Sid.56 メンバー募集で集う存在
またも事情聴取だ。幸いマリッカも一緒に居ることで、一部始終を説明してくれてペナルティは無しで済んだ。
ただ、マリッカも収まりがつかないのか、スタッフに文句を言ってる。
「冒険者は事ある毎に騒動を起こしています」
「それはヒロトさんも含めてでしょうか?」
「ヒロトさんは別です。助けてくださいます」
「ではそれ以外が」
とにかく暴れることが多く血の気も多く、危険度がモンスターより高いと言って、現状を何とかしろと抗議してるわけで。
「もし、現状を容認されているのでしたら、主が天罰を下すことになります」
神との契約で肉体を得ているはずだから、この世界の規律に従わせるべきと。
態度は悪いし信仰心は無いし教会でも平気で暴れ出す。さすがにマリッカも我慢の限度を超えたのかもしれない。
「制御不能な冒険者には来ていただきたくありません」
まず見たことのないマリッカの剣幕に押され気味のスタッフだ。額に汗をかき「今後、このような不届き者が訪れないよう、迅速に対処します」と口にするのが精一杯のようだ。
教会に来て平気で暴れることを神は見ている。信仰はせずとも暴れることは許せない。神聖な場所なのだから良識を持って行動させろ、と鼻息が荒いなあ。
「ヒロトさん」
「あ、はい」
「頼りにしていますね」
「えっと」
次、同じようなことが起こったら僕に討伐させると言ってるし。
その際に冒険者の肉体が破壊されても文句を言うなと。
僕を見て困惑するスタッフだ。
「ヒロトさん。できれば穏便に」
「したいんですが」
「まあ事情は分かりましたので」
「事情ではありません。ヒロトさんが居なければ私は」
死んでいたかもしれないと。もしシスターが殺害されるようなことがあれば、神が黙っていないだろうと。
すべての冒険者の肉体を剥奪し魂を元の世界に戻すこともしない。つまり本当の死を意味することになる、と脅す有様だった。
怖い。マリッカが。
「主との約束を忘れたわけではありませんよね?」
「もちろんです」
「では盟約に従い忠実に責務を果たしてください」
「御意に」
御意って。ふざけてるのかな。
マリッカの怒りにより僕はお咎めの一切を受けない。まあ教会での騒動も二度目だし。スタッフとしても教会との関係悪化は避けたいだろうし。神と直接繋がる場所だろうから。
約束だの盟約だの、この世界で活動するために、何かしらあったんだろうなあ。
だから教会には逆らいようがない。
回収された狼藉者の魂は地球に戻され、肉体は分解処分となったようだ。
今後教会で揉めごとを起こした場合は、その内容如何を問わず二度と来れないようにする。マリッカと書面を交わし約束したようで。
誓約書を手に笑顔のマリッカが居る。
「これで邪魔をされることはありません」
乾いた笑いが零れた。
教会で祈りを捧げ直し寄進しようとするけど、抱き着かれキスをされ「ヒロトさんが来てくだされば充分なのです」と言われてしまう。
他の冒険者からしっかり徴収してるから問題無いとも。なんだかなあ。
「あの、そう言えば僕の魂の色って」
「淡い白色で綺麗な円を描いています」
相手が冒険者であり、しかも狼藉者と言うことで魂は変質しない。むしろ神は喜んでいるのだそうだ。
それでいいのかなあ。
日本に戻る際にスタッフから今回相手をした冒険者のレベルを聞かされた。
「レベル四十五ですよ」
「そんなに?」
「それをことも無しにとは」
僕の予想では教会では加護が強く働くと思う。だからレベル差があっても神が力を貸すから、無傷で倒すことができるんだと思う。
と説明すると。
「確かにそれはありそうですが」
神に愛されし冒険者は向かうところ敵無しですね、とか言われた。
油断していたら倒されると思う。
それとアイナもまた「ヒロトさん。危ない橋を渡り過ぎです」だって。本気で心配になるそうだ。
「恨まれます」
「そうですね」
「そうですね、じゃないですよ」
頭のおかしい冒険者なんて放置して揉めるなと。放置したいけど絡んでくる。
そもそもは冒険者が、この世界の住人を人として見ないことにある。アイナやマリッカに絡めば僕だって黙っていられないし。
でも控えた方がいいのも確かだ。恨みを買うだけだし。
気になるのは、なぜ冒険者がここまで酷いのか、だ。犯罪者の巣窟になってる。地球で同じような言動だったら、間違いなく問題になるレベルだし。
たぶん普通に暮らしてる人が大半だと思うけど、ここに来ると一様に異常性を見せるのはなぜか。
次元の壁を超える際に善意が消失し悪意だけになるとか。
ちょっと言動の酷過ぎる冒険者が多過ぎる。何かあるんだろうけど今は何も分からないな。
そして数日が経過した日曜日。
ギルドのカウンターに向かうとアイナが微笑む。時々はアイナの家で会話を楽しんでるし、キスもしっかりされてるけど。
「応募してきた人たち来てますよ」
ラウンジで寛いでいてアイナの視線に気付くと、こっちを見て立ち上がるメンバーが居る。
軽装の男で手には杖を持ってるようだ。
傍まで来ると「リクリョクキョウシン、の?」と問われ頷くと「モルディストの魔法使いだ」と言って握手を求めて来た。
まだメンバーにするとか決めてないんだけど。少し迷っていると待機室の扉が開き、マサたちが入って来て僕に気付くと「そっちの人は?」と聞いてきた。
「モルディストの魔法使いだそうです」
「あ、じゃあ募集してきた」
「そうです」
「あんたがリーダー?」
魔法使いが尋ねると頷くマサだ。後ろにヴィーラとフラウも控えてる。
「女が二人。珍しいな。使えるのか?」
少し怪訝そうな表情を見せるヴィーラとフラウだけど。
「治療士と精霊召喚士だけど使えるから」
「そうか。ならいい」
モルディストのメンバーはすでに集合していて、いつでも洞窟に向かえると言う。
軽く自己紹介をすることに。先にモルディストの方から紹介してきた。
「俺がリーダーでウォーロックだ」
「サブリーダーのホプライト」
「ローグだ」
「エスクワイア」
「ディマカエリ」
「ルーンフェンサー」
一時的なものなら名前は不要だろ、と言われ名乗って来なかった。なんだか攻撃的な組み合わせだ。回復系も支援系も居ないし。ホプライトは重装歩兵でディマカエリは二刀闘士か。馴染みのないジョブも居る。ウォーロックとかローグは少し気になるかも。
相手が名乗らないことで、こっちも名乗る必要はないとなり、まずはマサから自己紹介。
「戮力協心のリーダーで重騎士だ」
「魔法剣士です」
「治療士」
「精霊召喚士です」
誰が攻撃の要なのかと聞いてくると三人が僕を指さすわけで。
「そうか。魔法剣士」
「あれか、噂の」
「強そうには見えないな」
「剣と魔法どっちが得意なんだ?」
魔法と言うと「魔法剣士なんて魔法も剣も半端だと聞いてる」そうで。ゆえに噂は眉唾と思っていたらしい。
信じてもらう必要はないけど、洞窟内では連携が必要だからとマサが言う。
「先行はお前ら。俺たちはゲストだから後方警戒」
なんか上手く行かない予感。
やっぱり横柄な態度だし見下されてる感じがするし。
「お前らのレベルは?」
「全員三十」
「そうか。なら問題はないんだろう」
全員三十としたけど僕は少し上。あえて言わないようにしたようだ。
マサがぼそぼそ「こいつらと組んで大丈夫か?」なんて言い出した。僕もそう思うけど実力だけはあるようだし。
「なんか下に見られてる」
「嫌な感じしかしない」
「だよなあ」
「実力は確からしいですよ」
モルディストの連中には警戒しつつ暫し組んでみようとなった。
揃って目付きが悪いし。まるで犯罪者の如くだ。




