表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/61

Sid.54 受付嬢が復帰することに

 洞窟の探索も少しは進み三階層へと足を踏み入れている。

 マッピングも上達してきたのか、以前より正確で分かりやすいし、何より記す速度も上がっていた。


「やればできるんですよね」

「ヒロト君も頑張ってるから」

「だよなあ」

「責任感が強いよね」


 責任感はアイナの件だろう。あれから三週間は経過したけど、今も早朝と夕刻以降に家に行って、いろいろ話をして過ごしてる。寝るまで傍で付き添い起きても居る状態。もう少しで大学が夏休みに入る。そうすれば時間的な制約が外れるから、もっと傍に居てあげられる時間も増える。傍に居る時間が増えるとアイナに情が移ってくる感じだ。好き、なんて気持ちと勘違いする。本命はマリッカのはずだけど。

 マメに来ることで、すっかり母親も馴染んだようで文句も出ないし。腹の底でどう思ってるかは知らないけど。信用って月日を掛けて得るものだし。一朝一夕に得られるものじゃないから。


 マサたちはレベルが三十になった。新たにスキルや扱える魔法や精霊が増えたらしい。僕は確認してないけど、モンスターが弱いし数も少ないことで上がってないと思う。


「もっと頑張れば追い付けそうだ」

「十階層くらいまで行けばレベル上がりそうだよね」

「返り討ちに遭うぞ」

「ヒロトが居るじゃん」


 頼るなとマサに窘められてる。自分たちの力だけで対処しないと、難易度が上がった際に対処できないってことで。

 でもレベル三十なら神殿攻略もできそうだけど。


「神殿、行ってみませんか?」

「え」

「神殿って」

「僕が死に損ねた場所です」


 そんな怖いところに行きたくないと言う面々だ。


「でも僕はレベル二十五で行きました」

「ヒロトは特別だからだよ」

「そうだよねえ。加護持ちだし」

「他の人と比較できないでしょ」


 じゃあ、少し難易度の上がる当初予定していた洞窟、と言うと。


「レベルが上がるなら行きたいとは思う」

「でも四人だと駄目って聞いたけど」

「臨時で仲間を募りましょう」


 と言うことで戻ったら臨時で仲間を募集し、試しにカヴェルノ・デ・プロヴォイ攻略をすることに。

 今居るフェインカヴェルノよりモンスターとの遭遇率が高い。ゆえに四人程度だと行き詰まりやすいわけで。

 この場所は遭遇率が低く下に向かうにも構造が複雑。一向に先へ進めず少ないモンスターを倒し、少々の生命力を得る程度だからレベルが上がり難い。


 ギルドに戻りアイナの代理で立ってる受付嬢に話をするけど。


「くっそ愛想悪い」

「常勤じゃないんでしょ」

「臨時だから仕方なくって感じ」


 まあ嫌われ方が凄い。マサが申請したけど終始仏頂面。誰が行っても同じみたいで、スタッフも少し困り気味だった。

 あまりの仏頂面ゆえにマサが僕に助けを求めたくらい。

 でも僕が行っても同じなんだけどね。むしろ悪化する。アイナを死なせそうになったから、それもあって印象は最悪だと思うし。

 それでも用紙を入手し掲示板に貼り出しておく。


「すぐ来るかな」

「時間掛かりますよ」

「そう?」

「みんなと出会えるまで結構待ちましたし」


 それまではフェインカヴェルノを攻略することに。


「まあ、少しでも稼いでおくか」

「一時的だと集まりそうにない気がするけど」

「でも今以上にメンバー増やしたくないし」

「一人二人ならいいと思うけど」


 あまり人数が増えても纏まりが悪くなる。せいぜい六人くらいだろうか。それでも何かと揉めそうだし。意見の対立があった時に纏める力が無いと。

 僕にはそんなのない。マサにはありそうだけど、人数が増えた時に通じるか否か。

 だったら増やさない方がいいと思う。


 応募があるまではフェインカヴェルノの攻略を続ける。

 進むスピードが上がって四階層まで来てるけど、モンスターの出現率が低くてマップだけ完成度が上がる。


「マップ作りのために来てるみたい」

「そう言うなよ」

「でも十五階層より下だと難易度高くなるんでしょ」

「出てくるモンスターが強くなるらしい」


 三人が僕を見て「ヒロトがメインなら」なんて言ってるし。僕が特別強いわけじゃないと思うけどなあ。

 こうして募集も無く一週間が経過する。

 夏休みに入ってることもあり、毎日アイナの家に行ってる。


「どうです?」

「何がですか?」

「フラッシュバック」

「あ、そう言えば」


 治ってきてるようだ。

 最近は毎日僕と一緒に居ることで、フラッシュバックが起きないらしい。もう克服できたと思うけど、どこまで付き合えばいいのか。

 ずっと健全な付き合いだし。プラトニックでも今は満足してるみたいだ。キスくらいはするけどね。


「そろそろ大丈夫かな」


 そう言うと寂しげな表情を見せるけど、ずっとってわけにもいかないでしょ。

 ギルドの受付業務に復帰してもらいたいし。今居る人、あまりに不愛想で、お金投げてくるんだよ。態度が悪いって他の冒険者からも言われてるし。

 アイナは当初素っ気なかったけど、それでも業務はちゃんと熟してた。今の子はちょっと、さすがにあの態度だと反感を買うでしょ。


「それもあって」

「ヒロトさん」

「なんです?」


 復帰するそうだ。


「守ってくださいね」

「僕が居る時は」

「居なくても」

「む、無理です」


 困らせても仕方ないし、そろそろ仕事に戻らないと貯蓄が底を尽きると。

 母親に負担を掛けてるのもあると言って「長い休みになりましたけど、ヒロトさんのお陰で元気を取り戻せました」と笑顔を見せる。


「結婚、諦めてませんから」

「えっと、それは追々」

「あたしにはヒロトさんしか居ないと分かったんです」


 一緒にいる時間が長かったから、互いに情が移った面はあると思う。でも情が移るのと恋心は別だと思うけどね。

 アイナの気持ちは本物だとしても、僕の気持ちは今もふらふらしてるわけだし。


 そして翌日からギルドに復帰したアイナだ。

 あの不愛想な受付嬢は居なくなったけど、どこに行ったのか聞くと。


「違う部署で仕事してます」

「違う部署って」

「会計課です」


 ギルドの金銭管理をする部署が本来の職だったらしい。

 アイナが来れなくなり急遽、受付に回され嫌がるも短期間、と言うことで納得してもらったとか。

 受付業務には金銭のやり取りもある。銀行業務に近いこともやる。だからお金の扱いに慣れた人が良いと言うことで。


「筋金入りの冒険者嫌いですけど」

「だからなんですね」

「今はほっとしたって言ってました」


 ついでに嫌味も言われたそうだ。


「あたしが休むから、嫌な奴らの相手をしなきゃならないって」


 二度とご免だと言っていたらしい。でもアイナだって被害者なんだけどな。

 それを言うと理解はしてるそうだ。だから裏方に居れば良かったんだとも。表に出れば危険もあるだろうって。

 まあ嫌いなのを好きになれって言うのは無理だろうな。確かに冒険者は粗暴で態度も悪いし。


 メンタルケアが終了するとフリーパスも無くなるのか。アイナの面倒を見ている間は、一切お金が掛からなかったけど、これからはまたお金に羽が生える。

 と思ったら。


「本来はお客さまでしたが巻き込んでしまったので」


 今後半年はフリーパスを有効とすると。それをアイナのメンタルケアの報酬にするそうだ。

 フリーパスゆえに予約不要でいつもで利用可。


「当面はアイナさんのメンタルサポートをお願いします」


 ただ条件付きだった。再発防止も兼ねているらしい。あとは守って欲しい、と言うアイナの希望も込みで。

 来れる時だけでいいし、無理して来る必要もない。

 多少でも楽にはなるのか。


 少し解放されたけど時々はアイナの傍に居る必要がある。家に行くこともあるだろうし。まあいいけど。母親も僕を少しは受け入れてくれたみたいだし。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ