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Sid.46 他の冒険者が絡んできた

 フラウとの別れ際「つまんない話ししちゃった。ごめんね」と言っていた。

 つまらないかどうかはともかく、外国以上に異質な世界に行ってる。だから気になることも出てくるとは思う。

 何より気になるのはPKをした連中だ。向こうで生きるとなると、この世界に置き去りになる体をどうするのか。全く問題視していなかった。何かあるんだろうけど現状何も分からないし。


 洞窟攻略二回目。

 一階層を隈なく調べるのとフラウにはマッピングに慣れてもらう。

 主洞を少し進むと支洞があり、支洞を進むとさらに分岐して支洞が複数。調べてみると相当複雑な構造だと分かった。

 出てくるモンスターは強くはないし数も多くは出てこない。

 進む上で困るのはマッピングに手間取ることくらいだ。


「二時間や三時間じゃ調べきれないな」

「ここまで複雑だったなんて」


 フラウはともかくマサやヴィーラまで疲れ気味のようだ。肉体的な疲れじゃなく精神的に疲れるんだろうな。

 行けども行けども洞窟が続くだけ。何かイベントでも発生すれば、多少でも気分転換にもなるけど。実際にはモンスターとの遭遇戦を繰り返し、ひたすら歩き続けるだけ。


「全部なんて無理じゃないの?」

「かもな」

「じゃあやめる?」

「でもなあ」


 僕は口を挟まない。三人の会話を聞いてるだけで。


「ヒロトはどうしたい?」

「え」

「ヒロトの意見も聞いておきたいし」


 余計なことは言わないようにしてた。基本はリーダーの考えに従うつもりだったし。だから聞かれても。


「マサさんが決めたことに従います」

「俺かよ」

「責任重大だね」

「いや、ここはヒロトの意見も無視できないだろ」


 ソロでの行動実績がありレベルも高い。このメンバーの中で最も戦闘慣れしていて、実力も申し分ないのだから僕に意見して欲しいらしい。

 このメンバーでは最年少。意見したとして僕が責任を負うのは勘弁して欲しい。

 ソロであれば自分の選択の結果は自らが享受するけど。他の人も居ることだから、僕の意見で左右して欲しくないと思う。


「あの、特に意見は無いんですが」

「このまま一階層を調べ尽くすか、それとも二階層へ向かうか」

「マサさんにお任せします」

「ヒロトの方がレベルが高いんだから、遠慮しないで言っていいんだけどなあ」


 僕に依存した戦闘をしていると、三人の実力は向上しないと思う。

 できるだけ僕に依存しない戦闘を一階層でやって行けば。


「僕は窮地の際だけ手を貸します」

「え、どういうこと?」

「一階層なら三人で攻略できると思うんで」

「つまり?」


 基本は見てるだけ、と言うと。


「マッピングは?」

「フラウさんに慣れてもらわないと、二階層以降で困りますよ」


 モンスターの強度が上がれば僕が見てるだけ、とはいかなくなるわけで。

 率先して戦闘を熟さないと全滅もあり得る。多少レベルの高い僕でも一人で洞窟の攻略は無理。

 仲間が必要と判断したから三人と行動を共にしている。


「戦闘もマッピングも万全にした上で、下層階に向かうのがいいと思うんです」


 ただし、一階層はモンスターも強くはない。だから戦闘訓練だと思って三人で、と言うと。


「分かった」

「確かにねえ。ヒロトにお任せだと」

「鍛えられないってことね」


 方針が決まると僕が殿(しんがり)を務め三人は前を歩く。それでも後ろも気にして欲しいと言っておいた。僕が居ることで油断しないようにってことだけど。

 全員が同じレベルなら後方の警戒は殿の務め。でも訓練だから僕は居るけど居ないものとして考える。


 支洞を進んで戻ると他の冒険者たちと遭遇した。六人組のようだ。

 僕らを見て「一階層でうろうろしてんのか」なんて言ったけど。現時点での目的が違うからね。

 石橋を叩いて渡りたいだけで。無謀なことはソロで懲りてる。


「あ、お前。見たことあんな」

「え、誰?」

「町で話題になってるだろ」


 六人組の視線が僕に集中してるようだ。ソロ攻略でレベルの上がり方が早い、ってことで噂になってたのは分かるけど。


「へえ、こいつがねえ」

「強そうには見えないな」

「なあ、今のレベルって幾つなんだ?」


 聞かれても答える気はないな。


「仲間じゃないので教える気はないです」

「なんだそれ」

「見た目と違って可愛げが無いな」


 一階層をうろうろしてるのだから、レベルは高くないんだろう、と勝手に納得してるようだ。

 フラウとヴィーラを見て「女が居てもなあ」とか「楽しめねえよな」なんて、下衆なことを言う連中だ。

 フラウとヴィーラを見ると不快感を示してる。女性を性的な対象として見る時点で、まともな連中じゃないよね。元の世界だと口にできないことでも、この世界では羽目を外すのかもしれないけど。こんなセクハラ発言ができるくらいだし。


「モテそうにないよな、お前ら」


 なんかマサが煽ってるし。


「あ?」

「なんだこら」

「やんのか?」

「殺すぞ」


 煽りに簡単に乗る手合いってことは、元々品性下劣な連中なんだろう。

 ただ、ここで喧嘩をしても無駄だし、PKにまで至ると損失が大きすぎる。


「マサさん。無駄な諍いはやめましょうよ」

「まあ、そうなんだけどさ」

「言いたいことは分かります」


 フラウとヴィーラを性的な目で見た。それで怒ってるんだろう。男女平等男女同権なんて言っても、どの国でも女性を下に見たり性的に見る輩は存在する。

 そいつらの本質なんて犯罪者と大差ない。同列に見ることができないし、性的にしか見ることをしないのだから。

 自分の権利には敏感でも他人の権利には鈍感だし。とどのつまりクズでしかない。


「おいこら」

「てめえ、少しばっかり噂になってるからってなあ」

「粋がってんなよ」


 面倒臭い。

 この手の手合いは力で捻じ伏せても無駄なんだよね。逆恨みするだけで。ずっと禍根を残すことになる。

 三十六計逃げるに如かず、だな。

 こっそりマサに松明を消して僕に掴まり逃げるよう言う。ヴィーラにはマサから伝えてもらい僕に掴まってもらえば先導するってことで。フラウにも伝えておく。

 照明が無ければ薄暗い洞窟内だ。松明で照らせる範囲はせいぜい七メートル。支洞に入れば逃げ切れる可能性は高い。


 目配せして松明を氷の魔法で包むと消火され、六人組が持つ明かりだけに。


「てめえ、何してんだ?」

「松明を消してどうする?」

「逃げるにしても見えねえだろ」


 見えるから、この手段を講じた。相手の手の内も探れない直情バカを相手にしても意味がない。

 三人が僕のベルトに手を掛けると「走ります」と言って走り出す。

 六人組が暫し呆気に取られている間に、距離が七メートルを超えるけど、フラウとヴィーラは何度も躓きそうになってた。


「これ、見えないから危ない」

「走るのしんどい」

「文句言うな。争うよりましだ」

「マサが原因でしょ」


 暫し進むと支洞が三つに分かれるから、左端の支洞へと進み後方の様子を窺ってみる。


「来ませんね」

「見失えば追ってこれないからだな」

「ねえマサ」

「なんだよ」


 フラウとヴィーラに怒られてる。

 僕が機転を利かせて逃げることができたが、あのままだと確実に殺し合いになってたと。

 適当に遜って距離を取れば良かったんだと言ってる。

 とは言ってもマサもフラウやヴィーラのことを考えたんだろう。


「あの、マサさんも二人の気持ちを考えて」

「分かるけどね」

「それで喧嘩とか殺し合いは勘弁」

「悪かった。でもさあ」


 でもじゃないと。煽るような言葉は禁止、だそうで。

 ちょっと凹み気味のマサが居るけど少々血の気が多いのかな。


 ただ、やっぱり実感した。

 地球から来る冒険者の質の悪さ。羽目を外すのも分かるし浮かれるのも分かる。それでも互いを尊重しないと結果揉める。

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