流された時に使うとか。どの程度の長さで足場を組めるのかも分からないし、どんな足場なのかも分からない。
工事現場の金属製の足場を組めるなら、まだ頑丈だろうから役立つ面もあるんだろう。でも木製とかだと簡単に壊れるよね。
「つ、次」
「で、では、どうぞ」
どうやら次は属性のある魔法のようで黒いのが出て来た。
「黒って」
「えっと闇系ですね。飲めば分かります」
これも希少な魔法らしい。いや、足場を組む魔法と違って、こっちが本当の意味での希少性でしょ。
手にして黒い玉を暫し見る。自分の顔が反射してるけど、なんか間抜けな表情になってる。あんまり期待してないからだ。
飲み込むと何の魔法か理解できた。
「フロギフィエリンって」
「え、と、ですね」
「まあいいですよ。多少は実用性もありそうなんで」
「あの、ヒロトさん」
がっかり感が半端無いけど、それでも多少はさっきよりまし、と思わないと。
でも蛙化って。対象を蛙にするだけの魔法。まるで古風な魔女が使う魔法みたいだ。
攻撃でも防御でもない。対象の範囲も不明だし、例えばドラゴンを蛙にできるなら、倒すのが楽になるとは思うけど。生命力も蛙に準じたら意味がないよね。
一度に幾つまで蛙化させられるかも不明だし、敵によっては無効だったら意味がないし。
思わず膝から崩れ落ちそうな感覚を得たけど、もうこれも運命と思って受け入れるしかない。つくづくガチャ運が無いんだ。
「ヒロトさん。落ち込まないでください」
きっと気落ちした表情をしてるんだろう。アイナが必死に励ましてくれるけど、なぜか僕の得る魔法は派手なものが無い。結局はエルドクロットとケラウノスで、何とかしろってことなんだろう。これも神の思し召しなのか。
加護を授かりレベルは極端に上がった。それで充分でしょと神が言ってるんだ。
ため息が出るけど仕方ない。
「だ、大丈夫です。きっと僕には役立つ魔法だと思うんで」
「顔、引き攣ってますよ」
無念。
「あの、帰ります」
「気を落とさないでくださいね」
「あ、は、はは」
気が抜けた。
足取り重くギルドをあとにし待機室に入ると、スタッフが「良い魔法を覚え……」と途中で口篭もり僕の異変に気付いたようだ。
「ヒロトさんには加護と高速レベルアップがありますし」
ここでも慰められるけど、逆につらくなるから揶揄って欲しい。
まあ他の人には無い加護とレベルアップだし。それで充分な恩恵を得てるよね。そう考えないとやってられない。
肩を落としつつリコールして日本に戻る。
家に帰ると母さんが「なんか元気ないけど」と言ってくる。
分かりやすいくらいに顔に出てるんだろうな。
「元気ないわけじゃないから」
「そうは見えないけど」
「ちょっと残念な結果だっただけで」
「また揉めたの?」
そうじゃなくて魔法を覚えたけど、それが足場と蛙と言うと「変な魔法を覚えるのね」だそうだ。
何かしら使い道はあるんだろうと言うけど、そりゃ使い道はどこかであるんだろう。だから用意されてるわけで。どこで使うのかは知らないけどね。あとで向こうに行ったら試してみるしかない。
昼ご飯を済ませ部屋に戻るとスマホにメッセージが入ってる。
見るとマサからで「心配掛けてすまん。もう大丈夫だから」とあった。僕に対しては「倒されたって聞いたけど、もう復活してるんだろ」と。
経緯を簡単に纏め返信しておく。
マサからまたメッセージが届き「俺の方は一か月禁止されたから当面異世界には行けない」とあり「親に言われてさあ」なんて軽い調子だけど、たぶん説教されたんだろうな。
マサもまだ学生だし親に心配掛けたのであれば、当然遊ぶことを禁止するんだろう。
そうなると暫くはソロ活動になるのかな。でもレベルに開きがあり過ぎるとなあ。
少ししてヴィーラからメッセージが入り「マサが回復したみたいだけど」のあとに「禁止されたみたい」と報告して来る。それと「活動どうしよっか」ってヴィーラもノリが軽そうだ。
リーダー不在となるとグループとしての活動は当面なしだよね。
僕にリーダーは務まらないし。
返信には残念ですけどリーダー不在なので、当面の活動は休止と言うことで、と流すと「ヒロトがリーダーやればいいでしょ」と返ってくるし。
無理。人を率いる能力なんて無い。
暫し、やり取りを繰り返すと「フラウも呼んで試してから」だそうで。失敗してもいいから僕を仮のリーダーとして試そうと、強引に押し切られた。
午後三時になり異世界に行くことに。もちろんソロで。フラウは仕事中らしいし、ヴィーラは昨日の今日で行く気にはならないそうで。
多少でもショックはあったんだろうな。落ち着いたら連絡ください、としておいた。
今日二回目の異世界。
待機室に居たスタッフが「魔法を試すのですか?」と聞いてくるから、効果と対象範囲を確かめに行きます、と言ってギルドへ。
アイナが嬉しそうに笑顔を見せるけど「あ、魔法ですけどヒロトさんですから」って何それ。
「きっと使い熟すと思います」
触れないで欲しかった。その方が傷口を広げずに済む。
「どこかで試すんですか?」
「そのつもりです」
「レベル五十ですし向かうところ敵無しですよね」
「分からないですけど油断禁物ってことで」
いってらっしゃい、と送り出された。
門まで進むとセヴェリさんが居る。トゥオモさんはと思ったら休憩中らしい。
「今日はどこに行くんだ?」
「その辺を適当に」
「そうか。まああんまり無理すんなよ」
門を抜け街道を進み森へ、と思ったけど森のモンスターじゃ弱すぎる。洞窟はマップが無い。神殿は遠すぎる。
手近な場所で強敵が出現するのって無いのかな。
アイナに聞けばよかった。
街道を歩いていると後ろから馬車が来てるようだ。端に避けて通り過ぎるのを待つ。
そして僕の横に来ると止まった。どうやら乗合馬車のようだけど。
「乗るか? もちろん代金はもらうけどな」
乗客が嫌がるでしょ。
首を横に振ると「なんだ、遠慮してるのか」と言う。




