Sid.57 新たな洞窟の攻略を開始
当座のメンバーとしてモルディストと組むことに。当座、と言うことで冒険者タグへの刻印は無い。あくまで暫定だから。この場合、倒したモンスターの生命力は倒したグループのみ。それで構わないそうだ。彼らにしてみればカヴェルノ・デ・プロヴォイは過去に途中までは攻略済み。ゆえに内部の構造は把握しているとも言っていた。
洞窟内では僕らが先行し後方の守りをモルディストが行う。モンスターによっては協力し合って対処する。
洞窟内での行動に於いてルールを定めると、早々にカヴェルノ・デ・プロヴォイに向かう。
前を歩く僕らから五メートル程離れて移動するモルディストの面々だ。
「ずいぶん距離を取ってるな」
「ねえ、やっぱり信用できないんだけど」
「何かあればフリクトを使う」
洞窟などからの帰還用アイテム。極めて高価だけど緊急時に使うものだし。リーダーのマサが一つだけ持っている。本来であれば複数用意した方が確実性は増すけど、金銭面で負担が大きいからね。
総勢十人で新たに向かう洞窟だけど、傍まで来るとモルディストの面々を確認。
「今から入るけど後方は任せるから」
「了解」
洞窟の入り口には守衛が居て「攻略は自己責任だ。俺たちは何があっても助けには行けないからな」と言われる。それと帰還アイテムを持っているか問われ、持っていると答えると最低限の準備ができてるなら、入って良しとなった。それと松明も買わされるのは定番なんだろう。四本買っておいた。
洞窟内へ足を踏み入れるとフラウが「マッピング、しないとだよね」と言ってる。
「モルディストの連中は持ってるんだろうけど」
「貸さないでしょ」
「まあ、そうだろうからやるしかない」
洞窟に入って五十メートルは直線。支洞もなく複雑さも無いただのトンネル状。さっさと奥へと進むと洞窟なのに扉がある。
「ドア?」
「モンスターが出て来ないように、かな」
「まあいいや。開けるぞ」
扉を引き開けようとして「あれ?」と口にするマサだけど「押すんでしょ」とフラウに言われ「そうだった」となる。日本の家屋は外から入る際は引き開けるのが標準。三和土に靴を置くから。癖なんだろうな。
押し開けると見通しの利きづらい暗さ。松明を灯し慎重に進むけど僕は見えるんだよね。
ヴィーラが僕にこっそり耳打ちしてくる。
「ヒロトが見えること、言わない方がいいのかな」
「手の内は明かさないのがベストです」
一時的な協力関係とは言っても、彼らの態度からは信用に足る存在ではない、と思える。信用できるようになれば行動する上で、互いの利点や欠点は明かした方がいい。今は可能な限り知らせない。相手も情報を与えてこないのだから。
暫く進むと前方にモンスターの影が見える。
「居ますよ」
「見えづらいけど居るみたいだな」
剣を抜き盾を前に突き出し構えるマサだ。松明はフラウが受け取った。フェインカヴェルノで連携に慣れたからね。
次の瞬間、突進してくるモンスターが居る。ガサガサと音を立て知らせてくれるのはいいけど、相変わらず足の数が多いモンスターなんだ。
十二本の足を持つサソリみたいな奴。鋏を持っていて前に突き出し盾に激突する。
金属とキチン質であろう物質の接触音。音の質が違うから。
「くそ、重い!」
「サラマンドラ!」
ヴィーラによる精霊召喚でサラマンドラが出現し、マサが抑えている間にモンスターの後方に回り火達磨にする。
洞窟内の温度が上昇するけど、これも已む無し。
「倒せた?」
「消えた」
ヴィーラのレベル上昇でサラマンドラの能力も上がっている。とは言え一階層だしモンスターも強いわけじゃない。まだ手加減されてるようなもので。
倒すと魔結晶を拾いポーチに仕舞っておく。
「先へ進むぞ」
再び松明を手にすると先へ進むマサだ。
少し進むと支洞が左右に四カ所。正面の本洞は二つに分岐している。正面の本洞の右側には扉があり左は解放されていた。
「どうする?」
「どうするって?」
「右か左か。それとも支洞のどれか」
じっくり攻略するなら支洞を調べて、マッピングした上で本洞に進んだ方がいい、とは思うけど。
でも四カ所もあるから時間が掛かる。
「左にする?」
「じゃあ進むぞ」
あっさりドアの無い左側へ。
ゆっくり進むと左右交互に支洞があり、都度マップに記すけどフラウが「数が多い」と愚痴を零してるし。
「これ、支洞からぞろぞろ出てきたら」
「挟み撃ちだね」
「出てこないことを祈ろう」
なんて願望は打ち砕かれる。
「くっそ」
「数が多いって」
「ヒロト、頼む」
団体さんは僕の受け持ち。エルドクロットを弾丸状にして乱射。高速度で打ち出される爆炎弾は貫通こそしないけど、当たった瞬間に爆発炎上するから。
大型犬くらいのモンスターを次々爆破。犬じゃないけどね。足は六本で頭は二つあるトカゲみたいな奴だし。
暫く打ち捲っていると落ち着いたようだ。
「人数を揃えるかヒロトみたいな魔法じゃないと」
「きついね」
「ねえ、今後のことだけど」
「俺も考えてた」
全員一致で魔法使いを入れたい、となった。僕が居るから不要とはならない。中には魔法の利かない相手も居るから剣士系は二人居た方がいい。マサが盾で敵の攻撃を防ぎ僕が斬り込む。僕の剣のレベルでできるかどうかは分からないけど。
でも魔法専門職が居れば僕の剣の腕も上がるかもしれないし。
倒し切り魔結晶を拾う際に後方を見ると、暇そうにするモルディストの面々が居た。ほとんど警戒感は無いようだ。慣れてるんだろうな。
こんな序盤で彼らの手を煩わせれていたら、とてもじゃないけど、この洞窟の攻略なんて不可能だろうし。だから彼らが暇なのは良いこと、だと思う。
本洞を進むと三つに分岐する本洞。そのどれにも扉があり進む先の決を採る。
「左側」
誰も挙手しない。
「右」
これも挙手しない。
「真ん中」
全員一致で中央の扉を開け中へ入ることに。左右の扉は次に来た時に進めばいい。
まずは中央の洞窟探索からってことで、考え方が一致したようだ。
入った瞬間、襲い掛かる敵が居てマサが攻撃を受け負傷したようだ。盾が投げ出され尻もちをつき覆い被さるモンスターを排除すべき足掻くマサ。
僕が咄嗟に放つエルドクロットで排除できたけど。
「くっそ。やられた」
「怪我の具合は?」
「腕が痛む」
フラウの出番となり僕とヴィーラが松明を持つ。マサの傷が分かりやすいように松明で照らし、フラウの治療により傷が塞がった。
「支障ない?」
「ああ、動かせる」
腕を振り回し問題はないと言うマサだ。
「まったく。びっくり箱かっての」
「開けたら襲い掛かるなんて」
扉の向こう側で待機してたのかな。犬が主人の帰りを待つなら可愛らしいけど、相手がモンスターだと可愛らしさは微塵も無いな。
それにしてもフェインカヴェルノとは違い確かに厄介だ。一階層だから四人で対処できてるけど、八人以上必要ってことは下層階は修羅場になるんだろう。
後方を確認すると、にやけて見てるだけのモルディストの面々だった。まあ、知ってたんだろう。引っ掛かって狼狽える様を見て面白がってる。
中央の本洞を進むことにして足を踏み入れ、仄暗い中を歩くけど洞窟の壁に水が染み出してる。
「濡れてる」
「水だね」
「飲めるのかな」
「飲むなよ」
飲む必要もないし体の構造的に飲めないし。
手で触れると冷たい。洞窟内の温度も低いようで湿度は高めなようだ。
そして天井から降ってくるモンスター。
「上です!」
「上?」
「粘体状の」
スライムに似てるけど違うようだ。不定形であっても剣で斬ろうとすると硬質化し弾かれる。
「通じないのかよ」
片栗粉?




